
2023年10月1日より西の「フェリーさんふらわあ」と東の「商船三井フェリー」が合併して「商船三井さんふらわあ」が誕生。乗船した日がたまたま新会社発足の初日となった。

ビシャゴ岩のつづき、別府港フェリーターミナルに到着したのは17時。
今日は宮崎県の都城のホテルを出発、熊本県を経由して走行距離はちょうど400km。

乗船手続きのためフェリーターミナルへ。

事前にQRコードを取得していれば手続きは必要ないということだったが、
QRコードがなかったので窓口で乗船券を発券してもらった。

乗船する「さんふらわあ くれない」は2023年1月就航のピカピカの新造船。
そして姉妹船の「さんふらわあ むらさき」もその後の2023年4月に就航している。

大阪~別府航路は初めてで、新造船が就航したのでどこかのタイミングで乗船したかった。
出港は18時45分、大阪到着は6時35分ということで11時間50分の船旅となる。
乗船時間が短すぎて新造船の船旅を十分に楽しめなかったという感想が多いこのフェリー、
今回は自分が乗船してその全容を体験してみることに。

乗船開始は徒歩・車とも出航1時間前の17時45分の予定。
しかし予定時刻になってもトラックの搬入が続いてなかなか車の乗船が始まらない。
そうしている間にも徒歩乗船は始まっていて、レストランも17時45分からオープンするので、
混みあう前にレストランに入って可能であれば海側の席を確保したい。

18時すぎ、待機していた車が動き出して船内へ。

大阪~別府航路の新造船「さんふらわあ くれない」と言えばこの光景。
アトリウムとされている場所で、いわゆる3層吹き抜けのエリアだが、
定期運航のフェリーとは思えない内装で、2023年における国内フェリーの注目の的となった。

よく見ると、階段の一段一段にも照明が付いているので階段全体が明るい。

ゆっくり船内を見学したいところだが、部屋に荷物を置いたらまずはレストランへ。

良かった、まだ海側の席が空いていた。
レストランでの食事は乗船中における重要なイベントの一つだと思っている。
たとえ夜間で海の様子が暗くても、その雰囲気が味わえる海側の席で食事をしたい。

料理が並んでいるエリアは志布志~大阪航路のフェリーと似ているが、
レストラン全体の面積が広くなっているので、人が多くても混雑しにくい。

料理も種類が多くて1人分の皿にはとても乗り切らないのでもう1セット分用意、
向かいにも置いて2人で食べているように見えるけど、自分1人です。

テーブル横にあるちょっとした仕切りによってプライベート感が増す。

18時45分、食べている間に大阪港に向けて別府港を出港。
3日前に宇和島運輸フェリーで別府に到着する時に見た「ようこそ別府へ」の文字が懐かしい。
レストランでは1時間半くらいかけて食べ続けて、夕食バイキングの内容には非常に満足。

今回の部屋はスーペリアシングル。

さんふらわあでは初めての定員1人のスーペリアとなる。
志布志~大阪は定員1~2人、大洗~苫小牧は定員2~3人となり、
スーペリアで定員1人というのはこれまでありそうで無かった。

ベッド横の冷蔵庫。

フェリーの航跡と桜に組子細工の模様、この絵の存在だけでも空間を暖かい雰囲気にしてくれる。

ベッドの足元にテレビ。

シャワー、トイレ、洗面台。

ドライヤーはテーブル下にあった。
ホテルと比べて無いものは電気ケトルを含むお茶セットくらいで、
必要なものがほぼ揃ったフェリーの中での究極の1人専用部屋という感じ。

給湯室にある電子レンジと製氷機。

国内の長距離フェリーで自由に使える製氷機が設置されているのは他に志布志~大阪航路がある。
宮崎~神戸航路の宮崎カーフェリーの新造船でも製氷機は有料となる。

かつて存在した紅丸(くれないまる)と紫丸(むらさきまる)、
100年の時を経て「さんふらわあ くれない/むらさき」の船名が復活すると話題になった。

初めてのフェリーなのでまずは船内を見て回る。

ここは記念撮影スポット。

このフェリーで一番の見所はこのアトリウム。

志布志~大阪航路の「さんふらわあ さつま/きりしま」の両方に乗船したことがあって、
そのフェリーの3層吹き抜け部分は楕円形になっていて最初見た時はおっスゴイと思ったが、
この6階から8階までの3層吹き抜けは中央に広い階段があるという今までにないパターン。

一段一段照明で照らされた階段を上がって6階から7階へ。

遠くから見ると手すりの下が組子細工に見えたが。

本物の組子細工ではなかったが、全体的に木の色合いの感じで温かみがある。

そして7階から8階へとつながる階段。過去に就航していた「さんふらわあ あいぼり/こばると」は、
こんな雰囲気の階段のみがあって、それを「蒲田行進曲の階段のよう」と例えた人がいて、
何のことか分からず蒲田行進曲の階段を検索すると、確かにそんな感じだった。

20時ごろ、照明を落としてプロジェクションマッピングのイベントが始まる。

外の展望デッキへ。

丸い窓枠の下には記念撮影用だと思うが、座れるようにクッションが設置されている。

ファンネルはロゴマークが無いシンプルな赤色。

月を見たところで今日はおやすみなさい。

翌朝、5時過ぎに再び展望デッキへ。

明石海峡大橋の通過を見たかったが出遅れてしまい、
橋を通過した直後で後方にまだ橋は見えている。

進行方向右手には淡路島の淡路SAが輝いている。
そして月もこの位置に移動していた。

レストランの朝食は5時30分からなのでもう少し。

長距離フェリーは夜間の間、船内の照明の一部を落とす。
その日の最後の船内放送の時に、このあと夜間照明になる案内がある。
しかし、その夜間照明の状態のアトリウムがなんとも神秘的。
夜間照明の様子が良いなんて思ったことは初めてだと思う。

5時10分すぎ、売店の照明がついていよいよ船内が動き出す。

船内全体の照明がつくとアトリウムも光り輝く。

阪九フェリーや東京九州フェリー、太平洋フェリーの「いしかり」のように、
3層吹き抜けの部分にエレベーターを設置するのが流行りなのかと思っていたが、
真ん中に広い階段をもってくるという、こういう見せ方もあるんだなと思った。
これまでの定期運航フェリーの内装の概念を覆すような豪華な雰囲気。

最上階の8階、日中の外が明るい時間帯の方が船内はさらに明るくなる。

さっ、朝食だ。
5時30分のレストランのオープンを待つ。

昨日の夕食の時とほぼ同じ海側の席。

朝食営業は5時30分から6時15分のわずか45分間、
そして6時30分に大阪着なのでここからは少し慌ただしくなる。

夕食の時も感じたが、このテーブル横のちょっとした仕切りがあるだけで、
通る人の目線が気にならないので落ち着いて食事を楽しむことができる。

食べ始めて15分くらい経過した5時50分過ぎ、東の空が明るくなり太陽が出そうだ。
レストランに入った時は45分間の朝食営業時間中、ずっと食べ続けるつもりだったが、
日の出が見られるならと、さっと食事を切り上げて外のデッキへ行くことにした。

外へ出てきた。

日の出を待つ。

6時を過ぎたころ、太陽が顔を出す。

船体が太陽の光に照らされる。

水平線上からではなくても、洋上で日の出が見られるのはフェリー乗船ならでは。
こればかりはその時の天候に左右されるため運になってしまうのと、この航路に関しては、
あと20分ちょっとで大阪港到着なので冬季の日の出時刻が遅い季節は見られない。

この付近は他の船舶が多いなと思って撮った写真。
この時、カメラのバッテリー残量がほとんどないことに気付いて部屋へ戻る。

部屋のカギはQRコードを当てるタイプだが、何度やっても開かない。
乗船時から数回当てないと開かなかったが、どうしても開かない。
案内所へ行って乗務員の人を呼ぶと、あっ電池が切れてると言われた。

さらに別の人がドライバーを持ってきて、部屋の内側のカバーを開けて単三電池4本を交換した。
最近電気切れが発生してきたので、そろそろ船内全部の電池交換を検討していたそうだ。
就航から9ヶ月で切れてしまうか、全箇所電池交換なんて考えただけでも大変そう。
ホテルだとそう何度も出入りしないが、日をまたぐ長距離フェリーとなると、
食事、売店、風呂、そして船内散策と一晩で何度も出入りするので電池が早く消耗するのかも。

電池交換が終わってカメラのバッテリーを交換、再び外へ出てきたのは6時20分、
目の前にさきしまコスモタワーが見えて、もう大阪港は目の前だった。

荷物をまとめて車輛甲板へ行くので、着岸まで外部デッキにいることはできない。

別府から大阪まで11時間50分の船旅、予想通り船旅を楽しむには時間があまりに短かい。
その反面、スーペリアシングルの快適性、レストランでの食事、アトリウムの雰囲気など、
こちらも予想通り十分すぎるほど満足で、総合的な評価としてはとても満足で良い経験ができた。
この11時間50分の乗船だけをとっても一つの旅が完結する、そのくらい素晴らしいものだった。

乗船時間についていえば、志布志~大阪航路のように12時間を超えてさらに3時間程度あると、
朝食後もゆっくり船内で過ごしたり、あるいは外部デッキで外の景色を眺めたりできる。
別府~大阪航路でも2023年に数回、イベントとして昼航便が運航されたが、
当然大人気でもし今後、タイミングが合致したとしても乗船日直前だとまず空席はないだろう。
乗用車の下船はトラックが出てからで7時10分ごろ船外へ出た。
この日は午後出勤で自宅へ戻ると間に合わない可能性があるので、そのまま職場へ直行。
4日半の休みを利用して四国と九州を巡って走行距離は2351km。
フェリーさえ空いていれば五島列島の中通島で過ごしたかったが、それはまたの機会に。