(2016年2月19日付投稿)
急行「はまなす」
2016年3月20日の札幌発青森行きと、
2016年3月21日の青森発札幌行きを最後に、
運行を終了。
LEN吉アーカイヴ
【追憶寝台列車】リバイバル投稿の続き、後編です。
(☞ 元のブログはコチラ)
以下、一部訂正して再投稿。
急行「はまなす」
最後の『14系、24系客車列車』
最後の『DD51が牽引する定期旅客列車』
最後の『ED79が牽引する定期旅客列車』
最後の『青函トンネル通過, 定期客車列車』
最後の『国鉄型機関車・客車組成の列車』
そして、『JR最後の定期急行列車・・・』
急行「はまなす」は色々な最後を背負って走ります。
(☞ 前編からの続きです)
2016年2月18日
22:00 『旅立ち』
~札幌駅4番線~
扉が閉まりました。
車掌と機関士(今は運転士ですね。)が無線で発車確認を行う『間合い』のあと、DD51が「ピーーッ」と、長めのホイッスルを響かせます。
軽く「クン」という衝撃があり、列車が動き出しました。
密着自動連結器特有の引出し感。
一瞬、右手にライトアップしたテレビ塔が流れ、すぐにビル影へ消えました。
連結部の緩衝器が「グググッ」と唸り、車体が左右に揺れてポイントを転線。
青森へとつながる鉄路は次第に収束していき、列車は緩やかに加速。
「はまなす」は「タラッタタン、タタン♪」という軽快なジョイント音を奏でて定速走行に。
インバータ制御、フルノッチ自動進段の電車では味わえない客車列車ならではの感覚・・・・。
22:02 車内放送
~ハイケンスのセレナーデ~
客車列車お約束の『ハイケンスのセレナーデ♪』が聞こえてきました。
14系+24系「はまなす」のそれは、エコーの少ない初期の電子音。
わずか2小節のメロディですが、『客車列車に乗っているんだ』という実感が湧き、テンションが上がります。
「ハイケンスのセレナーデ」は、車両と時代でいくつかのバリエーションがあります。スハフ42、オハフ33、オハネフ12などの旧型客車では、オルゴールの音そのものでした。
停車駅、到着時刻と編成の案内放送が続きます。
「~終着、青森には、明朝6時19分に到着します。」
「明朝・・・、」という響きがイイですねー。
「到着予定」ではなく「到着します」という言い方も、正確な日本の鉄道を表していてイイです。
3号車自由席 スハフ14 556 の座席は、窓側がほぼ埋まり乗車率は4割ほど。
空いていた進行方向右手の『7A窓側』に座ります。
席に座るなり「はまなす」の安全運行を祈念して・・・、
「ひとり乾杯~!」
ディーゼル発電機DMF15の低い唸り音が響きます。
車外だとかなりの音量ですが、車内では意外と気になりません。
白石から千歳線に入ります。
「はまなす」は、最終の室蘭行特急「すずらん10号」の1時間半あとを走り、新札幌、千歳、南千歳、苫小牧と停車して行きます。
降りる人もちらほらと見られ、札幌通勤圏のホームライナー的な役割も果たしているのです。
23:00 千歳線
~速度種別とDD51~
「はまなす」は所定7両編成ですが多客期は最大12両に増結されます。
また「はまなす」を使った札幌運転所と五稜郭車両センター間の車両回送もよく行われます。
JRにすれば定期列車に増結扱いで回送できるのですから、便利な存在なのです。
JR東日本の「北斗星」用24系が「はまなす」で青森から札幌に回送されたこともあったそうです。
さて「はまなす」は12両編成であっても、牽引するDD51は単機。
これに対し「カシオペア」や廃止された「北斗星」「トワイライトエクスプレス」はDD51重連。
この差はどうして?
列車にはダイヤ作成のため、それぞれ「速度種別」が割り当てられます。
「速度種別」とは運行される鉄道車両の速度の基準で、直線で上り勾配10パーミル(1000m進んで10m上る勾配が10パーミル(‰))における均衡速度(最高速度)を用います。
【札幌-函館間の各列車の速度種別】
『はまなす』「通客F6」 均衡速度56km/h。
『カシオペア』「特通客C1」 均衡速度81km/h。
『北斗星』『トワイライトエクスプレス』 「特通客C3」均衡速度83km/h
最高速度の設定が違うのでした。
DD51の最高速度は95km/mで、『カシオペア』『北斗星』の均衡速度は限界近く。
少しでも余力を持たせるために重連で牽引されます。
これに対し、『はまなす』は均衡速度に十分余裕があるため単機でOKなのです。
☆☆☆
「はまなす」は淡々とレールのジョイント音を刻みます。
『ボーッ』と窓の外を眺めながら、ビールはいつの間にかウィスキーのポケット瓶に代わりました。
ちょっと呑みすぎたか、のどが渇いてきました。
この3号車 スハフ14 556 には飲み物の自動販売機があります。
アルコール類はありませんが、函館以外、長時間停車のない「はまなす」にはありがたい設備です。
おおー、(@_@) これは!
リボンシトロンがある。懐かしいー。
という訳で、早速購入。
23:52 東室蘭発車
~2段式B寝台、上段~
まもなく日付が変わります。
酔いが回ってきました。
折角のB寝台券なので、寝台に戻ることにします。
増21号車 1番上段
アルミ製の折り畳みはしごをよじ登り上段へ
斜めのアームは、上段昇降装置の名残・・・。
3段式寝台の時代は、走行中のベッドのセット解体が当たり前でしたが、2段式B寝台の登場後ベッドのセット解体そのものが不要になり、昇降装置も撤去されました。
寝台の中の小物類です。
読書灯
ウィスキーと水、パソコン、新書
JRマークの浴衣
禁煙プレート(新車時のまま)
このほか、各寝台には、ハンガー1つ、スリッパ1足が常備されています。
朝まで眠りたいところですが、函館の機関車交換は押さえておきたいイベント。
という訳で、函館到着2:52まで仮眠することに。
アラームをマナーモードにしてセット。
起きられるかな・・・?
2:52 函館着
~函館駅8番線とED79~
函館駅8番線に到着。
危うく寝過ごすところでした。
コートを羽織りホームに出ます。
所定だと発車は3:22、停車時間は30分ですが、この日は新幹線工事日にあたり、函館発車は3:56に変更されています。
約1時間の停車、いわゆるバカ停。
8番線ホームの端へ急ぎます。
札幌からの牽引機DD51 1148の姿は既になく、スハネフ14 552の顔が、露わになっていました。
『しまったー、出遅れた』(^^;)
函館から進行方向が変わります。
編成の反対側、青森方 スハフ14 508のほうへ行ってみます。
今日の津軽海峡線牽引機は ED79 13
函館の雪は札幌より多いようです。
30年前、この右手奥に青函連絡船の姿がありました。
上の写真とほぼ同じ位置の30年前、1986年2月の函館駅4番線(今の8番線)
(『j train vol 25』2007年から )
函館発 小樽回り 札幌行 荷41列車
編成はDD51+スハフ44+スハフ44+マニ50+マニ44+スユ15
正面奥から右は、青函連絡船と乗り換えブリッジ。
荷41列車は東京隅田川から青函連絡船で海峡を越えてきた荷物車3両(運用名;北東航)を受け、札幌へ向かう荷物列車。 当時まだ荷物列車も鉄道郵便も健在でした。これに2両の客車をぶら下げ、札幌までの普通夜行列車として運転されていたのです。
函館-札幌間の夜行と言えば、10系寝台+スハ45系で組成された、急行「すずらん 5号/6号」が知られています。もう1本の函館夜行「荷41列車」は、山線回り倶知安経由で札幌まで走る唯一の夜行列車でした。
ED79の連結部
ED79の 保安装置表記です。
S ⇒ ATS-SN 速度照査式ATS-S改良型
N ⇒ ATS-DN 車上データベース速度照査式ATS
C ⇒ ATC-L 海峡線ATC(在来線ATC)
北海道新幹線は青函トンネル内も含め、この『ATC-L』とは互換性のない、デジタルATC『DS-ATC』となります。このため、新幹線開業後、海峡線を通過できる在来線車両は、DS-ATCを搭載するJR貨物EH-800が牽引する列車だけになるのです。
『カシオペア』『はまなす』の廃止理由に、海峡線(青函トンネル)の架線電圧が、在来線規格20,000Vから新幹線規格25,000Vになるため、と報道されています。しかし、この保安装置の変更も、もう一つの大きな理由とされています。
新幹線開業後も引き続き、本州と北海道を直通する貨物列車を運行するJR貨物は、海峡線専用の電気機関車EH-800を新製しました。
EH-800は複電圧対応、新幹線デジタルATC『DS-ATC』を装備しています。
新製コストが高いので増備は最少限にして検査周期を平準化する必要があり、EH-800の運用区間は五稜郭ー東青森間専用となります。これまで首都圏から五稜郭まで直通運転していたEH-500は東青森までの運用に短縮されます。
3:56 函館発車
~最後の津軽海峡線、定期旅客列車~
身体が冷えてきたので、そろそろ車内に戻ることにします。
3:56 定時 「ピーーーッ」
ED79 13の叫ぶようなカン高いホイッスル。
「はまなす」は進行方向を変え青森に向け発車しました。
五稜郭から、江差線に入ります。
噴火湾に沿って緩やかにカーブを描くように、線路は青函トンネルへと向かいます。
木古内までの江差線は単線区間。
駅を通過するごとにポイントを渡り、左右に揺れます。
遠くに、函館山と函館市内の夜景が見えました。
木古内を過ぎると、揺れが少なくなり速度も上がりました。
いよいよ海峡線に駆け上がります。
短いトンネルが連続し、そのたびにED79が「ピッ」と短いホイッスルを鳴らします。
「ピー」長めのホイッスルが聞こえてきたかと思うと、「はまなす」は全長53.9kmの青函トンネルに入りました。
青函トンネル内は、年間通じて気温20度、湿度8~90%。
窓が白く曇り何も見えなくなりました。
「コー」っという音を響かせ12パーミル下り勾配のロングレールを下っていきます。
しばらくして、水滴が斜めに流れ去り、車窓にはコンクリートの壁面と保安灯が交互に…。
単調な時間が過ぎていきます。
だんだんと意識も遠のき、怪しくなってきました。
空いている椅子を回転させ足を投げ出し、エビ寝状態。
気が付くと、「はまなす」は青函トンネルを抜け、津軽線「蟹田駅」に運転停車していました。
隣には札幌貨物ターミナル発-宇都宮貨物ターミナル行 高速貨物7066列車。
「はまなす」に道を譲るため、退避しています。
7066列車に先行して蟹田駅を発車。
しばらくして2回目の『ハイケンスのセレナーデ』が流れ、朝の放送が始まりました
『みなさまおはようございます。本日は2月19日金曜日。急行「はまなす」は時刻表どおりに運転しています。』
車掌さんの声が誇らしげに聞こえます。
青森総合車両センターの横を通過します。
保留車となった651系が、いつの日かの出番を待って、眠り続けています。
始発「スーパー白鳥95号」789系
青森での乗り換え案内が続きます。
『長らくのご乗車、お疲れ様でした。間もなく終着青森、青森です。どなたさまもお降りの際はお忘れ物の無いようご注意ください』
『本日は、札幌発の急行「はまなす」をご利用いただき、ありがとうございました。またのご乗車をお待ちいたしております』
6:19 終着駅
~青森到着~
急行「はまなす」は定刻に青森駅3番線に到着しました。
先頭では、すぐにED79が切り離されます。
後部には、青森車両センターへ回送のため DE10 1761 が連結されました。
青森駅の、青函連絡船連絡階段と跨線橋は一部が残っています。
桟橋には、青函連絡船「八甲田丸」が保存されています。
今にも汽笛を鳴らし出港しそうな雰囲気。
6:40 別離
~回送~
「はまなす」は、DE10 1761に牽かれ、 青森車両センターに回送されていきました。
こうして、8時間19分の「はまなす」の旅が終わりました。
急行「はまなす」は3月22日の朝まで、毎日普通に走り続けます。
鉄道ファンのための列車でもリゾート列車でもない急行「はまなす」は、日々の生活に、当たり前に利用されている夜行列車であることを、改めて実感したのでした。
【参考文献】
・鉄道ピクトリアルJan2016 【特集】客車急行
・j train vol 25 2007 Spring 特集 旧型客車の時代
・鉄道ジャーナルNo.593 2016 3 特集 青函新時代
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