
この正月、NBロードスターをMTで乗っていた私の若い弟子が、BMWに乗りたいと年賀の挨拶メールを送ってきた。
「よし来た!」とばかりにメールで盛んに連絡を取り合いながら中古市場を検索して車種を絞り込んでいき、最後はみん友の
アオちゃん&シロちゃんさん(以下アオちゃん)のディーラー紹介に頼って、ついに先月末、彼はF20型118i M Sportエディション・シャドーを手に入れることができた。
そのお披露目と、BMWの特徴に応じた操作を伝授するために、三人で三台の1シリーズを乗り換えながら試走を重ねた。ちょうどアオちゃんの修理代車が118d Styleだったので、私(というより女房)の120iMスポ、弟子の118iMスポの三種類を比較できて面白かった。
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最初は118iに乗った。中古とはいえ去年9月登録2千キロの上物で、まだ慣らしが終わったばかりという距離だ。エンジンは「B38B15A」という3気筒1.5Lターボ、パワー136ps(100kW)/4400rpm、トルク22.4kgm(220Nm)/1250~4300rpmで、18インチの黒塗りホイールを履いている。
「エディション・シャドー」は、黒を基調にしたシックなデザインと豊富な標準装備(たとえばアクティブ・クルーズ・コントロール)が特長だが、さらにこの車には「アップグレード・パッケージ」として、電動の黒革シートやHi-Fiスピーカまで付いている。
「BMWの特徴に応じた操作を伝授」などと偉そうに書いたが、軽量で柔らかいNBのボディをMTで操っていた弟子に、パドルすら付いていないBMWを勧めた私の罪滅ぼしのような気持ちもあって、BMWの8速ATをシフトノブで操るコツと、剛性感の塊のようなBMWのボディと18インチを履いたMスポの足を、ブレーキングとステアリング操作による荷重移動で操るコツをアドバイスしたかったのだ。
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次に118dに乗った。実は中古市場検索の時に、私が真っ先に目を付けたのがこの1シリーズのディーゼル車だった。3シリーズのディーゼルに遅れること4年の2016年に発売されて以後、とても人気が高いモデルなのだ。エンジンは「B47D20A」という4気筒2Lターボで、パワーは150ps(110kW)/4000rpmと118iより少し大きい程度だが、ディーゼルならではのトルクの方は32.6kgm(320Nm)/1500~3000rpmもある。
けれども1.5L3気筒の118iに比べて、鼻先に載せている4気筒2Lの重いディーゼルエンジンの挙動への影響が気になったことや、当時の出物の関係などから、結局弟子には勧めなかったのだ。
それなのに私の方は、これまで118dを実際に運転したことはなかった(無責任だ(汗。この日はそんな思いを混じらせながら運転してみて、まず、320Nmのトルクにビックリした。出足が軽快かつ強力なので、今ではあまり驚かない150psというパワーも十分以上の大きさに感じた。それで私は思わず、
「う~ん、やっぱりこっちにするべきだったかな」などとつぶやいた。
すると同乗していたアオちゃんが「だけどパワーの出方が急でコントロールしにくいね」とか「パワーがだんだん盛り上がっていく感じがしないね」などと言ってきた。確かに彼の言うとおりだった。この日は、いくらか高いスピードでスムーズにコーナーをクリアして再加速する練習をしていたので、アクセルとブレーキとハンドリングのタイミングがハッキリしてわかりやすいことの方が大事だった。
確かに118iは118dと比べると、パワーは14ps(約91%)、トルクは100Nm(約69%)も低い(ただし車重は50kg軽い)。けれども、数字の上ではわずか400回転ではあるが、回転数の増加に応じて伸びていく、ガソリンエンジンらしい漸増的で透き通ったパワーの出方が、エンジン音や排気音に連動して体感しやすい。逆に、118dのモリモリパワーは、それを味わったり確認したりする暇もなく、車をあっという間にかなりの速度に持って行ってしまう。音もちょっと単調だ。
「これは直線番長だね」「なんていうか、うりゃーどやー!って感じだね」などと評し合った。もちろん、この暴れ馬のような特性をうまくコントロールできれば、ダイナミックな満足感があると思う。
しかし、やはりエンジンの重さのために、角を曲がる時に鼻先が外側に残る、アンダーステア傾向がいくらか感じられた。
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最後に私(の女房の)120iに乗った。「N13B16A」という今や一世代前のN型4気筒1.6Lターボで、パワーは177ps(130kW)/5000rpm、トルクは25.5kgm(250Nm)/1500~4500rpmのガソリンエンジンだ。「120i」の名前どおりパワーは三台中最高で118d比118%だが、トルクは同比78%である。距離は1万3千キロで、他の二台よりも1万キロくらい多く、また私が慣らしからよくしつけたので吹け上がりも良い。
「これいいねー、売っちゃうのもったいないね」とアオちゃんが言う。「そだねー、まだこれからだよね」と私は答える。本当にそうなのだ、この前車検を通したばかりだし。「次にこれを買う人はお得だね」と彼が畳みかける。「そーそー、おれが時々ムチ入れてたからね-」とだんだん私の目と口調が棒状になる…まあこれだけ褒められたんだから、120iには満足して旅立ってもらおうか。
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最後に、バネとタイヤの違いで面白いことに気付いたことを書いておきたい。18インチを履いた他の二台と違って、118dだけは標準の16インチを履いていた。サスペンションも、他は固めのMスポサスなのに対して、この車だけノーマルだった。だから走る前は、この車が最もロールやピッチが大きく、荷重移動がわかりやすいと思っていた。
ところが、実際にはそれは大して変らなかった。その代りによくわかったのは、ロードインフォメーション(路面状況)の伝わり方の違いだった。それは同時に、トラクション(路面を蹴る力)とその反応速度の違いにもつながるだろう。
だから16インチでスポーティに走るには、「よくタイヤに圧をかけて、上手にゴムを潰しながら、車を動かす意識がいっそう必要になる」(アオちゃん談)。Mスポでもその意識はもちろんあった方が良いが、バネやダンパーの硬さと太くて薄いタイヤが、それを最初から補ってくれていたのだった。
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F20 1シリーズ・ハッチバック | クルマ
Posted at
2019/03/18 19:55:54