
2006年に1週間滞在したアトランタは、まさに珍道中でした。リーダー格の加納先輩(仮名)は、何度か渡米経験があり、怖いもの知らずでした。児玉先輩(仮名)は、初の渡米で画に描いた慎重居士でしたから、なにをするのにも私が調整役を務めました。
最初の波乱は、夕食でした。ガイドブック等を見ず、私が雰囲気だけで選びました。モンタナグリルというバイソンビーフの有名店です。どのような肉質なのかは薄々想像できていました。弱気な児玉先輩は思い切り嫌がっていましたが、せっかくこの地にきて体験しないのはもったいないと説得しました。
いきなり450gをオーダーしました。長く記憶に残る強烈な臭みでした。表面をしっかり焼くことで、生臭い獣の風味がしっかりと封じ込められていました。柔らかい赤身なのですが、特製ソースがなければ完食できなかったと思います。不思議なもので、これが慣れてしまうのです。1日4食の生活でしたので、毎日通うことになりました。
ただし、2日目だけは、最初、別の店を訪れていました。初日の深夜に、酒屋を探しに行こうと言い出した加納先輩のわがままで非常に危険な目に遭っていました。警察が目の前で不審者を現行犯逮捕してくれました。人気番組だった警察密着24時の視聴者ではなく、出演者になった気分でした。命がけでようやく見つけた酒屋では、童顔で小柄な児玉先輩が未成年者として扱われ、「ガキには売れねえ」と断られてしまうハプニングが続きます。
2日目の昼には、「僕、正直言ってアトランタ嫌いだよ」と児玉先輩の元気がありません。この晩訪れたアジアンレストランでは、熱帯魚のような白身が出てきて、さらに元気がなくなりました。「こんなの寿司じゃないよ。昨日のお肉のほうがまだマシだよ」という訴えで、モンタナグリルを再訪したのでした。
3日目に、アメフト選手のような巨漢の集団と隣席になり、彼らが注文した品をこっそり覗くと、私とまったく同じものを食べていました。2m、100kgに近い巨漢の方々でしたから、自分が過食気味なのを悟りました。
Take careと卓に言い残して、その集団の何人かが先に店を出ていったのですが、肉以外はほとんど手をつけずに残していることに気がつきました。私のほうがはるかに高カロリーを摂取していたのです。前菜が皿いっぱいのフライドポテトで、オニオンフライも付き、さらには大量のマッシュポテトも添えられていました。それらを当然のように完食していました。
帰国する前日には、ズボンのボタンが止まらなくなり、現地で安物を緊急調達しました。肉に罪はなく、炭水化物を食べすぎたのだと思います。1週間で8kg太りました。
あれから16年が経ちました。バイソンビーフは、まったく恋しくありません。でも現地に行ったら、ホテルにチェックインする前にあの扉を開けてしまうような気がします。

Posted at 2022/08/17 08:46:37 | |
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