
牧場めぐりをしていると、熱狂熱烈という形容では収まらない偏執狂的な競馬ファンと出会うことがあります。トップ画像がそのときのスナップなのですが、種牡馬となっていたオグリキャップの周囲には、そういう方々が多く集まっていました。
しかし、最も印象的だったのは、別の名馬を見に来てきたファンでした。皐月賞とダービーを制した名馬ミホノブルボンの前に、その方は佇立していました。
ミホノブルボンは、菊花賞でも大本命で、クラシック三冠が期待されていました。それをゴール前の末脚で差し切ったのが、ライスシャワーでした。
杉本清氏の名実況が、殿堂入りの如く、ファンの語り草になっています。
「外からライスシャワー襲いかかってくる。ミホノブルボンは3冠にならず。ライスシャワーです。ライスシャワーです。ああ〜という悲鳴に変わりました、ゴール前。ミホノブルボンは惜しい2着。勝ち時計は、レコード」
放牧中のミホノブルボンは、引退してから久しいのに、相変わらず栗毛の美しい馬体をしていました。しかし、近づけません。前出のファンが、泣きながらミホノブルボンに話しかけていて、妙な雰囲気になっていたのです。
「なあ、ブルボン。ライス強かったよなあ。あの小さい身体でよく頑張ってたよなあ。お前の三冠を阻止したために、ライスの奴、競馬界の悪役みたいにされちまってよう。お前はそう思わないだろ。ライスは、年上のメジロマックイーンにも圧勝したもんな。最後、かわいそうだったなあ。引退したらきっとお前と友達になれたと思うんだ。なのによう。最後よう」
ライスシャワーは、最後の出走となった宝塚記念を走行中に骨折し、予後不良と診断されてその場で安楽死の処置がとられた悲運の名馬でした。そのファンは、延々と思い出話をミホノブルボンにし続けていました。
もらい泣きをしてしまったほどで、競馬ファンに対する見方が変わりました。今でも競馬はやりませんが、ロマンを追い求めるファンの心境は理解できます。
Posted at 2022/10/19 11:46:59 | |
トラックバック(0) | 日記