堅雪かんこのブログ一覧

　　　日本人のポップスターが世界で通用しないのは、歌手としての力量が圧倒的に不足しているからである。ところが、よく見てみると逆に日本ではその圧倒的な力量のある歌手はあまり人気がでない。むしろほどほどの歌唱力で愛らしい人の方が好まれる。音楽というのは人の心を和ませるものだからこれはこれでありで、カーオーディオ等で流すならそういう歌の方が実際心地よい場合もある。先日放映された水曜歌謡祭での前田敦子の歌、服部克久じゃないが「これが日本の歌謡界の現状」ではないだろうか？












　　しかし、３０年前に出されたこの曲は、皆圧倒的な力量の歌手ばかりだ。どれも人まねじゃなく自分の個性を出し、声が大排気量エンジンのように余力を持って発せられる。
　こういう人達に混じってマイクの前に立てる日本人のポップスターはいない。

　　　世の中にはよくわからないことが多い。最近、野球やゴルフ、そしてテニスでは世界に通用する選手が日本から普通に出ているが、ポップスだけはアメリカで成功したという話は聞かない。ところが日本人で唯一、全米のビルボードのヒットチャート３週連続第一位になった歌手がいた。それが坂本九で、ご存じの曲「上を向いて歩こう」である。もっともタイトルはSukiyaki Song に改題されてのことだったが。１９６３年の出来事であり、それ以来、現在までこのようなことは起きていない。これは謎である。




　ではひとまず、坂本九の歌を聴いてみよう。









　今聴いてもすっと心に入ってくる。曲も中村八代というジャズピアニストが作曲したもので、歌詞は永六輔。こういう歌い方は、当時の流行だったのか思い出せる範囲ではこの人が似ているかな。









　どことなく似ているでしょ。でも、もしこの人達といっしょだったらどうなったか？次の１９６４年、ビルボードのヒットチャートに複数の曲をトップからぶちこんでいった歴史的出来事が起こった。これには米国の音楽業界も面食らっただろう。








　　さて、話を坂本九に戻すと、彼が米国でヒットした理由は、調度その頃の彼ら米国人の音楽的嗜好に合っていたのではないかというのがまず考えられる。曲が非常に優れているし、無理にオリエンタルなメロディーやアレンジもしてない（タイトル以外は）。坂本九の歌い方も上で紹介したように、向こうの歌手に似て違和感を感じさせない。




　　　１９６４年は９１１が発売開始され、１９６５年にはHONDAがＦ１で初優勝した年。そういう古い時代の出来事だった。
　ちなみに当時のHONDAのチーム監督中村良夫は初優勝した時、本社に向け"Veni Vidi Vici" (来た、見た、勝った）というシーザーの戦勝報告を真似て電報で送ったという。喜びが伝わってきそうだ。








　　　

　　長らく入院療養されている患者さんに、時々音楽の趣味を聞いてみることがある。するとビートルズ世代以前の人は圧倒的に演歌が多く、特に北島三郎のファンが多い。一方ビートルズ以降はフォーク、ロック、ポップスと好みが様々に分かれる。そして私に年齢が近い人は、洋楽ではビートルズ、カーペンターズ、サイモン＆ガーファンクルなどを当時浴びるように聴いており、普段は無口な患者さんに聞いたらカーペンターズのヒット曲名が次々出てきたのに驚いたことがある。




　　最近、このカーペンターズのカレンに似た歌い方をする日本人が現れて再び彼らの懐かしい曲が流れたりする。７０年代の若者は皆好んでカーペンターズを聴いていた。そのカレンが３２歳で拒食症で亡くなった時は、何で？と思ったものだった。兄も薬物依存症で苦しんでいた時期があった。世界のトップスターだった彼らの苦悩はなんだったのだろうか？
　彼らのヒット曲の中ではやはりこの「I Need To Be in Love 」がいい。











　カレンが亡くなってしばらく後に、兄リチャードが一人で歌うものもある。









　　　　ところで、上のレコードジャケットのクルマの名前がわかる人は相当な通ですｗ

　神戸連続児童殺傷事件の犯人、元少年Ａの著書「絶歌」が出版された。世間での評価は嫌悪感を持つ人が多く、本の売り上げが印税として彼の懐に入るのは耐え難いと不買を勧めている。しかし、彼のようなサイコパスは最近の名大女子学生や佐世保の女子高生が起こした殺人事件の例でもわかるように現実に存在しているのだから、忌避するばかりでなく彼らのことをよく知る必要もある。
　そして彼の著書を一読しての感想は、やはりサイコパスの文章だった。文才もあり精神医学や文学から得た知識をてんこ盛りにして、自分の行動を「文芸化」して描写している。だがその饒舌さとは裏腹に伝わってくるものは違和感だ。




　　例えば、被害者の切断された頭部を中学校の門の上に置くというこの事件の象徴的な場面での本人の書き方こうだ。



　　校舎南側の壁沿いに二本並んだナツメヤシの葉が、降りかかる月の光屑を撒き散らすように音もなく擦れ合っている。呪詛と祝福はひとつに融け合い、僕の足元の、僕が愛してやまない淳君のその頭部に集約された。自分がもっとも憎んだものと、自分がもっとも愛したものが、ひとつになったのだ。僕の設えた舞台の上で、はち切れんばかりに膨れ上がったこの世界への僕の憎悪と愛情が今まさに交尾したのだ。
　告白しよう。僕はこの光景を、「美しい」と思った。







　　　彼はこの本を遺族に手紙を添えて送ると言っている。まさにこれこそがサイコパス的なおぞましさだ。殺人行為の達成感を、持っている知識を総動員して装飾してあるが、簡単に言うと名大女子大生が老女を殺した後にツイッターに書き込んだ「ついにやった」と同じことである。こちらは理系の優秀家系の娘なので表現は簡潔だ。





　　人間の脳は「言い訳製造機」なので、言葉ではなんとでも言える。サイコパスの理解の鍵は、私達は元々獣であり、食うか食われるかの世界に長らく生きてきて遺伝子にはしっかりその記憶が保存されているということである。最も人間に近い遺伝子を持つチンパンジーも近くに生息している猿を集団で追い掛け回し、捕まえると生きたまま八つ裂きにして食べることが観察されている。だから、根源的に暴力や虐殺、死体損壊、食肉に関して、それが実は深い快感に結びつくことは誰の心の中（遺伝子）にもあり、それが巧妙に封印されているだけなのである。









　　そして、社会を形成するには裏切り者は躊躇しないで処罰する。その形態を残しているのがマフィアの世界だ。マーチン・スコセッシの得意とする世界。目の前で弟が撲殺され、自分も半殺しのまま穴に埋められる。







文明的な法治国家ではこのような私的リンチは禁止。裁きは法廷で行われる。もしマフィアみたいな世界で、他人の子供や家族を殺すようなことがあったら、その犯人は少年でも生かされることはないしその家族も危うい。ある意味クリーンな世界だ。





　　　この本は、彼が実際の犯人ではなく作家としての創作だったら面白い作品とは思う。

　　前回の続きであるがこの事故報道でクルマの写真をみた時、もしやあのクルマではないかとすぐに思った。かつての自分の愛車でもあり、ホイールもそのシリーズで売られていたからである。しかしその写真はなかなかわかりにくいものを用いていた。しかもこのクルマだけはニュースでは軽ワゴンにぶつかった「乗用車」と報じられている。乗用車であれば今回関わったクルマはすべて乗用車だ。そして後続のクルマをRV車と呼んだり、最近では最初にぶつかった乗用車をRV車と呼んだりと混乱している。




　そもそもRV車のRVはレクリエーショナル・ビークルで米国ではキャンピングカーのことをいうが、日本ではステーションワゴン、ワンボックスワゴン、ミニバン、SUVを総称してRVと呼ぶようになったとWikipediaには書いてある。しかもビークルは「車」の意味だからRV車と呼ぶと車車と重複する意味になる。
　さらに皆さんもお気づきのことと思うが、ＴＶのニュースではBMWという名前は極力出ないようにしている。一方のシボレーは関係者のインタヴューで話す言葉でそのままちらりと流している。




　　勘ぐった見方をすれば、BMWはスポンサーになることが多いので最初から自主規制でわからないようにし、一方シボレーはあまりスポンサーとして出てこないからいいかみたいな印象だ。きちんと軽ワゴン、BMWのSUV車、シボレーのピックアップトラックと報じればすごくその関係性がわかりやすくていいのにそうはならない。




　　現時点での報道では乗用車（BMW X5)に乗っていた３人は、入院中であるものの軽傷とのこと。軽ワゴンに衝突した後、街路灯にもぶつかり炎上したにもかかわらず、乗員は保護されしかもドアがちゃんと開いて、炎上前に脱出できた。
　一家族を消滅させた若者の行為は、言語道断の蛮行であるが、交通事故は誰にでも起きる身近なことなので、クルマに関してもより正確な報道を望みたいところだ。