世界中にコンパクトカーはたくさん販売されている。
コンパクトカーはグローバルカーとして販売されることが多く、日本車では
トヨタヤリス、ホンダフィット、日産ノート(欧州、北米では販売終了)、
三菱ミラージュ、マツダ2、スズキスイフトなどが、グローバルコンパクトと
して評価も高い。
しかし、同じBセグメントのコンパクトカーで別格の評価を得ているモデルが
ある。それがVWポロだ。
今となってはコンパクトカーとは呼べないほど立派になったCセグメントで
長きにわたりワールドスタンダードに君臨しているゴルフの弟分として販売
されていて、ゴルフに勝るとも劣らないほど絶賛されている。日本での販売も
堅調だ。
なぜここまでポロの評価が高いのか?ヤリス、フィットはまだまだ追いつけて
いないのか?ポロが絶賛されている理由について岡本幸一郎氏が考察する。
「ビートル」の通称で親しまれたタイプ1に代わる大衆車としてフォルクス
ワーゲン(以下「VW」)が1974年送り出したのが初代ゴルフで、その弟分と
なるボトムレンジを担うクルマとして少し遅れて翌年登場したのが初代ポロだ。
ゴルフと相似に近いデザインに、ふた回りほど小柄である点はいまと同じだ。
1994年にデビューした3代目ポロは日本で1996年から販売。ポロに初めて
GTIが設定されたのもこのモデルで、日本でもにメジャーな存在となった。
初代ポロは日本では正式に輸入販売されなかったが、1981~1994年と長い
モデルライフを送った2代目の途中でヤナセが限定的に販売。
その後1996年よりフォルクスワーゲン グループ ジャパンにより本格的な販売が
始まった3代目で、日本でも一気にメジャーな存在になった。
さらには、ゴルフが先駆けとなったホットハッチの代名詞である「GTI」が
初めてポロにも設定されたことで、まさしくゴルフの弟分というイメージが
強まった。
以降、2001年、2009年、2018年にモデルチェンジして現在で6代目となる。
低価格で世界に普及させることが重要視させているポロだが、エクステリア
デザインはビックリするほど質感が高くなっている
ポロはBセグメントの世界最量販車種
ポロはもともと南欧や開発途上国など、よりコンパクトで低価格な実用車を
求める層に主眼を置いて開発されたクルマであり、その本質は今でも変わって
いない。
グローバルではやはりCセグのゴルフが圧倒的に多いが、実は近年のSUV人気の
影響で、より安価なゴルフやポロをしのいでティグアンがVWの最量販車種と
なっていることには少々驚かされる。
欧州でも人気のヤリスは、現行モデルで走りとデザインに特化したコンパクト
カーだが、走りに関してはポロもベンチマークの1台だ
そのいっぽうでポロはポロでダントツのBセグにおける世界最量販であり続けて
いることには違いない。
それはフィット(ジャズ)やヤリスら日本勢にとってもはるかに及ばない域で、
その大きな要因が、ほかでもない走りのよさに定評があるからだという。
むろんフィットやヤリスもポロの牙城に迫るべく努力しているが、幅広い販売
網や浸透した知名度を含めポロがこれまでに築き上げてきた地位はそう簡単には
崩せそうにない。
長年輸入車の新車登録台数の上位に食い込む
ところで、ゴルフもポロも時間の経過と共にそれぞれ進化をとげてきた中で、
共に徐々にボディサイズが拡大し、とりわけCセグ車の中でもその急先鋒と
なって日本の5ナンバー枠から外れた4代目ゴルフは、当時としてはかなり
「大きくなった」というインパクトを与えた。
それが当時、5ナンバーにこだわる日本人にとってポロに目を向けることを加速
させた面もある。そしてポロはゴルフの弟分としての期待にしっかり応えられた
ことが、現在の高い評価につながっている。
ポロはBセグメントのコンパクトカーとして世界で最も売れている。今では
プレミアムコンパクトと呼ぶにふさわしい質感を誇る
直近の2019年度(2019年4月~2020年3月)における純輸入車のモデル別新車
登録台数ランキングでは6位につけた。
1位 BMW MINI/2万2255台
2位 VWゴルフ/1万8416台
3位 メルセデス・ベンツ Cクラス/1万3438台
4位 メルセデス・ベンツ Aクラス/1万2946台
5位 BMW 3シリーズ/1万720台
6位 VWポロ/9550台
7位 ボルボ40シリーズ/8485台
8位 ボルボ60シリーズ/7841台
9位 アウディA3/6233台
10位 メルセデス・ベンツBクラス/6109台
上位常連のMINIは全モデルを含めた数字なのでいささか正確性に欠けるのだが、
傾向はご理解いただけよう。
上級モデルのRラインは1.5LのTSIエボエンジンを搭載し、GTIとは違った
コンセプトで走りを追求したモデル。車両価格は310万9000円
それ以前のポロの登録台数と順位は必ず首位か2位というゴルフほどではないに
せよ、ポロも常にトップ10の上位に名を連ねているのは見てのとおりだ。
現行ポロは新世代プラットフォームの採用で大きく進化
現行ポロが日本に導入されてからこれまでのグレードごとの販売比率は、特別
仕様車「Comfortline limited」を含む「Comfortline」が過半数で、次いで
「Highline」が3割強、「GTI」と「R-Line」を合計して約1割、残りが「Trend
line」となっている。
直近だけ見ると同特別仕様車の効果で「Comfortline」が4分の3程度まで増加
しているという。このあたりにもポロのキャラクターがよく表れているように
思える。
現時点では、コンフォートラインリミテッドの車両価格は265万3000円からと、
輸入車コンパクトカーとして買い得感が高い。
それにしてもモデル末期のゴルフがこれほど売れているのはさすがというほか
ないが、やはり代を重ねてここまで大きくなったゴルフをあまり快く思わず、
ポロに流れた人も少なくないはずだ。
かたやポロはそんなダウンサイザーが不満を覚えないよう、これまでも装備や
質感を高める努力をしてきたが、「MQB」(VWグループの新世代プラット
フォームの呼称)の採用により走行性能や乗り心地がジャンプアップしたのは
間違いない。
VWグループの新世代プラットフォームのMQBは、フレキシブルに作れる柔軟
性の高さと上級モデル譲りの品質、乗り味を実現できる利点がある。
日本で販売されているポロで中間グレードとなるのがハイライン。車両価格は
278万8000円で安全装備も充実している
ポロシリーズの最高峰に君臨するのがGTIで、新世代2LのTSIエンジンを搭載。
走りのしっかり感は感激もの。車両価格は362万9000円。
3ナンバー化がネガになっていない
全幅は1750mmに拡大されたが、今となってはBセグでは一般的な数字であり、
ポロがついに3ナンバーとなったことはあまりとやかく言われていない。
むしろボディサイズ拡大によるスペースのゆとりや快適性の向上がターゲット
層の拡大につながっている。
ポロは3代目くらいまでは質実剛健を地で行っていたが、現行モデルの内装を
見てもデザイン、素材、色遣いなど目を引くものがある。
よりワイド&ローになったスタイリングも高く評価されており、3ナンバーに
なったことがデメリットとして捉えられているようには思えないと関係者も認識
しているという。
それもあって、従来のポロはVW全体の平均よりも女性オーナー比率が突出して
高かったところ現行型は未婚男性にも好評で、年齢別では20代の購入者が増加
しているそうだ。
また、ポロの購入者は元々VWユーザーだった人が多いのだが、TSIエンジンや
DSGなどに象徴されるVWが誇る新技術をいち早く採用してきた先進性や話題性の
高さに魅力を感じる人が大勢いるのはいうまでもない。
まとめ
VWは古くからクルマ界で安全性、環境性能に精力的に取り組んできたが、
ポロもアクティブ、パッシブ両面で安全装備が充実しているのも安心感に
つながる。
さらには、安全性を重視する人の割合が競合車と比較すると高いという調査
結果もある。
それについても、輸入車として初めて、JNCAPにおける予防安全性能評価で
最高評価(ASV+++)を獲得し、その後にはレーンキープアシストシステム
“Lane Assist”を追加設定するなど、競合車に対して圧倒的な優位性を保って
いる。
そのあたりのクラストップレベルの充実した安全装備もユーザーを惹きつけて
いることは想像にかたくない。
こうしてポロがもてはやされるのは、VWブランドの信頼感はもとよりゴルフの
弟分として、あるいはBセグの世界標準として相応しくあるように、VWが車と
しての基本的な部分に極めて真摯に取り組んできた賜物といえる。
ポロは派手さがないので目立ちはしないが、コンパクトカーの世界標準として
ベンチマークとなっている。
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先代のポロは前期と後期のGTI及びブルーGTをディーラー試乗にて、