
標題の3編目を記すことにしました。非常に濃い時間を過ごさせて頂いた方ですので、シリーズ化できるのですが、なにせコンプライアンス上の問題がネックです。深慮のうえ、厳選しなければなりません。
前作が30年物の思い出でしたので、そこから逆算すると27年物くらいの話です。
プロゴルファーのセベ・バレステロス似で、三菱ギャランに乗っていた先輩と同じ職場にいたのは、実質一年余りでした。ポケベルが普及し始めたくらいで、携帯電話はなく、私の転勤に伴って疎遠になったのはごく自然の流れだったと思います。
初夏のある日、先輩から久しぶりの電話がありました。
「おお久しぶり。お前、今度、若者軍団で伊豆に旅行行くんだってな。いいなあ、俺も日程が合えば、混ぜてもらいたかったよ」
さすが、情報通の先輩だと思いました。どこかから噂を聞きつけたのでしょう。先輩の用件は、旅行に役立つ秘蔵のアイテムがあるから使って欲しいとのことでした。
郵送、あるいは同じ会社ですから、それこそ業務用の社内便でこっそりでもよかったのですが、私が先輩の下宿まで取りに行くことになりました。先輩のギャランに影響され、ディアマンテを購入したばかりでしたので、運転がしたかったのです。当時は珍しかったアルカンターラのシートが心地よく、走行性能も申し分ありませんでした。高速で100kmの道のりを走破し、期待に胸を膨らませて到着しました。秘蔵のものが何なのか、電話では教えてもらえていませんでした。
「これさ」
実物を見て落胆しました。
「先輩。シュノーケリングはしないんですよ」
先輩は、この答えを予見していたようで、「お前はなにも分かってないなあ」と嬉しそうでした。
「これで釣りをするんだよ」
「ゴーグルで手づかみするんですか?」
「半分正解だ。ただし、釣れるのは女の子だ」
先輩の厚意は有り難く受けることにしました。
後日、ギャランの先輩と同期の方から聞いた話で、このアイテムを使った手口は、仲間内でよく知られていました。先輩は、グアムやバリ、あるいはプーケット等、南方へ旅行に行ったとき、一日中このゴーグルを使っていたそうなのです。女の子の集団を見つけると、そのゴーグルを集団の中央めがけてポーンと投げます。そして、すかさず、「海の中きれいだよ。見てみな」と声をかけるのが常套手段だったという話でした。ビーチの端から端まで、休憩なしでひたすら歩き、何往復もしていたとか。同期の方々からも、あの精神力と体力には敵わねえ、と一目置かれていました。
先輩の作戦は、夜のレストランやラウンジ等で偶然再会したとき、「あっ、昼間のゴーグルの人」と認知されることにありました。実際は、ゴーグルなしでも十分覚えられていたと思います。コンプライアンスギリギリの際どいトークに、ギャランの走りのようなキレがある方でした。
Posted at 2022/08/07 08:26:56 | |
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