薫風

　コロナだ外出自粛だと騒いでいる今日も，長生きすりゃぁ懐かしく思い出されるのだろうか…。さわやかだが物憂い朝である。

　なんとはなしに想いだされた短歌…

　永らへば　またこの頃や　しのばれむ
　　　　　　　憂しと見し世ぞ　今は恋しき
　　　　　　　　　　　　藤原清輔朝臣

　詠み手の藤原清輔朝臣は，父と仲が良くはなかったそうだ。
　
　小生も親爺に随分と厳しく躾けられた反動か，傍目には仲良い父子には見えなかっただろう。とはいえ，そう遠くはない己の死期を受け容れつつある父を見るにつけ，やはり肉親の情は湧く。この物憂さは，いくばくかの不孝の悔いでもあろう。
　
　何はどうあっても，人はみな，自分の一日を自分なりに生きていくしかあるまい。他人に人生を変わってもらうことも，背負ってもらうこともできまい。
　
　加賀平野を一望できる丘陵公園へ出かけよう。


　遠目では薄く見えるが，近づけば色あでやかである。




　もう数週すれば，こちらも満開となろう。




　
　綿毛は風がひと吹きすれば飛び散るに違いない。





　生き急ぐ君はもう出てきたんだ。





　声はすれども，姿は見えず。

　
　季節はお構いなしに必ず巡ってくるのである。