
学生時代に、テニス部の仲間4人で遊びに行くことになりました。秋の団体戦が終わった直後の2週間だけしかない貴重なオフシーズンでした。行き先は、雀荘です。
いつも利用している場所がいずれも満卓だったため、初めての店に入りました。これが失敗でした。隣の卓で、8人打ちをしていたのです。よく見ると、麻雀を打っているのは通常どおりの4人で、それぞれの方々に舎弟らしき人物が付いていました。普通は、立直をかけるときには、千点棒を卓上に置くのですが、この卓では生々しい別のものが使われていました。
身の危険を感じ、半荘(1ゲーム)で店を出ました。非常に憂鬱でした。気分転換も兼ねて、ビリヤードをすることになりました。今から思えば、街を変えるべきでした。
ビリヤード場の店内には先客がいて、四つ玉をやっていました。「ひとーつ、ふたーつ、みっつう」という独特のコールを今でもよく覚えています。
マスターにプレーを申し込むと、「ナインボールなの?」とたいそう珍しがられました。映画「ハスラー」の影響で、巷間では、圧倒的にナインボールが主流でしたが、ここではマイナーな競技だったようです。
見た目や服装で人を判断してはいけませんが、四つ玉をプレーされている方々は、ある種の映画に出演できそうなほど迫力がありました。
最初にブレイクをした横山(仮名)は、緊張のあまり、白球をうまく突けず、「カシュ」という大きな音を立ててしまいました。限りなく空振りに近いミスです。ブレイクどころか、白球は弱々しく斜め方向に転がって直ぐに止まってしまいました。
技量的には、我々の中でナンバーワンだった若尾(仮名)が、「俺がやるよ」と仕切り直しでブレイクしました。これは、見事なショットで、台上を10個の球が激しく散らばりました。いきなり、2個もポケットに入れてしまうスーパーショットでした。ゴットン、ゴットンという音が続けてしました。
ところが、数秒後に異変が起こりました。床から聞いたこともない異音が生じていました。ポケットに吸い込まれた球は、ビリヤード台の内部を通ってある場所に集められます。そこに三角形の器具をセットしておくのを忘れたために、2個の球がそのまま台を飛び出し、床を転がっていったのでした。
しかも、転がった方向が最悪でした。四つ玉のプレーが中断し、そこの方々が2個の球を拾い上げてくれました。無言です。平身低頭謝って球を回収しました。
すると、我々の中で最もチキンな小倉(仮名)が本領を発揮しました。
「いやあ、なんか楽しかったなあ、今日のビリヤード」と独り言を発し、その勢いで精算を済ませたのでした。店を出ると、四人とも示し合わせたかのように早歩きで立ち去りました。
Posted at 2022/12/08 11:50:50 | |
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