
BMWでは2004年の先代1シリーズ発売の頃から、ランフラット・タイヤ(パンクしても一定距離を走行できるタイヤ)が標準装着されている。だから2006年夏に320iツーリングを購入して、初めてBMWに乗るようになった私は、車はその後今の120iカブリオレに代ったが、ずっとこのタイヤを使い続けていた。
そしてついに昨日、BMWで初めてランフラットではないタイヤを履いた、わが愛車を運転することができた。
その感想は、おおざっぱに言えば「大して変らない」。細かく言えば「素晴らしい乗り味になった」。それから、走っていて「懐かしい感覚」があった。それから、荒れた路面を走っていて、今まで「車高落としたからなぁ…」と済まないような気持ちになっていたのが、昨日は「悪い道だ!」と素直に思えるようになった。そして何よりも、タイヤが変った感じを身体全体でとらえながら走ることが、素晴らしく楽しかった。高速道、一般道合わせて200kmほど走り終えて、まだ走り足りないと思ったほどだ。
「大して変らない」と思ったのは、重さのためではないかと思う。今回、
通販で購入したタイヤをBMWのディーラーに送ってもらって
装着したが、ついでに旧タイヤ(RE050Aのランフラット)と新タイヤ(S001の非ランフラット)、それにホイール(BMW純正7J×17)の重量測定もお願いした。
新タイヤの重さが11.7kg、旧タイヤは溝の減り具合によって重さが違っていて、重い方で11kg、軽い方だと10.6kgしかない。もともとタイヤ交換を決意したのは、つい先日の
車検で、次のような計測結果が出たからだ。※1
そこで、この数値から新品時のランフラット・タイヤの重さを推測してみる。溝残量の差は3.5-1.9=1.6ミリ。重さの差は11.0-10.6=0.4キロ。すると1ミリあたり0.25キロとなる。新品タイヤの溝の深さを8.5ミリとすると、たとえば残り3.5ミリのフロントには、その差5ミリ分の重さを加えて、11+(0.25×5)=12.25キロが、新品タイヤの重さとなる。非ランフラット・タイヤとの差は0.55キロ、つまり550グラムしか軽量化されていない。
なお、以前、
320iツーリング純正16インチホイールとランフラットタイヤの重さを調べてもらったことがある。メーカーや走行距離の違いがあるので一概には比較できないが、その時の結果では、約1年使用したコンチネンタル205/55R16のランフラット・タイヤの重さは約13kgだった。

さて、話を戻すと、私や計測したディーラーの人にとっては、最も意外な結果だったS001重さだが、それによって、出足の軽さといったような変化は残念ながら生じなかったものの、これまで使い続けてなじんできているバネやショックとは相性が良いというメリットはある。場合によっては、次はそれらを交換したくなることもあるからだ。
また、そもそもランフラット・タイヤが重くて固い理由は、ゴムを厚くしてパンクしても走れる剛性を確保しているからだ。この剛性が、BMWのどっしりした乗り味を作り出している要素の一つだと思う。だから、非ランフラットのタイヤに換えた結果、コーナリング時にタイヤがねじれるようだ、というネガティブな感想も聞いたことがある。しかし、この新タイヤS001では、そのような感覚はないように思う。
メーカーの宣伝を見ても、そのためにサイド補強材を使っているとのことだ。
最初に書いた「懐かしい感覚」というのは、BMWに乗る以前の車で、タイヤから聞こえてきた音や感覚が戻ってきたからだと思う。軽い段差を超える時に、「ポコォン」というような澄んだ響きがわずかに聞こえてくる。今までは「ゴシュッ」とか「バゴッ」という音と衝撃だったのだ。綺麗に舗装したばかりの道なら、どんなタイヤでもあまり違いはないが、首都高や橋の継ぎ目や、いつも工事で掘り返しているような路地を走る時の差は大きい。

タイヤがパンクしても走れる、そして、日頃不要なスペア・タイヤを積まなくても済む、というメリットはとても大きいと思う。だから本当は、最近発売された、第三世代ランフラットのS001 RFTを選びたかったが、現時点で適合サイズがなく断念した。それで、ブリヂストンが好きな私は、代って同じ銘柄の非ランフラットタイヤを選んだ。履き替えと同時に、
Slimeという応急タイヤ補修システムを買った。
「素晴らしい乗り味になった」と感じたのは、それがランフラットであるにしてもそうでないにしても、新しいタイヤに換えたから、という理由が一番大きいだろう。けれども、もっと走り込んで、この素晴らしさを堪能しながら、その奥に隠された色々な理由を考えていきたいと思う。
※1 (11/28追記) … 車検でリア・タイヤの溝がとても少ないことがわかったわけだが、最初は、フロントとリアのローテーションでしのごうとした。ところがローテーション後にディーラー・サービスマンが試走してみたら、すり減ったフロント・タイヤでは、轍にハンドルが取られてまともに走れなかった、とのことだった。
なぜ、リアばかりこんなに減ったのか。①FRだから、②リアの指定気圧が高いから、③リアのネガティブ・キャンバー角(いわゆるハの字)が強いから、などの理由が考えられる。サービスマンの話では、特にリアのセンターを中心に溝残量が少なかったそうだ。
なお、BMWは標準装着以外のタイヤ(たとえばM-Sportパッケージのホイール・タイヤ・セットなど)は、リアには太いタイヤが装着されることが多い。このことからも、BMWのリア・タイヤの役割の(または負担の)大きさが推察できると思う。
※ 12/3追記 … 約500km、ディーラー推奨のタイヤ皮むき(慣らし)終了距離を走って、印象が変わってきた。
まず、タイヤとリムの噛み合わせがなじんで、見た目でもタイヤのサイドがいくぶん膨らんだ上に、走っていて段差のいなし方が軽くなった。また、タイヤの接地性が上がって、ステアリング操作に対して車が機敏に動くようになった。また、アクセル・ブレーキのレスポンスが上がった。同時に、心地よいエンジン音・排気音がよく聞こえるようになった。タイヤが静かになったと言うよりは、エンジンが元気になったように感じられるのである。まあ、そのあたりは、単にタイヤが新しくなったから、という理由も大きいだろう。
しかし、シフト・ダウンまで滑らかになったと思うのだが、さすがにそれは、エンジン・ギアの回転の抵抗が、タイヤを通して、地面との摩擦の反力として体に感じられるものなので、相応に柔らかになったタイヤに起因するものと考えて良いと思う。
いずれにしても、BMWの個性がより強く感じられるようになって、運転の楽しさが格段に上がったのは確かなことで、このタイヤに変えてとても良かったと思う。

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パーツ・整備 | クルマ
Posted at
2011/11/26 15:49:26