先般、他所のエリアでiQ130Gの中古車をご購入された方からブレーキ操作感についてのご不満と対処方法についてのご質問がメールで届きました。その内容とは・・・
・ブレーキストロークが大きくて相当奥まで行かないと制動感が得られない
・そのために微妙な制動コントロールが得られないため怖い
・iQの事なのでウチに相談したい
そのような内容でした。
メールを頂いた時が夜でもあり、翌日に色々と過去データを探って事案を探してみたりしました。そして今日は涼しい朝早い時間にAir Repair iQのブレーキシステム全体(ペダルの動作機構も)を観察してみたりして考えをまとめてメール返信させて頂きました。
※データ取り用で新車時にProject‐μのパットを取り付けた時の写真
現車を観ていないので文面から推察された事はノーマルキャリパー(コレット式)のピストンの出具合の事。実車を観ていないのでなんとも言えないのですがピストンが標準位置まで出てきていない?だからディスクに接するまでの距離が出てしまい制動特性に難がでてきていると。
元々ノーマルでもiQのブレーキタッチも性能も良い車両特性、モータージャーナリストの清水和夫氏が2007年登場時に試乗した時のコメントがもうべた褒めだったんです。当時のポルシェに引けを取らない、とも・・・
私も4POTキャリパーにするまで新車時からノーマルでデーター収集を行っていたのですが不満はありませんでした。恐らくですが、前オーナーさんの時のメンテナンスに何らかの手抜き(整備不良というのではなくただ走れば良いというレベルでのメンテの事)があったのでは?と思うのです。
まずはノーマルブレーキの性能を復活させてやる事ですよね。チューニングはその次の段階で・・・
・ブレーキキャリパーのオーバーホール
・フルードのエア抜き(量が足らなければ追加、古ければ高性能ブレーキフルードに交換)
・ブレーキパットの点検や交換
それでもっと上のタッチを目指すならば
・高性能ブレーキフルードの採用(iQはクラッチフルードも同系統なのでエア抜きはじっくりと)
・ブレーキパットの交換(この場合摩剤性能云々よりもバックプレートの強度のあるもの→力がかかった時のたわみ)
・ブレーキホースの交換(強いてこだわるならばバンジョー部分の素材も)
以上です。
そしてこれらの事をやった上でなお上の領域を目指すならばブレーキキャリパーの4~6POT化という事になります。
ただし、キャリパーを交換する場合に注意をしなければならないのは単なる制動の分野に収まらない内容が絡んでくるという事なんです。
2輪(モーターサイクルやMTBダウンヒル)と同様に車両の姿勢変化&制御に大きく関係する内容なのです。コーナリングアプローチではブレーキングしながらステアリングを切りこみ、クリッピングを超える手前でスロットルをいれながら舵角を戻していく事になります。この一連の動きのなかで足回りの動きもあります。
この動きの中で、ブレーキの制動における過渡特性とサスペンションの沈み込み&戻りは大きく相関関係が成り立つのですよ。
ブレーキを制動部分でのみ考えると車両の動きは思ったものとはなり難くなるのです。
私がAir Repair iQで4POTキャリパーを考えた経緯は・・・
・機械式LSDが市場に無い(後日、弊社絡みでCUSCOさんから限定期間受注でリリース)
・S-VSCの介入状態がよろしくない
・車高を落としバネレートを上げるとTRCが介入して遅いし楽しくない
その対策として・・・
ブレーキングで4輪を綺麗に沈み込ませて旋回途中でイン側車輪の空転を抑える、ということに行きついたのです。単純に4POTキャリパーを装着するのではなくて、コーナリングアプローチ時から後輪側のサスペンションがどのように動き、次に前輪側が動くのかを考察しなければいけません。
4POTキャリパー用のブレーキパット摩剤の質と、後輪ノーマルキャリパー側のパット摩剤の質は当然違ったものとなります。そしてそのバランスと足回りセッティングとのバランスは同時に行わなければならないのです。
このブレーキと足の高次のバランスから機械式LSDを投入すると機械式LSDの抵抗(イニシャルトルクによる引きずり)を低く抑える事が出来るので馬力の低い車だと立ち上がり加速に影響がでてくるのですよ。
Air Repair iQがダウンヒルでGVB&GDBインプレッサやA45AMGに引けを取らないのはそういったトータルでのチューニングがなされているからなんですね(もっと突き詰めるとギヤ比、エンジンマウント、車体の補強、タイヤ関係も絡んできます)。
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2023/08/27 13:51:00