『ソニー・クリス/アット・ザ・クロスロード』(1959年3月録音)
番外編ではクルマではないけれど、クルマ周辺の事物をデザインしたジャケットをとり上げて、自分の好きなミュージシャンのアルバムを紹介することにしています。番外編第7弾は、道標です。
ソニー・クリス(1927.10.23-77.11.19)はチャーリー・パーカーの流れを汲むアルトサックスの名手で、よーのすけのジャズのLPシリーズでは
第9弾という早い段階で紹介しているお気に入りのミュージシャンでもあります。そこにも書きましたが、底抜けに明るい演奏なのに、どことなく哀愁を帯びている不思議な音色。一時期は、ソニー・クリスにはまって彼のレコードを立て続けに何枚も買い漁ったものでした。
ミュージシャンとしてのテクニックや才能は申し分ないのに、評価はいま一つパッとしなかった彼は、50歳の時に胃がんを発病しその年に亡くなっている(警察発表はピストル自殺)。病気を苦にしたのかどうか、自殺の原因ははっきりしない。
このレコードは、彼が32歳で脂ののったひとつのピークを示すものと言えます。ピーコックというブルースやゴスペルを専門とする弱小レーベルが演奏旅行でシカゴを訪れていた彼らに注目し、スタジオで録音をおこなったもの。オリジナル盤は希少で「幻の名盤」と言われたものですが、よーのすけが持っているのは日本で復刻された再発盤です。
パーソネルは、ソニー・クリス(as)、オラ・ハンセン(tb)、ジョー・スコット(p)、ボブ・クランショー(b)、ウォルター・パーキンス(ds)という2管のクインテットです。2管といってもアルトサックスとトロンボーンでは音色の軽やかさや煌めきという点で全く勝負にならず、オラ・ハンセンという無名の奏者はもっぱらソニー・クリスの引き立て役に徹しています。バックのピアノトリオはバランスも良く、ジョー・スコットって誰だろうと思っていたら日本盤のライナーノートにウィントン・ケリーその人が、リバーサイド・レーベルとの専属契約の関係から変名で参加しているのだと種明かしされていました。
さて、ジャケットの道標に話を移しましょう。上から、ロスアンゼルス、ニューオーリンズ、シカゴ、ニューヨークの順に矢印の看板が並び、その下にアルトサックスがぶら下がっています。矢印の看板はロスアンゼルスとシカゴ、ニューオーリンズとニューヨークがそれぞれ対になるような矢印の向きになっています。「クロスロード」とは十字路のことですから、この場所は対になった2つの幹線道路が交わる場所であるはずです。
ところが、アメリカの地図上で実際の都市を結んでみると、二つの幹線道路は交わらない位置関係にあり、現実にはそんな場所はあり得ないことがわかります。
このジャケットのデザイナーの意図は、ニューオーリンズとニューヨークでジャズの発祥と現在という時間軸を設定し、ロスとシカゴを結ぶことでルート66という現実の幹線道路をイメージさせるとともに、テネシー州メンフィス(ニューオーリンズとシカゴのちょうど中間点)に生まれ、15歳でロスに移住し、そこでジャズの活動を開始したソニー・クリスその人が、シカゴでこのレコードを録音したという個人史を表現したということなのではないかと思うのです。そう考えると、決してセンスがいいとは思えないこのジャケットも、意外と味わいがあるなと思えてくるから不思議です。
Posted at 2018/04/08 13:36:38 | |
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JAZZのLP | 日記