
父親は、大病を患うまでヘビースモーカーでした。なので、少年期の実家や車の中は、常にヤニの臭いが充満していました。あんなものを吸って何がいいのだろう、というネガティブなイメージを抱き続けていたものでした。
ところが、この印象を一変させるヒット曲が出現し、小学校低学年だった私のクラスでも流行るほどになりました。宇崎竜童氏率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「スモーキンブギ」でした。
ものすごくガラの悪そうな大人達が、とてもカッコよく見え、部分的な歌真似をよくしていました。
「目覚めの一服、食後の一服、授業をサボって、喫茶店で一服」
歌詞と曲調がともにシンプルで覚えやすかったのも、流行る要因だったと思います。
――こうしたなか、エンタメ志向が強烈で、人を笑わせることに執念を燃やしていた那賀川君(仮名)という同級生がいました。
ある日、那賀川君に、新ネタを見て欲しいと頼まれ、放課後の空き教室に潜り込みました。
彼は、理科の実験器具として全生徒に支給されていた豆電球と電池を小道具として持参していました。電池のプラスとマイナスという概念を学ぶためのシンプルな教材でした。
那賀川君は、いきなり、「スモーキンブギ」のサビを熱唱し始めました。
「朝から晩までスモーキンブギ、スーパットでスモーキンブギ」
次の瞬間、血液が逆流しそうなほどの興奮を覚えました。
「スーッ、パッ、パッ。スーッ、パッ、パッ」
仕込みとして、電球は、ズボンの股間周辺の内側にセットされ、スイッチはポケット内で操作されていました。
「パッ、パッ」のところで、股間の周囲がタイミングよく光るのです。ズボンの内部で光らせているところがポイントだったと思います。
大笑いしたいのに、笑い声が出せない不思議な体験をしました。一刻も早くこのネタを真似し、誰かの前で披露したい欲求が勝っていたのでした。
那賀川君と駆け足で教室に戻ると、手あたり次第、「見て、見て」とネタを披露し続けました。
翌日、大好きな絵美ちゃん(仮名)の前でもやりました。彼女が嫌がる素振りを見せつつも、ウケてしまっているリアクションが、まだ大人には程遠い少年に、原始的な愉悦のような快感をもたらせていました。――あくまで、大昔の小学校低学年の男児の話ですので、時効としてお許し下さい。
Posted at 2024/01/08 08:39:32 | |
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