M1グランプリを制したミルクボーイの「コーンフレーク」ネタを見ると、自分の母親を思い出します。根っからの関西人のため、台詞の口調が似ていて、余計にオーバーラップしてしまうのです。
母親(京都のイントネーションで)「最近、あの人、すごいな」
息子(やや怒り気味に)「あの人って誰?」
母親(少し不機嫌に)「誰って、思い出せへんから訊いとるんや」
息子(呆れて軽蔑気味に)「ヒントくらいないとね」
母親(興奮気味に)「踊りが上手なアメリカの歌手や。足を床にうまいこと、こう滑らせてな。無重力の。そや、ムーンサルトや。歌は、ジリー・ビーンやったな」
このとき、私は高校生で、母は30代後半でした。若年性の深刻な病気かもしれないと思い、答えは、あえて言いませんでした。脳血流の活性化が治療になると考え、黙っていたのです。
動揺を隠しながら、「お母さん、ゴメンね。俺、分からないや」と踵を返しました。
すると、母親が「思い出したで」と歓喜の声をあげました。頭上に、This is itが降臨してきた様子でした。
「ジャイケル・マクソンや!!」
あれから40年近くが経過しましたが、母親は元気です。先日、電話で話したところ、難解な用語を正確に駆使していました。
「脊柱管の痛みがひどくて、ノイロトロピンくらいじゃ全然効かん。かといって、手術は、かなわんで。先生に言うたら、プレガバリンという強い薬になってな。それでも痺れが治らんから、最近、サインバルタに変えてもらったところなんや」
医薬品の名称を正確に話せる状態で、安心しました。同時に、上述の出来事を思い出したのですが、一つの謎が解けました。母親は、アルツハイマー型認知症ではなく、単に外国の人名を覚えるのが極端に苦手だったようです。
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2023/07/15 08:05:39