試乗記123 マツダロードスターです。
試乗グレード 990S 車重990kg
タイヤサイズ 195/50R16(BS・VRX 2016年製)
最軽量グレード「S」をベースに走りを意識した特別仕様車です。
各方面で話題の990Sですね。
実は、ND5RCが出て直ぐの2015年に試乗していました。
ただ、そこで感じた違和感が自分の中で処理出来ずに試乗記も書けず、その後の年次改良やマイナーチェンジで「良いよ!」と言われてたのですが、乗らずじまいでした。
そしてここへ来てこの990Sです・・・何故かアナウンスがあって内容を見た時に「これは乗ってみても良いかな」と直感していました。
そして、まだ冬季でスタッドレス装着でしたが試乗が叶いました。
今回は、単に街中を走るのに加えて自動車専用道も少し走り、KPCの効果も見る事が出来ました。
(長くなりますが、書いてみたいと思います。)
さて・・・乗ってみましょう。
シートが・・・お尻が深いですね、思わずアジャスターを探しましたが太ももの高さの調整ダイヤルのみでシートスライドの傾斜で前側に行けば上がる、後ろに行けば下がるようになっています。
ちょっと、腿部分が高く、お尻が低い・・・これは最近の多くの車に当てはまりますが、個人的には好きではありません。
こういう座面の考え方は自動車だけではないでしょうか?・・・操作する上で、特にブレーキング時のドライバーの安定を考えての事かもしれませんが、多くの車種で「尻下がりが良い」とされるシートはちょっと疑問です。
このシートでステアリングをアジャストします・・・前期はチルトのみ、マイナーチェンジでテレスコピック機能が付加されました。
ですのでドラポジは大抵の方なら合うと思います。
ただ・・自分は一発で決まらなかったので、試乗中に2回アジャストし直ししました。
それだけシートに対する違和感がある・・そう感じます。
ペダルレイアウトは一瞬、アクセルを探しましたがオルガン式だからと言って扱いにくいのではなく、むしろブレーキペダルとアクセルペダルの高さの差が少し気になる位です。
ステアリング・・・は、径はCX-5等よよりも少し小さい約360mm(358mm?)らしいのですが、上下にオフセットされているのと、9時15分を握った時に親指上に来る膨らみの太さが少し気になります。
大概の車がそうなのですが、個人的には上下のオフセットはあまり好みではありませんし、部分的に太いというのもステアリング操作上で必要としないので要りません。
エンジンを掛けて・・・最近は静かな車が多いのですが、ロードスターはエンジンの音、振動が結構伝わって来ます。
シフトの入りも渋くなく、節度感、ストローク感も悪く無く扱い易いです。
クラッチ操作だけでスルスルと動かせるのは良いのですが、やはり1500CCという事と、排ガス規制でスロットル制御が緻密なのか?少しアイドリング~2000回転
までのトルクはどのギアをセレクトしても物足りなく感じます。
ただ、走り出してしまえば6MTを操り、好きなギアをセレクトしていけるMTの醍醐味は十分感じられ、「あ、やっぱりロードスターだね」という乗り味は出ていると感じます。
実際は速くない・・・が、思った駆動感が出るので乗り易い・・・そこはNA型に近い印象です。
そこは、室内で感じる数値じゃない大きさもそうです。
友人がNA型で言う「ぎわぎわな感じ」(際・際)・・つまりはこれ以上狭くても広くてもダメという絶妙な室内空間こそがロードスターの良さでもあります。
手の届く範囲に、必要な物がある・・・日本的言えば4畳半、ワンルーム・・・そういう感覚という感じもあるかと感じます。
動力性能的には約1トンに1500CCというエンジンですのでたかが知れていますが、個人的には不満はありません。
もっとも、市場ではRF用2Lを幌グレードに!という声もあるようですが(実際に載せ替えたショップもありますし)、そこはやはりパワーを求める層は居ますのでごもっともな意見かとも思います。
NA型でも少なからずパワーを求める方向で様々な仕様が確立されていますので、このNDでももう少しのパワーを求める声はあるでしょう。
シフトは感触も良いですし、少しミスしましたがインパネを見なくてもどこのギアをセレクトしているか?は分かります。
クラッチの繋がりも良くて違和感はありません。
ブレーキですね・・・フロントにブレンボ対抗4POD、リアにニッシンという組み合わせはRSグレードや30周年記念車に先行採用され、マスターシリンダー・マスターバッグを交換しなくてもいいという利点もあり、ブレーキ容量アップグレードとしての定番品でもありますね。
乗るまでは、正直ブレンボをコストアップで採用する理由があるのか?という疑問はあったのですが、乗ってみると踏力一定のブレーキングでのコントロール性、前後バランスも良くて非常に扱い易いと感じました。
これだけでも全グレードで採用しても良いと思います(ホイールの問題は除く)。
ただ、後述するKPCの件もありブレーキメンテナンスには気を遣う事をお勧めします。
ステアリングに再度集中してみます・・・ステアリングギア比は調べていませんが、最近の車の中ではさほどクイックな感じはしません。
あまりクイック過ぎるとかえって疲れてしまうので、ステアリングギア比としてはこの位が個人的には良く、仮にステアリング交換をしたいとなれば純正同等の径を持つステアリングで十分と感じます。
小径ステアリングはクイックな感じになるので個人的に好みません。
電動パワーステアアリングのフィーリングはアシスト、フィーリング共に良い部類に入ると思います。
ありありと路面の状態を描写する・・・という超上質な感じはありませんが、少なくともNA型のパワーステアリング車から乗り換えても違和感は無いでしょう。
これであれば良いと思います。
最後に・・・話題のKPCです。
旋回中のリア左右の回転差から旋回状態を把握して(横Gセンサーは関与していないのですかね?)、リア内側にわずかに制動を掛けてリアロール量を減らして、リアの接地性を高めてコーナーリング中の安定感を確保するシステムだそうです。
既に前輪ですと各社Gベクタリングやトルクベクタリングという事をやってますので、それの後輪版と考えています。
最近はポルシェ、メルセデス等で4WSの採用がありますが、後輪操舵ではなく、制動を掛けると車体を下げるアンチリフト力が発生するリアサスペンション構造を利用しているので重量増がありません・・・そこはシステム的に良いと思います。
実際のKPCは、街中で走る分には分かりません。
リア左右の回転差はABSに用いたりするセンサーとパルスで拾えると思うので、やはりペースを上げた時のコーナーリング・・・回転差の出やすいタイトコーナーとかで最大限に生かされるのではないでしょうか?
のではないでしょうか?
今回の試乗では、自動車専用道を走るルートもありましたので、分岐から180度近く回り込んで合流というような場面でこのKPCが体感出来ました。
「言われないと分かりません」・・まあ、この990Sしか知らずに何も予備知識が無いのであれば、この機能は分からないでしょう。
ただ、ある程度のロール角から(もう少しロールしていくのかな?)と思った辺りからのリアの安定感が増す感じでロールが抑えられるので、アクセルを開けながらコーナーリングして行けます。
リアスタビライザーとトルセンLSDを持たない「S」グレードとは思えない安定性ですので、これを味わうと単純に「良く曲がる」と思うのは当然と思います。
逆に、リアスタビライザー付、トルセンLSD付き、ビルシュタインダンパー付という各グレード別でKPCがポンとECUセッテイングで使用可能となった場合は逆にフロントに物足りなさを感じるのか?もしれないと思いました。
逆に、社外の足周り(車高調)を組む前提であれば特にKPCは要らない??と思います・・・勿論、リアの安定性と乗り心地を両立させた「きちんとセットアップされた車高調」が前提と言うのは言うまでもありません。
バネレートを上げて、ダンパー減衰力を下げたのが今回専用セッテイングとなった990Sのサスペンションなのですが、少し縦揺れや凹凸の入力は拾うものの、純正サスペンションとしてはいい落としどころと感じました。
これでブッシュ1G締め、アライメント調整、タイヤのユニフォミティ(と共に銘柄変更)等を新車時にビシっとすれば、この装着された2016年製のVRXで感じられたものがより良く発揮されると思います。
また、このKPCは様々なパッドやローターでテストして市販に漕ぎつけたという事ですが、特に純正で不満は無い気がします。
まあ、これはユーザーのお好みで楽しめるという事で、メーカーの検証は有って良いと思いますね。
ただ!このシステムを生かす為には定期的なメンテナンスが欠かせず、フルード、グリスアップは勿論の事、マスターシリンダーやキャリパーのオーバーホールとホイール回転センサーの定期的交換というのも必要になって来ると思います。
総じて・・・実は個人的にNDの初期で感じられた「上手く旋回円を描けない」・・・という事はありませんでした。
NA型よりもフロントタイヤまでが遠いとか、ロールの途中で引か掛かるような感じでロールが一瞬止まるようなリアサスペンションという事は一切なく、ドライビングを楽しめました。
約7年の間にブラッシュアップされた感じがします。
価格が高い・・のがちょっと難点ですが、個人的にはND5RCではベストバイと思いました。