2ストロークエンジンは排気の脈動を利用してシリンダーの充填効率を高めている。
新気の排気側への吹き抜けを防ぐため、排気を一気に大気に排出するのではなく排気管にチャンバーを設けて排気脈動を効果的に増幅反射利用している。
ゆえに、チャンバーの容量やら形状やらが重要で。
とはいえ、回転数によって効果的な脈動パルスは違うので、チャンバーの容量を可変にでもしない限り、全域で効果があるという事はなく、特定回転域に合わせた容量形状でセットされているわけだが。
チャンバーを換えるとパワーが上がる!
ってのはつまり、最大トルク発生回転数を高回転にすればパワーは上がるので(パワー=回転数×トルク÷716)高回転側に合わせたチャンバーに換えればそりゃパワーが上がるという事だ。
(その代わり低回転での充填効率が下がって低回転は犠牲になる)
2stが下スカスカで上で速いってのはそういう事。2stだからじゃない。
2stに限らず4stでもそもそもトルクが物理的に稼げない小排気量は出来るだけ高回転にトルクピークを持ってくるのが常套手段。(内燃機関は100㏄でトルク1キロが標準)
低回転で大パワーを出すには1気圧以上かけて物理排気量以上に混合気を充填するしかない。
4stは2stと違って排気工程に同時に吸気するわけでは無いので排気チャンバーで充填効率が変わるわけでは無くカムプロフフィールに依存するわけだが。
(2stもチャンバーだけじゃなくてポートタイミングによるけどね)
ただ高回転せばいいのかってもボアストロークとコンロッド長さ(レンカン比)の都合があるので(話すと長い)そう簡単な話でもないんだが。
(つまり、純正の寸法では純正の回転数程度の範囲までしか物理的に回らない)
さて、ウンチクはともかく、
チャンバーを社外品にすると速くなる!
ってんで原チャリのチャンバーを物色してみたが。
速くなる!の基準が原チャリ最高速崇拝主義の人たちは最高速が伸びるかどうかなようで、あてにならない情報も少なくないが。
最高速が伸びても加速に時間がかかればそれは速くはないだろ。
純正はすべてを犠牲にしてすべての回転域を重視してあるわけだが(下も上も使えるけど下も上も中途半端)
社外品はその中途半端を犠牲にして高回転寄せ。が常。
付けて走ってみないと用途に合うかどうか。
試しに買うには新品10万円(受注生産)
廃盤じゃないところが良心的だが。
拾ったバイクに10万円のチャンバーは高級すぎる。
(車体の中古車流通価格からしたらそうでもないんだけど)
ってんで某中古品オークションサイトで探してみるも、程度がそこそこなのは、それだけ出すならもうちょっと足して新品買うわ!な相場で。
みんな同じで10万は出せないから中古でって思ってるようで競る競る。人気商品か?
何個か様子を見て、へこみや曲がりがあるらしいが実働で使っていたというやつを相場よりちょっとだけ安く落札。
物が届いたら。
忘れてた。売り物にならないゴミ不用品も売ってるサイトだった。
(へこみ曲がりがあるとは書いてあったけど、写真もあったけど曲がってつぶれてるところの写真は無かったのよね)
そりゃね、新品同様は期待してはいないのでね。そういうもんなんだけど。
これを使えると売りに出すメンタルの強さは見習いたいね。
そのままじゃお試しにもならないので、ふさいで圧掛けてバーナーであぶってみたが、えくぼは多少戻るが曲がりは戻らず(そりゃそうだろね)
ゴミはゴミかね。
高いゴミだなぁ。
数万円捨てるのもしゃくなので、直すことにした。
外からどうにもならないので切開
ひたすら叩く。
クッチャクチャなところは叩いても戻りそうも無いのでカットして
形状治具も無いのでフリーハンドでひたすら叩く。
ある程度形が出来たらカットした部分に鉄板継ぎ足してさらに叩く。
叩いても叩いても炙ってもなかなかピッタリ合わない。
叩きでぴったり合わせるのはスキル的にも時間的にも無理なので、隙間はパッチ当てでそれっぽく。
ここの形状と容量ってチャンバーの性能としては重要だと思うんだけど。こんな適当じゃダメなんじゃね?ま、いいか。
貼り合わせて
完成!(妥協)
修理する手間暇考えたら新品10万円は安い!
車両に取り付けてみた。
元がクッチャクチャでよれよれだったことを考えれば上出来か?
ノーマル比較
ノーマル(内部小加工してあるけど)チャンバー
社外チャンバー(を直したやつ)
速くなったっぽい音に
(うるさくなっただけなんじゃ?)
動画で聴くとQR50の音だな。
走ってみたら、
パワーバンドに入るとまあノーマルチャンバーとは明らかに速いけど(10PSが11PSぐらいになったか?)、ちょっと回転外すと全然進まない。ノーマルは多少外してもなんとなく進むけど。
進まないから反動で加速が速く感じてる部分は多いに。
坂は登るけどシフト間隔は極端には違わないからトータル実際は大して変わらん気がする(たかだかそもそも80㏄だし)
途中からドッカンな感じがまるでターボ?バカいうな、ターボは組み合わせで下でも上でも効くんだよ。自然吸気とは違うのだよ。ターボじゃなくてキツいハイカムね。VTECのローカムがないやつ。まあVTECは街乗りは苦にならないけど走るとローカム領域って全く使い物にならんからね。ゆえにハイカム切り替えで余計速く感じるけど(音にも騙されてる)低回転からガッツリ加速した方が速いだろ。中速カム用意しとけよ。
でチャンバー、発進や極低速はそれほど気にならないけど中回転域、街乗りしにくいったらありゃしない。
小排気量でパワー求めれば回転回したところで合わせるしかないから仕方ないけど。
前傾姿勢のバイクでクロスしたミッションでコースをカンカン走んないと生きてこないかなこれ。
やっぱりノーマルの完成度って高いな。
という感じ。
パワーバンド入れば明らかに速いんだけどね。ちなみに最高速はほぼ同じ。
原チャリ最高速至上主義の人からしたら速くはなっていない(笑)
そんな事より、差し込みとスプリングで止めてるフランジからのオイル汚れがひどい(こんなもんだと思うけどレベルなんだが)
臭いし汚れるのイヤなので、スプリングやめて差し込みを溶接。
溶接したら全体にトルク増えて乗りやすくなった。
だいぶ圧逃げてたんだな。
圧力変動が勝負だから圧が逃げたら台無しだからね。
とはいえ、まだ中間域は純正の方が乗りやすいが高回転、試走路の山道で純正が6速失速、5速に落とさないと登って行かないところを6速パワーバンド。
車速10キロ違うぞ。
そりゃ速いわw
(平地、下りの最高速は同じ)
モトクロスコース行くなら社外だが、ハードエンデューロは純正かな?
もうちょっとこねくり回して実験してみよう。