
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
MLBの話題を記したいと思います。大谷翔平の今シーズン第32号本塁打が、往年のウィリー・メイズやバリー・ボンズをほうふつとさせる物凄い弾道だったからです。
場所は、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地オラクルパークでした。打球音は、野球漫画で汎用される「カキーン」ではなく、金属音の「マキーン」に近かったと思います。この球場での名物となっているマッコビー湾に飛び込む見事な場外本塁打(通称、スプラッシュヒット)となりました。実況放送を聴きながらボートで待機していたファン達が、着水地点に向かって集まり、最後は、海に飛び込んだ方が争奪戦を制しました。
この本塁打に黙っていられなかったのでしょう。たった1本の本塁打のために、ボンズ氏がかなりの時間をかけて解説をしていました。同じ左打者であり、歴代最多の35本のスプラッシュヒットを記録している方ですので、適任といえば適任ではありました。大谷選手は、ボンズ氏と似た打ちかたをしており、左腕を畳んだまま腰の強烈な回転で、内角の難しい球を果てしなく遠くまで飛ばしていました。身体の軸を中心にしたコマのような動きでした。
――どうぜ、ボンズ自身の自慢話に終始するのだろう。
最初は、そんな少し冷めた気持ちでした。日本のかつてのご意見番なら、「喝」はなくても、「あっぱれ」もないだろうと予想されるところです。大打者は、たった一本の本塁打を褒め称えるようなことはしないものです。ボンズ氏は、禁止薬物の使用疑惑で殿堂入りこそ果たせていませんが、通算762本塁打、シーズン73本塁打、史上唯一の500本塁打500盗塁など、MLB史上最高の選手として盛名を馳せています。通算4,256本の安打製造機ピート・ローズは、最後の最後まで、イチローの功績を認めませんでした。おそらく、そういう流れになるだろう、と。
――ボンズ氏の解説が始まりました。
「聞いてくれ。この音だ。これは、バットのエネルギーが最も伝わる一点で球の中心を完璧に砕いた証拠だ」
「俺と同じ技術だ。左腕を畳み、最短距離でバットと球をコンタクトさせている」
「このインサイドワークには、一切の無駄がない」
「ローガン・ウェブ(投手の名前)は、大谷のバットをへし折るつもりで厳しい内角を攻めた」
「失投ではなかった。ベストボールだったともいえる、その会心のカットボールをマッコビー湾まで完璧に運ばれた。見ろ、ウェブのこの表情を。完全に心をへし折られてしまっている。この一本は、ただの本塁打ではない。エースのウェブとジャイアンツの投手陣は、心に、そう簡単には癒えない深い傷を負ってしまったんだよ」
途中、細かい技術論があり、それこそ自慢話が始まったと思いました。ところが、最後まで聞くと、真意は違うところにありました。ボンズ氏は、厳しい内角攻めに苦しみ、重圧と闘いながら、壮絶な努力を積み重ねて、内角打ちの極意を修得していました。聖域のようなそのレベルに、若い大谷選手が既に足を踏み入れていることに驚愕し、畏敬の念を表したかったのです。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
テニスでもそうなのですが、真っ芯で球を捉えると、手に何も感触が残らない感じになります。
――もしかしてだけど、41年間、俺に恋の手応えが何もなかったのは、桃子の心の芯を打ち砕いているからなんじゃないの~。
君の名前は、優しさくらいよくあるけれど。
Posted at 2025/07/26 08:29:12 | |
トラックバック(0) | 日記