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2014年12月21日

BMW GINA Conceptから考えるZ4Mのデザイン

(以前にもクリス・バングルのことは書きましたが,また書きたくなりましたので…)

GINA: Geometry and function in “N” Adaptation
(無限の適応能力をもつ形状と機能,みたいな意味でしょうか)


おそらくこのモデルこそがZ4の原点であり,クリス・バングル時代のデザインの最も象徴的なコンセプトだと個人的に思う1台です.


このモデルは多くのコンセプトカーの「数年後の当社のデザインはこんなですよ」などというものではなく,「既存のカーデザインの常識をどこまで壊せるか」というチャレンジそのものでした.

車体を布で作るのは常識で考えればムリ,となるのですが,このチームの考えは安全性はフレーム構造でクリアし,伸縮性の布ボディにすることでプレス行程での数十の金型を省略し,ボディ製造,修理のコスト,時間、環境負荷を大幅に削減するための技術革新ととらえていたようです.彼らの試算では金型がなくなることでCO2排出量は1/10とのこと.


また布にすることでクルマのボディやシート形状など内外装を継ぎ目なしに自在に形を変えることができ,クルマと人が「ジェスチャー」でコミュニケーションできるようにする,という意図もありました.事実このクルマ,ウィンクするんですよね.


クリス・バングルの講演を聴いた時のことをブログでも書きましたが,この人は自動車メーカー1社のデザインチーフ程度でおさまる感じじゃなく,まるで大学教授のようでした.講演はまるで大学の講義か学会の講演さながらでした.


アート,文化,産業革命などの変遷を踏まえてカーデザインの過去,現在,未来について語り,没個性的な大量生産品をもたらした工業技術を,デザイナーの力でマテリアルから製造工程まで含めて進化させることができれば,工業製品でありながらより人間的な,アートの領域まで達するような製品ができるのではないか,「マシーンワールドとヒューマンワールドの融合」がテーマでした.

これも含めて一連のコンセプトが提案したのは,とても数年後のBMWのデザインなどで収まる話ではなく,
・ボディは鉄でないといけないのか?
・なぜ左右対称でなければならない?
・なぜ内装,外装ともいつも同じカタチでないといけないのか?
・車と人のジェスチャーにコミュニケーションは?
・カーデザインに各国,民族の文化をどう表現する?


(BMW X Coupe 2001)

など,これまでのクルマ作りをデザインで根本的に変えようというものばかりででした.「ここがスポーティで...」という話ばかりのデザイナーが多い中,デザイン論が話せる希有な方だと思います.

しかもそのプレゼンテーションは抜群に上手くて.自分がこれまで聴いた中で冗談抜きで最高の講演でした.プレゼンの中で繰り返された「既成概念を壊せ.もっとフレキシブルに発想しよう」というメッセージは,今の自分にも確実に残っています.


デザインに話を戻します.

Z4のドア,そしてZ4Mのボンネットのラインを出すために,新しいプレス技術まで開発させたそうです.Z4のフェンダーライン,Z4Mのボンネットラインは,GINAのピンと張った布の下からワイヤーを当てた,鋭角的な凸ラインに酷似しています.この布ボディのラインをメタルボディでどうやって表現するか,という試行錯誤の結果がZ4のデザインなのだと思います.


「良いデザインは簡単に描けるデザイン」ともいわれますが,Z4Mは少ないキャラクターラインで,それらのラインがバンパーとボディの分割線も含めてほぼすべて一筆書きのように連続し,あるべき所に線があります.Z4は当時のBMWのもっともデザインコンシャスなモデルで,結果として当時のBMWデザインを象徴する,かつもっとも練られたデザインだといえると思っています.



このGINAは2008年に発表されましたが,2001年には完成していたそうです.まるで手の内を明かすような,会社のデザイン哲学を象徴するようなコンセプトカーを発表するのはおそらく異例だと思います.

彼がBMWを辞めた理由は明かされていませんが,このような考えのデザインチーフと収益性を重視する経営陣との間に対立が起こり,結果としてBMWから離れることになったのではないかなぁと,個人的には想像しています.そしてこれを公にしたのは,クリス・バングルがBMWを辞めるまえに「オレたちはこれぐらいのことを考えてたんだぜ.もうこの後には関われないけど…」という意思表示?とも思ってしまいます.その後のモデルにZ4のような突き抜けた感じが見られないのが,それを示しているような気がするのです.

個人的には,i8も含めての現行BMWモデルで,E85/86 Z4, Z4Mほどのデザイン的完成度のものはないかも,と思っています.また「進んでいるけれども完成度が高かった」ために,最新モデルとならべても古くささを感じさせることはほとんどありません(唯一フロントエンドがGINAのようなものだったら…とは思いますが).

それ故に,最もラディカルなコンセプトカーと非常に近いデザインを持つZ4Mは,その古典的なフォルムと唯一無二のメカニズムとが相まって,現在の評価は低いものの,フューチャー・クラシックとしてのポテンシャルは,実は高いのではないか,と思うのです.

ブログ一覧 | Z4MC | 日記
Posted at 2014/12/21 18:26:02

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この記事へのコメント

2014年12月21日 19:34
え?z4って評価低いんですか?汗

これはあくまでも想像ですが最初首脳陣は「今のデザインを壊してくれー!」位の事言ってたんですよ。
で、クリス氏はそれをやっちゃった。
ってか、やり過ぎちゃった。コストも掛かった。
で、首脳陣は「んー、もうちょっと控え目に…」って考えに変わっちゃったもんだから、クリス氏は「話がちゃうやん」って事になり退社した。っと。

実際、国産車のデザイナーもこんなようなデザインは作れると思いますが、それを許さないんですよ。国産車メーカーの首脳陣は。
だから結構海外に出てってますよ。日本人デザイナー。

ま、何にしろz4は911に次ぐwカッコよさですなw
コメントへの返答
2014年12月21日 20:20
少なくとも万人受けはしてないでしょうね.バングルデザインって結構拒否反応ある人多いと思いますし.

どこかの動画で見ましたが,クリス・バングルがいろんな人に聞いてみると,どれも同じデザインを何とかしたい,という機運が社内にあったんだそうな.それでデザインでモデルごとの差別化を提案したら,役員会で通ったと.

で,ブログな感じの路線で講演もいっぱいやって突っ走ってるうちに,儲け,台数至上主義に変わっちゃって...っていう流れかと.まさにもげぇさんのおっしゃる通りかと私も想像します.

元アウディの和田さんとかもそうなんでしょうね.

911は昔のデザインが偉大すぎて以後はダメダメ(爆)な気がしますが,Z4もBMWの一里塚っぽい感じになるのかもしれません.
2014年12月21日 20:27
GINA懐かしい(((o(*゚▽゚*)o)))
発表されたちょっぴり後にBMWミュージアムで見たことがあります♪
布と言われても、それが全く分からないくらい鉄のひんやりした感じと真っ直ぐな線で構成されていて、凛としててカッコ良かったです(≧∇≦)

私個人的には、ちょうど同じ時期からBMWのクルマ自体が変わってきてしまった事もあり、バングルさんはあまり好きではなかったんです^^;
でも、Z4だけは凄く新しさと古さが絶妙にミックスしていてカッコイイ(≧∇≦)って思っていて、実車を見に行ったりカタログを集めたりしていました。

バングルさんて、フィアットクーペにしてもそうですが、スポーツカーというキャンパスで輝く方のように感じます(^^)

確かにバングルさんが抜けてからキリっとしないモデルが増えてしまったように感じますね。
今思うとBMWが変わろうとしていた方向とバングルさんの見ていた景色は違ったのかなぁ〜って思います。
当時まであったBMWのキレは考え方もデザインも走りも薄まってしまったように感じてしまうので(T_T)

長々とすみません(>_<)
コメントへの返答
2014年12月21日 20:47
実物見られたんですか?うらやましい!
フロントもサイドもなぜか「サムライ」と表現したくなるような感じですよね.鈍く光る日本刀のイメージと通ずるものがあるかもしれません.

バングル時代はなんでもあり,というか,「あらゆる可能性にトライして正解をみつけていく時代」だったと思います.そのなかには外れモデル(汗)や煮詰めきれない部分もあり,それらが評価を落としている気もします.

ただ悪評高い「バングルバット」は,どんどん高くなるクルマの各部位をバランスさせるには,「あの方法しかなかった」と本人は述べています.単純に技術的要件を満たすためのデザインだ,と.

この方のデザイン・テイストはかなり独特でもあるため,デザイン的自由度が高い車種,やはりスポーツカーやクロスオーバー系でこそ魅力が発揮される感じですね.しかし全体のフォルムはきちんと煮詰められているので,ディテールに目をつぶると意外に正統派なデザインなんですよ.

今のファン・ホイドンクはE63をデザインした人でもありますが,革命家というよりまとめ役っぽい感じですよね.精鋭デザイナー達をけしかけてどんどんチャレンジさせ,新しい力を引き出させるような指導力は,やはりクリス・バングルならではの力だったのだろうな,と勝手に思っています.
2014年12月22日 18:02
こんにちは Z4乗りとしては非常に興味深いコメントです。クリスバングルのデザインは癖があるので万人受けはしないでしょうね。Z4は見る度に新鮮に感じます。
ロングノーズ・ショートデッキだからなのかもしれませんが、少しクラシカル(車は実際古いかもしれませんが)な雰囲気と斬新さを兼ね備えているデザインだなあと改めて感じます。”フューチャークラッシック”ってZ4を端的に示してる表現だと思います。
コメントへの返答
2014年12月22日 20:25
こんばんは

好き嫌いがはっきり出るデザインですよね,Z4は.数も十分あって価格も下がってもそれほど見かけません.

現在のオーナーの皆さんは,ACコブラや古典的英国スポーツカーを彷彿とさせるフォルムと,キレのあるラインのコンビネーションに魅力を感じていると思います.

future classicという言葉は「将来クラシックカーになりそうなクルマ」という意味でよく使われ,ここでもそのつもりで使いましたが,確かに未来的な物と古典的な物のコンビ,っていうとらえ方もできる言葉ですね.
2014年12月23日 0:27
///Ivanさん、こんばんは。

先ほどはコメントいただきありがとうございます。

クリス・バングルはハンサムな方なのですね。
知的な印象でBMWのデザイナーで終わるのがもったいないというのはちょっと話が違いますね。

さて、ちょっとだけ真剣に。
Z4のボディー形状はちょっとずんぐりむっくり感があります。
特に後方からみたときに横幅の広い今のスポーツカーのシルエットと違い、縦長の小型スポーツカーな雰囲気があります。
E63なんかと比べると遊び心があるように見えます。

BMW社に改善のお願いができるとすれば、キドニーグリルまで一体型のボンネットではないかと思います。
昔のBMWのようなボンネット形状であったら左右のヘッドライトのトップラインを結ぶ継ぎ目が消えて、綺麗に湾曲してまとまったデザインになっていたのではないかと。
コメントへの返答
2014年12月23日 7:48
おはようございます!
こちらこそアストンのルックスは素晴らしい目の保養です(笑)

もてると思いますこの方.いまはイタリアにワイナリーを所有し,そこに自前のデザインスタジオを構え,世界中のクライアントからのプロジェクトを請け負い,大学での講演も行っているそうです.

Z4はE46のシャシーをベースとしなければならないという制約があり,その中で頑張った結果ということだと思います.バルクヘッドの位置も決まっているため,エンジンをさらにキャビンに押し込めることもできず,ロングノーズに見せるためにオーバーハングを3シリーズより少しだけ長くしていたり,と視覚的トリックをいろいろ使っているようです.

たぶんあのボンネットのラインは歩行者保護のため先端を金属よりも柔らかい素材にする必要があったのではないか?と思っています.その技術的要件を解決することと,「目新しさ」のために,あの「目やにライト(爆)」になってしまったのだろうとおもいます.しかしQ3からアウディも追随していますし,あれが世の中の流行なのでしょうね.

今後ともよろしくお願い申し上げます.
2014年12月23日 12:09
///Ivanさん、こんにちは(^-^)ゝ
Ivanさんの見識と知性がよくわかる素晴らしいブログですね。
クリス・バングルのデザインは正直、へんてこで好き嫌いがはっきり出るデザインだと思いますが、古典的なロングノーズのスポーツカーをあそこまで孤高のデザインに仕上げたのはすごい力量だと思います。Ivanさんの仰る通りZ4はカーデザインの歴史に残るのではないかと思っています。
ボクはZ4Mがある旅の風景ばかり写真に収めていますが、いつみても「カッコいいなぁ、美しいなぁ」と思えるからこそ飽きないで写真を撮ってられるんだと思います。いつかIvanさんのZ4MCも撮らせてください。も一つ言うと、やっぱZ4Mはインテルラゴスブルーが至高ですよね。他の色はちょっと...┐( ̄ヘ ̄)┌
すいません。Z4Mバカのコメントでブログを汚してしまいました(^_^;)
コメントへの返答
2014年12月23日 14:15
こんにちは.コメントありがとうございます.

全くの専門分野外なのに下手の横好きで勝手気ままに書いてますので,このようなコメントを頂くと恐縮してしまいます(汗).

この方のデザインを「ヘンなデザイン」では済ませられないのは,土台となる基本のフォルムはガチガチにしっかり作ってありながら,その上に全く既存の表現の違うデザイン言語,それこそ鉄とかの素材感を超える表現で仕上げてしまった,ことだと思うんです.まさにおっしゃる通りに.

なかなかチビや妻の制限が厳しくて(汗),オフ会は困難なのですが,あの綺麗な空気感の写真はいつも素晴らしいと思いながら拝見しています.撮って頂ける機会がありましたら大変光栄です.

Z4MCを買う時には,それこそ1年以上の間,色についてさんざん悩みましたが,インテルラゴス・ブルーにして正解だったと思っています.私も同意見です(笑).

「美しいクルマは,止めて離れてからまた振り返りたくなるクルマ」みたいなことも言われますが,ホント,クルマを止めてから毎回振り向いて見ているのは,私です(爆).

プロフィール

Ian*です. BMWから走りの良さを学び、そのスポーツ性の究極として直6NA&MTのBMW Z4Mクーペへ。同時に、その佇まいと世界観に惚れてレンジロー...
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