
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
病院の手術室では、音楽が流れていることが多いといわれています。通常は流れていると記してもいいくらいだと思います。看護師長が選曲しているケースもあるはずですが、執刀医の意向であったり、ときには患者の希望が通ったりすることもあるそうです。
一般則としては語れませんが、優秀な外科医に豊かな音楽の才能が備わることは珍しくないようです。近代外科学の父とされるビルロートは、ブラームスと親友になるほど、音楽の才能があったとされています。
2003年にリメイクされた「白い巨塔」では、財前五郎のテーマソングが、「アメージング・グレース」でした。当時は、あの曲を聴くと、白衣と財前のシャドウオペが思い浮かびました。
救急医療は別として、一般の外科手術では、リラックスを促進するのが音楽の役割となっているようです。自分の手術の際には、クラシックベースのインストゥルメンタルが流れていました。硬膜外麻酔だと意識は明瞭ですので、よく聴こえていました。これほど普通に聴けるのなら、菊池桃子をリクエストすればよかったと後悔したほどです。
今のお気に入りは、菊池桃子よりもRAMUソングですが、医療との相性が悪そうなタイトルの曲が多いです。シングル4曲のうち、最初の「愛は心の仕事です」だけは問題ありません。セカンドシングル以降は、「少年は天使を殺す」「TOKYO野蛮人」「青山killer物語」という順で、いずれも不適切です。
菊池桃子名義でも、「もう逢えないかもしれない」は、NGになります。それに対して、「Say Yes!」のラストフレーズは素晴らしいです。――生きるのが、とても好き。世界中がキミを待ってる。
以前に、外科医になった先輩に訊ねたことがありました。すると、「術中に音楽はかけるよ、普通にね」という明解な答えがありました。まさか、という思いがよぎり、問いを深掘りしてみました。
「先輩、SPEED好きでしたよね」
「ああ、今でも聴いてるよ。術中の音楽としても最高なんだ。リズムが合うんだな」
「まさか、GO! GO! Heavenをかけてませんよね?」
先輩は、一瞬躊躇してから、答えてくれました。
「いや、お気に入りの曲だからさ。必需品でしょう。看護師長に注意されてからは、音量を下げてるけどね」
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
硬膜外麻酔は、背中を丸め、ダンゴムシみたいな体位になって脊髄に注射されるんだ。背中を抱きしめられる柔らかい感触が走った直後に、脊髄内腔へ冷たい液が流入していく独特の感触が生まれる。
――もしかしてだけど、あのとき背中を抱きしめてくれたのは、こっそり手術室に入り込んだ桃子だったんじゃないの~。
壊れながら、昨日よりも美しくなれ。
真夜中過ぎの恋だから。
Posted at 2025/10/11 12:23:25 | |
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