
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
彼が啼き始めたのは、高圧洗浄機等のセットが完了し、「よし始めるぞ」と前のめりになった刹那のタイミングでした。樹高5mのキンモクセイは、葉が覆い茂っており、その姿は見えませんでした。
――ツクツクボウシです。毎年、アブラゼミとミンミンゼミの二強が領土争いを繰り広げているような土地で、孤軍奮闘を続けています。8月下旬になると、力関係が変化し、やがて、ツクツクボウシが圧倒的優勢となります。南関東では、10月1週目くらいまで啼き声が聞こえる種で、成虫の活動期間がすこぶる長いです。
足まわりの洗浄が終わっても、彼は、独唱を続けていました。2時間近く粘っていたことになります。ボディ用の洗浄剤をあれこれ出している最中に、そのときは、訪れました。
いつの間にか、3m飛翔し、隣家の壁に場所を変えて、彼が啼き始めました。なにが起きているのかは、一目瞭然でした。
「ツクツクボウシ」と啼いては、蟹歩きのように5cm横へ移動し、愛しの君と見つめ合うまでに3回啼く必要がありました。啼きながら移動し、静粛すると動かなくなるところが興味深かったです。最終的には、15cm移動するのに3回啼き、3分近い時間を要しました。
このとき撮影した画像を見て、あることに気づき、涙が出るほどの感動を覚えました。
よく見ると、メスも数センチ歩み寄っていたのです。トップ画像との比較が分かりやすいと思います。
そして両者は、交尾とは正反対となる方向で顔を寄せ合い、30秒近くも見つめ合ってから、体位を入れ替えて交尾に入りました。
――40分ほどすると、メスは、遠くへ飛び去っていきました。
再び孤独になった彼が、どのような行動をとるのか、興味津々でした。
すると、「えっ、そういうことなの?」という驚愕の行動に出ました。
メスが消えた方向へ50cmほど移動してから、素知らぬ顔で、再び「ツクツクボウシ」と啼き始めたのです。野生の神秘というか、ロマンを寄せつけないほどの、圧倒的な生命力の強さを感じました。
彼は、2回啼き、メスのあとを追うように消えていきました。
その後、何度も耳を澄ましましたが、ツクツクボウシの啼き声は聞こえませんでした。その事実が、自分の解釈を別にものに変えました。――彼は、別のメスを誘うためではなく、夏の終わりを告げるために渾身の啼き声を披露したのでしょう。そして、最後は、死に場所を求めて飛び去ったのに違いありません。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、俺と桃子の運命を演じてくれたんじゃないの~。
自分なら、ミンミンではなく、ツクツクボウシでもなく、ジージー、シャンシャンとも啼きません。
「モーモーコーコー、コーイコーイ」
桃恋蝉と名付けて下さい。
Posted at 2024/09/21 09:14:35 | |
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