以下、バイクのエンジン話。
貯まったネタ含めホント延々と?ダラダラと書き連ねてしまったので、興味無い方、是非スルーを!
まず、サワリから。
現所有、今回テコ入れのGPZ1100は…
旧GPZ(GPZ900R:1984年〜)系譜のエンジンを積んだkawasakiのバイクです。
外観↓購入時この色でした。
系譜
GPZ900R→GPZ1000RX→ZX-10→ZZR1100[〜最終D9 01'年]→(GPZ1100派生? 95'〜98'年)→ZRX1100→(ZZR1200派生?)→ZRX1200
と、こんな感じです。
知っている人には当たり前な話ですが…
エンジン基本設計は変わらず、各所ネガ対策とボア、ストロークアップで引き継いでこられた、トンデモなく息の長く続くエンジン系列の1つです。
で、恐ろしいのは筑波で57秒台?200PS?
チューンドとは言え、そんなところまで到達しているトンデモないものもあります。
因みに自身所有のGPZ1100ですが...
純正では、カタログ値129ps。
後軸では100psほどでした。マフラー換えて…確かデビル管にしたら117ps出て感動した記憶があります。もう20年前くらい…遠い昔の話(~_~;)
にしても兄弟車種の中でも地味な出力でした。
更に車体が重く(乾燥重量242kg)、ホイールベースが長く、運動性能は素の状態ではけして褒められたモノではありませんでした。
ただロングツーリングには疲れ難い姿勢、気を使わないアクセル操作(パワー無いので)、更にはホイールベースからくる安定性。
のんびり長距離ツーリングには討手付けの車両でありました。
更にベースは安い!と悪い事ばかりでも無く。
そんな感じで、決して魅力溢れるモノでは無くユルイツアラーといった印象。
それが何故購入に踏み切ったかというと…
テントツーリングも目的の1つではありましたが…
リリースされて早々、月木レーシングでレーサーに仕立てられ…
これが!コースレコード更新、優勝と華々しい活躍をし、また非常に格好良かった!!
↓これ
で、
購入検討当時、思った訳です。
エンジンのポテンシャルからして、デチューンされているだけなので、イジれば速いハズ!
また、同型エンジンのタマ数はあるから長く部品が出て補修しながら乗り続けられる。
スタイルはそもそもGPZ900Rの様なシュッ!としたフレームワークが好きだったものの出力向上させた後継機では強度が厳しくエンジンヘッドを挟む形でアルミフレームを配置する形に。
そんな中バックボーンフレームとダブルクレードルフレームと違いはあれどGPZという名を冠して1100で出たこと。これは買いでしょ!と。
実際、性能面を何とかするのは、そんな簡単なものではなかったのですが…(;^ω^)
結果、購入してカレコレ人ひとり成人する年月の付き合いになり、後軸出力も幾度となくOHとメカチューンを繰り返し150ps程(後軸だと、ZZR、HONDAブラックバードでも実測130ps台)となり、購入当時の意志貫徹したと思っております。
そんなエンジンでしたが、クランクケース変形等で御臨終となり、一旦、GPZは休止状態となっておりました。
勿論、
GPZを止める思考…全くもって無く、ノーマルエンジンのストックも有り、OH&チューニングして載換え、車体復活を想定。
ただ以前のパワーで既についていけなくなっていたフレーム(アルミサブフレームは一応付けてましたが)にも課題大有りで…
足廻りは前後共々換装して、そのバランス等もある程度取れてはいましたが…
ここがかなりの悩みどころでした。
悩み続けた挙げ句…
考えが纏まらず(-_-;)・・(-_-;)・・・
いったん棚上げしメガーヌさんのサーキット走行に没頭していたら早、数年経過。
それがかなり思い切ってDIYで補強&軽量化に踏み切り…先日漸く大手術は完了となりました。
(微調整は残ってますが)
そして、いざ!エンジンのOH&チューニングに着手したのでした。
前置き長過ぎですねー。ほぼ自身の頭整理か…(-_-;)
エンジンハンガーに吊るしっぱなしから、漸く解体に入ります。

※オイルパン、腰上とバラシ中の一枚
で、今回考えていたメニューですが…
過去のOHで施してきたメニューの上乗せ。
今回は徹底的にやります!
何ヶ所にも手を加えるので、全て外注だとお金も大変。DIY可能なところは兎に角DIYです。
なので、その辺も含め…
まず、整理から。
【テコ入れ箇所】
①クランクジャーナル
潤滑不良による焼付き。このエンジンではあまりに有名な話であり…
知人でも実際、コンロッドがクランクケース突き破ってますので、上まで回す人、特にサーキットユースでは対策必須と思います。
これまではメタルクリアランスの適正値管理は当たり前として、オイル流路の形状修整による流動抵抗低減策を。
その一つ、バイパスパイプ接続先のジャーナルホルダのオイルラインの穴の偏芯ですが…

これは前エンジン同様、リューターで慣らし加工。多少の流路抵抗低減に。

↑の挿し込むパイプの肉厚分残してテーパー状にリューターで均しました。
あと、リリーフバルブの効き始め変更(玉→ピストン型)により油圧アップで、油膜切れが起きにくい様に改善。ここまでは過去実施メニューのお代わり。
今回では根本改善として、オイルパン改造によるバイパス術を施し油量増。更にはクランク軸のラッピングです。これはメタルの耐久性も上がるそう。
まず、バイパス。これはさすがにDIYではハードル高く、手段はTGNへ加工依頼かK-Factryの削出しオイルパンキット購入かです。
後者の方がスマートですが、値段は倍!!
実績もあり、信頼出来る前者を選びました。
いざ出してみると↓こんな感じで帰ってきます。

バイパス箇所はボス溶接されてますね…
で、面一発、機械加工でさらっている感じでしょうか。

外観ではステンメッシュホースでバイパスライン形成されてます。
で

更には、クランクケース側はバイパスパイプを通す箇所を、これは自分でリューターにて切削。
ここにクランクのジャーナルホルダの穴に向けて差し込むパイプを通す事になります。これでバイパス付オイルパン受入準備完了。
クランク軸のラッピング、これはひたすらヒモを使い微粒子コンパウンドで磨き上げる。
メタル耐久性も上がるので、地味に磨き上げるのみ。方法はYou Tubeに載ってますね。
before

↓
after
ついでに…
コンロッドの側端面クランクウエイトと接触する側も表面整えました。
と
更にはピストンピン…
ラッピング後、それでも少しカジッた様な跡が残ったのですが、コンロッドとピストンのせん断を受ける位置かと思いきや…
そうではなく、

この穴ふたつあり、コンロッドとピストンピンの潤滑のハズが穴位置とピストンピンのカジリ跡と合致。
潤滑の穴のエッジで、ピンカジリって本末転倒ですね…(*﹏*;)
このまま放置は出来ません。
緩和の為、全てリューター球形ビットで面取り加工しました。
②カムシャフト
潤滑不良によるカジリ。純正では出なかったもののハイカム化(nassertSt-2)で実際、出てました。元々設計時の潤滑油供給量が少ない為、オイルポンプのリリーフバルブの逃し圧を上げ、油圧自体上げてましたが、もう少し必要と実感してました。
暖機(低回転維持)が長いと良く無いとか有りますが、機械的にも打ち手が有るハズと。
今回、秘蔵の新品ハイカムNASSERT St-2!投入なので、改めて自分でもおさらい。
[NASSERT St-2]
リフト量:in 9.95mm/ex 9.40mm
作用角:in300゜ex292゜
[純正]
リフト量:in 6.68mm/ex 6.68mm
作用角:in290゜286ex゜
と比較して、ハイリフトかつ広角。
↓シルエットからしても、山が高く台形

廃版になっていたところ偶々再生産された際に見つけ、かなり以前に購入していたもの。
上述カジリ症状への追加対策は…
WPC+ハイパーモリショットをチョイスです。
これで表面硬度上昇と摩擦係数低減狙い。
勿論、フリクションロス低減によるエンジン性能向上も期待♪
依頼は相模原のエヌ・イーへ。
蛇足ですが…そこで、最新型CBR1000RRRに搭載されたDLC施工のカムシャフト…
非常に気になっていたので、この施工
出来るか念の為、聞いたところ、これは鋳物カムだと出来ても剥離の可能性が有りコーティング難しいので、CBRは削出しでは?との事。
市販で削出し&DLCカムとは!!
HONDAは変態的なモノ作るなぁ~と今更ながらも感心した次第。
↓施工後 こちらはWPC+ハイパーモリショット。全体的にネズミ色
併せて
ロッカーアームシャフト中古品にも施工。見事な均一ネズミ色に。
③ロッカーアーム
カム山との接地面。摩擦により結果、カム山のカジリを発生させる相手でありこちらの打ち手も有るハズ。
という事で、ラッピング施工。
これはDIYで今回初。

before;そのままだと、面粗度高そう…

after;リューターとバフ用フェルト、青棒、白棒使用
耐水ペーパー#2500で下地処理…と、やってると平面ゆえにフェルト+青棒で一気に慣した方が早かったので、ペーパーはあまり使わず。

シムとの接触側
手触りはほぼ鏡面。良い仕上がりです。
この摩擦低減で延命化とフリクションロス低減に。
先日見たu-tubeで15万km以上走行したCBR954のカム山高さが何と1.5mm以上摩耗で減っていたというのは驚きました。カジリなどの異常摩耗ではないものの、平滑なままの通常摩耗としても驚きです。
それに対し今回の施工がどう効いてくるか…興味深いところですが、計測データを時系列で取ってオープンにされたもの見たことないので、さて、どうなることやら。
④バルブ
ステムのラッピングで、摺動抵抗の低減。バルブそのモノも磨いて、鏡面加工。カーボン付着抑止と熱の均一化、応力分散など狙い。

上;加工後
下;加工前
磨きはボール盤のチャックに噛まして、研磨綿 荒→中目→細目→耐水ペーパー#600 →布、研磨剤3M5970 → 5981と順番に磨くと…
油分が着いて、汚く見えるものの、ほぼ鏡面加工。
EX側はより高温環境下で素材が異なるのですが…
表面処理などあれば鏡面までは止めておくべき?!と前エンジンまでは、程々にしていました。
今回は実際、雑誌にあった某ショップの加工見たり、現物のバルブ傘の鋳肌状態などから見て、攻めて良しと判断。in側、ex側 共に鏡面加工しました。
④エンジン内部オイル溜まり
仕切の穴を慣らして、オイルのリターンを早くする加工を。
性能云々では無く、オイル交換の際、オイルが出来るだけスムーズに排出出来る様に。思った程出ず…は有りがち。その対策です。これも前エンジンの施工お代わり。面取だけですが。
④in,exポート
鋳込肌のまま、合わせの段付きも有るので、ポート研磨です。
過去の経験は実験でもあり、今回は性能重視…のつもり。
↓写真は表面仕上げ前の切削による形状ほぼ完成状態。
in側
ex側
④シフト
操作が硬いのは、持病。
以前のエンジンに組んでいた、溝を磨いたシフトドラムが効果あったので組み換え。更に磨くか?程度で充分と判断。
⑤ウォータージャケット
過去Wiseco用にボーリングしたスリーブから水が漏れて、蒸気機関車みたいになっていました。
今回は油圧プレスがあるので、スリーブ打ち替えでOリング組み直しが可能に。
まず、スペアのオリジナルピストンが入るシリンダーから練習しました。
抜くスリーブ毎、バーナーで炙ったあと油圧プレスかけます。
治具(赤い部品↓)は足場材から切出したモノ。板厚が充分有り均一に力が掛り良い感じ♪
因みに治具の素材とした足場材はこちら↓
切出し用にマーキング↓
切ったあと赤着色したのに深い意味は防錆だけです。
結果、非常にスムーズに抜けました。

しかし手に入れた中古エンジンの水の管理が悪く、サビサビ〜
これは再使用可能か、一旦、花咲かG処理に回します。
で、本番!自分が使っていたWiseco用にオーバーボアのシリンダーを抜取り!

凄くキレイで、自分で自分を褒めたい気分です♪♪
お水管理かなり良いと、とても20年以上経過したと思えないくらい、凄く良い状態を保ってられるという証拠ですね。
(何だかんだで結果2年おきにクーラント交換していた事が大きいかと)
そして

内側クロスハッチもキレイに残っててgood!!
ボーリングしてから5万km以上は走っていたはず。

今回抜き取る目的のOリング交換です。勿論、Oリングはカチカチ。
ふとOリングを入れる溝を見ると、シリンダー毎に溝位置がズレています。
というか、交互に高さが違う。
添付写真暗くて見難いですね。
さらに↓なら分かり易いですね。

はてさて?何故?
かは結論出ず…
で、第3のシリンダー(オーバーボアのΦ78mm)があったりしまして…
これは青空作業環境下の時代、GPZを復活させようとした時代に手に入れていたものですが、一瞬組替えたものの腰下が駄目で復活に至らなかったので、そのままストックしていたもの。
左:前エンジン搭載のΦ78mmシリンダー
右:第3ストックΦ78mmシリンダー
(ZRX1100用?ZZR D型最後の方?かは不明)
この右のシリンダー、そのままだと気付けませんでしたが、スリーブを抜くと…
↑写真だと見辛いのでアップ↓
な!
なんとOリングは二重になっている!ではないですか。
シリンダー上部は鍔付きで固定。鉄とアルミの熱伸び差はスリーブのスカートがフリーの構造。ここで吸収される訳ですが、古くなるとここから水漏れしてクランクケース内が残念な事に…
の延命化の為、進化したシリンダーではOリング二重になっているのですね。
更には…
ウォータージャケット内各気筒は過去仕切られたモノでしたが、何と隣部屋との間にバイパス穴が!!
これは良いモノを見つけました。
本来、各気筒は伸び差は出来るだけ無いに越した事はありませんので、水温も近い状態にしておくに越した事ありません。
ただどこでも穴開けて良い理由はなく、問題の無いところとすべき。設計で位置決めしている…それを見せてくれてる訳で。使わない手はない♪
構造の差を見比べても、問題は無いと判断し、それを踏襲することにしました。
まず、同穴サイズでマーキング
そして開けるべし!
(天地逆)
あと、Oリング二重化はさすがに精度良く溝掘り出来る訳はない事、またOリングがヘタれるのはどの道、二重でもほぼ同じタイミングと考えれば、シート面をキレイにしてシール性を向上させて、水管理をしっかり行えばOリングは時期が来れば、交換すれば良いだけで問題無かろう!と結論付けそのままです。
しつこいですが、更にスリーブ側の構造ですが…
左:GPZ1100用ストックの汚い方
※花咲かGドブ漬けしてもこのレベル。
孔食もあり再使用は危険か…
右:ZRX1100用?
掃除前で汚いですが…機械加工のヘアラインも見えて左のモノよりは幾分キレイ

右の進化型では、鍔直下と更には少し下に溝が切られています。
そこはクーラントが通る冷却溝。
溝1重(線)→2重(面)とすることで、燃焼から最も熱を受けるヶ所をより効果的に冷やし、より熱変形を抑える構造と言うことでしょうか。
これも、加工は致しません…出来ませんが。
で、復旧作業。
オリジナルの塗装剥ったシリンダーとセットで使ってたスリーブを今回は使います。
他…特に対策が進化した方は予備に。
Oリングセット後、仮合わせ。
そして無事スリーブの圧入完了。抜く時と逆手順で割とスムーズに作業は進みました。
平面のチェックも問題無く。
過去やりたくても出来なかった作業ですが、治具と油圧プレスのお陰様で無事完遂。
⑥ピストン
Wiseco Φ78mmは掃除して使い回し。
(掃除済↓)
ピストンリングは新替え。これとヘッドガスケットはe-bayがお求めやすい価格になってました。
つづく。