約1,300年前の万葉の絶景が眼前に!「師付の田井」。

「師付の田井（しづくのたい）」のことを知ったのは

初めて「常陸國總社宮」にお参りに行った

帰り道のこと。

（たぶん道案内の看板を見た）



家に帰ってすぐに調べて

写真を見て、

いつか必ず行こうと思った場所です。



やっと来られました。



「長興寺」の脇の

雑木林、竹林の暗がりを抜け出てみれば

そこは別世界!!











クルマのすれ違いなど絶対にできない道を少々進むと

いきなり立派な駐車場が現れるので

何かあるな、と気づきます。















絶景の中にある一本道。



この道が、万葉の古にいざなってくれる道。

ドキドキしました。





ご対面!!


今でも、心地よい音を奏でながら

コンコンと水が湧いています。



コトバガデナイ。



「師付の田井」は、

現在のかすみがうら市志筑地区の北側、

恋瀬川（古代には信筑川）下流一帯の水田の中にある泉で、

奈良時代の万葉歌人・高橋虫麻呂の歌にその名が出てきます。

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（漢字本文）
草枕　客之憂乎　名草漏　事毛有哉跡
筑波嶺尒　登而見者　尾花落　
師付之　田井尒鴈泣毛　寒来喧奴　
新治乃　鳥羽能淡海毛　秋風尒　白浪立奴
筑波嶺乃　吉久乎見者　長氣尒　
念積来之　憂者息沼

（読み下し文）
草枕　旅の憂いを 慰もる　事もあらんと
筑波嶺に　登りて見れば　尾花散る
師付（しづく）の田井（たい）に　雁がねも　寒く来鳴きぬ
新治（にひばり）の　鳥羽の淡海（あふみ）も　秋風に　白波立ちぬ
筑波嶺の　よけくを見れば　長き日（け）に
おもひ積み来（こ）し　憂いはやみぬ

＝巻9-1757　高橋虫麻呂＝

（現代語訳）
草を枕の旅のつらさもなおることがあるかと、
筑波嶺に登って見ると、
ススキの穂が散る師付の田には、雁も寒々と来て鳴いていた。
新しく墾（ひら）いた鳥羽の湖も、秋風に白波が立っていた。
筑波嶺のよい眺めを見ると、
長い日々を物思いの中に重ねて来たつらさも癒えたことだ。

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この歌の作者、高橋虫麻呂は

常陸国国府の役人。

「常陸国風土記」の編纂にも関わったという説があります。



当地は、昭和48年以前には「鹿島やわら」と称され、

湿原の中央に底知れずの深井戸があったそう。


耕地整理によって景観は変わってしまいましたが、

記念の石碑も建てられ、

元の深井戸のあった場所から水を引いて、

今も泉として湧き出ています。



この深井戸には、

日本武尊が水飲みの器を落としたとか、

鹿島の神（武甕槌神）が陣を張って炊事用に使ったとか、

常陸国一宮「鹿島神宮」の御手洗池とつながっているとか、

いろいろな伝説があるようです。

（イマジネーションの広がりが素晴らしい!）





脇のススキの中で

盛んに鳥が鳴いています。





日本に現存する最古の和歌集「万葉集」。

奈良時代末期の人々の心に

直に触れられるような

すばらしい和歌の数々。



万葉人が見た景色の一端に触れられるだけでも

心底幸せを感じます。



名残を惜しみつつ、


駐車場に戻ります。


クルマを東に走らせてすぐに。

おっ、筑波山。

クロスビーくんを止めて、パシャリ。