
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
昭和の尾崎といえば、「ゴルフの三兄弟」、そして、歌謡界の「紀世彦」「豊」といったところでしょうか。本稿では、この5人とは異なる、女性の「尾崎」に関する思い出を記したいと思います。
男子校だった高校時代に、趣味のカメラを通じて仲良くなった藤波君(仮名)は、「1学生1アイドル」の風潮とはやや異なる独自の路線を走っていました。沢田聖子と尾崎亜美をこよなく愛していたのです。あるとき、彼に拝み倒される形で、尾崎亜美のコンサートに付き合うことになりました。会場が新宿の厚生年金会館でしたので、歌唱よりも、歌舞伎町を歩く昂ぶりのほうが大きかったかもしれません。
当時、ラジオ小僧だった兼ね合いで、広く歌謡曲は聴いていましたが、尾崎亜美よりは八神純子派でした。知っている亜美さんの曲はほとんどなく、「振り向いてくれたなら、伝えたいさりげない愛」のカルピスのCMソングくらいしか思い浮かびませんでした。
先に、結果を記すと、「藤波君、有難う」という気持ちでした。音楽の神が降臨しているとしか思えないほど見事な歌唱で、心が震え続ける最高の感動を味わいました。あれは、えげつなかったです。今思えば、尾崎亜美は、絶頂期を迎えており、とても幸運でした。
「オリビアを聴きながら」や上記カルピスの「My Song for You」も素晴らしかったのですが、松田聖子に贈った「天使のウィンク」のセルフカバーが一番印象に残りました。そして、作曲のエピソードがものすごかったです。
亜美さんは、年末に自宅での大掃除をしている最中に、一本の電話でその歴史的オファーを受けたそうです。
「亜美さん、聖子ちゃん向けに1曲書いてみない?」
「聖子ちゃんは大好きだから、あたし書きますよ。いつまでに仕上げればいいですか?」
「じゃあ、明日までね。宜しく」
亜美さんは、掃除を急にはやめられず、手にしていたハタキをパタパタさせながら、「聖子ちゃんの曲、聖子ちゃんの曲」とつぶやき続け、作曲を始めるために、心を整えていたといいます。
そのとき、部屋中を舞うほこりに陽光が筋になって差し込んできました。刹那に、地上で恋に迷う女の子と天上の天使がつながり、二人が会話をするイメージをつかんだといいます。天使は、中性的存在なのですが、故意に男性化させています。「聖子ちゃんが、僕って歌ったら面白い」と考え、「僕には見える」「それが僕との約束だから」という歌詞が生まれました。
この曲には、もう一つ制約があり、「歌いだしは、ア段で」と指定されたそうです。聖子ワールドのイメージに合うからという理由でした。亜美さんは、この曲を「約束を守れたなら」で書き始め、二番も、「笑わないでね、白いドレスのわけ」とこの指定を遵守しています。
実際に、松田聖子の曲を調べてみました。1980年から1982年までに11作品あります。このうちの7曲がア段で始まっています。「あゝ私の恋は」「LaLaLa」「何もかも」「髪を切った」「風立ちぬ」「春色の」「渚の」という具合です。何故か、1983年から1985年の2年間は、ア段が激減し、8作品中1曲しかありませんでした。
スタッフの中で原点回帰のような話でもあったのでしょうか。20曲目のシングル曲「天使のウィンク」は、非常識に近い制約の中で尾崎亜美が作り上げた傑作となりました。
亜美さんの訓示みたいな話があり、とても勉強になりました。
「明日までにというのは、厳しいなと思いましたよ。でも、自分の力はこれくらいという限界を自分で決めたくなかったんです。聖子ちゃんへの作曲のオファーは、きっと実力を広げてくれるものになると思って」
人生には、運が大きく影響すると思います。運なしに成功は難しいかもしれません。運には、努力を続けている者にしか見えなかったり、訪れなかったりする性質もあり、亜美さんには、当然の成り行きで、音楽の神が降臨していたのだと思います。
今日は、いつもの「菊池桃子ネタ」がなさそうな流れですが、実はあります。最後に少しだけ。
藤波君は、「尾崎亜美に付き合ってくれたお礼だよ」といいながら、秘蔵の1枚を私にくれました。
それは、マイクを片手に笑顔を見せている桃子さんの見事なフォトでした。世界に1枚しかない貴重な生写真です。藤波カメラマンの腕前は、プロ顔負けのレベルにあり、シャッターチャンスを見事にとらえていました。雑誌に投稿すれば入賞するレベルだったでしょう。高額で売ることもできたと思います。それをせず、友情で、ネガフィルムごと譲ってくれたのでした。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、藤波君は、桃子に頼まれて俺に写真を渡してきたんじゃないの~。
内緒よAngel
あなたのくれた羽
愛の元へと運んでくれる
Posted at 2025/12/07 09:07:38 | |
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