またまた、自作の弄りになります。
前車でも何度か本革で自作してきましたが、現車でも同様に実行しました。
<はじめに>
これまでに前車のアテンザを始め、多くの方からご依頼を頂いて、(KF)CX5やCX8のノブやブーツを製作してきましたが、やはり圧倒的にご依頼が多かったのがCX8の方からでした。
前車時には、自分で作りながら、実車に装着すると どんな雰囲気に変わるのかな?と思い続けてきましたが、やっと自分のCX-8で実際に目で見て確かめることが出来る様になりました。
<今回の仕様>
”今までに作ってきたパターンとはちょっと違いを出しつつ、「純正然」のイメージを大きくは崩さないものを作りたい”
と思い、現車の納車以降ずっと妄想してきました。
とりあえず、今回は以下の仕様で作ることにしました。
【シフトノブ】
センターは「ブラックノーマル」の革を使いつつ、ブーツのステッチの流れに併せてシフトノブにも2本のシルバーステッチを入れてみました。サイドはホワイトパンチング。
【シフトブーツ】
「
ブラックノーマル」の革を使いつつ、シフトノブへの繋がり感のあるシルバーステッチを入れる
<シフトノブ作業の流れ>
(今回は、mazda2(デミオ)用のノブを使いました。デミオ用もCX-8用も内部構造が異なりますが、互換性があるのでどちらにも流用が可能です)
①シフトノブの革剥がし
シフトノブの作業の中で、一番手間が掛かるのは、この「革はがし」作業です。
純正の革は接着剤でかなりベッタリと樹脂パネルに貼り付けられていますが、革を剥がすのにもかなりの労力が掛かり、剥がした跡に革の繊維状のものが多数付着したまま残ってしまいます。
そのまま革を撒きかえると凸凹になってしまうし、見栄えがとんでもないことになってしまうので、樹脂パネルに残った革の残骸を綺麗に落とさなければなりません。
この革を剥がす作業では、先曲がりペンチを使って革を各パネルから剥がした後、ハンディールーターや金ヤスリ、ペーペーなどを使いながら表面の繊維状のものを剥がす作業を行うのですが、革を剥がしたパネルの状態によっては、ノブ1つ分で1時間以上掛かってしまう場合があります。
手間は掛かりますが、これをしっかり行わないと出来栄えに影響が出ますので、手を抜くことが出来ません。
②革の切出し
自分で起こした型紙をもとに革を切出します。
ちなみに、使用する革は、1.4mm程度の革を業者に依頼して、純正の革とほぼ同じ厚みの0.8mmに加工したものを使用します。これは、1.4mmのままだと革がゴワゴワしてしまい、作業がし難い為です。
(プロの方だと1.4mm程度の革を部分的に革漉き機で薄くして製作していると思いますが、素人の場合はそれが難しいので、革全体を薄くしたものを使用しています。一応 私も革漉き機を所有はしているのですが、まだそこまでの技量がない為、全体を薄くして製作しています)
使用する革は、可能ならば、柔らかくて多少伸びのある革を使うと作業がし易くなります。
③ステッチ入れ
今回は、センター部に2本のステッチを入れます。以前はこういったステッチも革用の工業用ミシンで入れていましたが、今は手縫いで入れています。
というのは、ミシンも1列でのステッチ入れなら問題無いのですが、2列のステッチをミシンで入れると、どうしてもステッチの間隔が左右で揃わなくなります。
(2列縫いミシンも入手してトライしたことがありますが、手縫いの方が狭い箇所などのミシンでは縫えない箇所でも縫うことができるなど、圧倒的に自由度が広がるし、失敗し難く、安定した品質が出来上がることが判ってからは、ステッチは殆どレザークラフトの手縫い工法でステッチを入れています。)
(関連ブログの紹介)
内装パネルの本革化② 「デコレーションパネル編」
具体的には、ステッチを入れる部分にマスキングテープを貼り、ステッチを入れる場所に線を引いて、
そこに「菱目打ち」といわれるレザークラフトの道具を使って手縫いの「縫い目穴」を開けます。
(穴を開けた後にテープを剥がします)
この「菱目打ち」も市販で色んなものがありますが、私は3mm間隔のものを入手し、敢えて1本飛ばしで刃を削り、6ミリ間隔にしたものを使用しています。
(↓左がオリジナルの菱目打ち)
初めから6mm間隔で作られたの菱目打ちも市販されていますが、それだと刃の巾が広すぎて、好みの縫い目にならないので、この様に細工をして、使っています。
この菱目打ちも刃数が2本・3本・5本のものを使い分けながら縫い目穴を開けていきます。
④革の貼り付け
革の裏面にスプレーボンド(Scotch77)を拭きつけ、パネルへ仮貼り付けします。パネルの巻き込み部(パネル周囲の裏側)には、靴用の強力なボンド(ダイアボンド)を塗り、半乾きさせてから革の端を裏面に巻きこみながら、貼り換えます。
平面の革を立体的なパネルに巻き換えるため、普通に巻いたらシワが多数はいってしまいますが、そこは経験を活かして、適度に革を引っ張りながら裏面に巻き返して、見えない裏面にワザと細かいシワを多数作りながら、表面には極力シワが残らない様にします。
貫通穴の開いた「パンチング」レザーや、凹みの付いた「ディンプル」レザーの場合は、穴(凹み)が綺麗に(左右対称に)並ぶ様に配慮しながら巻き換える必要があります。
<シフトブーツの作業の流れ>
①革の切出し
純正のブーツから寸法出しをした型紙を使って革を切出します。
またブーツの固定に必要な穴も同時に開けていきます。
(ノブの場合と同様に、1.4mm厚程度の革全体を0.8mm程度に業者で薄くして貰った革を使用します)
②縫製
ブーツの前後部に当たる箇所(革の縫い合せ面)を革用ミシンで縫製します。
見えなくなる場所にホチキスを打ってから縫製するとズレもなく縫えます。(縫製後にホチキスは抜きます)
③ステッチ入れの準備
縫製した箇所を広げて、ボンドで固定します。
④ステッチ入れ
ブーツも前述のノブと同様の方法でステッチ用の手縫いの縫い目穴を開けて、手縫いでステッチを入れます。
(菱目打ちを使い、手縫いでステッチを入れるので、2本のステッチが綺麗に並びます)
⑤ブーツの口元加工
ブーツの口元にリング部品を装着します。
ブーツ加工の中で、ある意味一番難しいのが、この口元部の作業です。
この作業は経験が必要で、この部分の寸法出しや作業方法が悪いと、見苦しくなってしまいます。
口元に装着するリング部品は、純正のブーツから外して装着しても良いのですが、私はアクリル板を加工して純正部品と同様のものを製作しているので、それを使用します。
簡単にいうと、リングと革をボンドで接着するだけなのですが、リングの装着位置や革の巻きつけ方に細心の注意を払いながら接着し、リングと革を密着させるために、オリジナルで製作した冶具を使用しています。
こうすることで、見栄えがかなり良くなります。
<装着写真>
配色の好き嫌いはあるとは思いますが、やはり本革でステッチを入れた仕様で作ることによって、(個人的には)圧倒的にシフト周りの質感が向上したと思っています。
また、新たな構想が浮かんだら、作り直して装着したいと思います。
最後まで目を通して頂きまして、有難うございました。