
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
最近の映画は、ほとんど見ないのですが、映画音楽では、いくつか忘れ難いものがあります。1曲だけ選ぶとしたら、悩みに悩んで、「禁じられた遊び」の主題歌にします。
――原作は、第二次世界大戦を舞台にした72年前の作品で、主人公は、戦争孤児となった5歳の女児です。路頭をさまよっているうちに、10歳の少年と知り合い、禁じられた遊びを通じて思慕が深まっていきます。
このプロットを書いているだけで涙が出そうになるのは、「ポロン、ポロン、ポロン、ポロン」というあの悲しげなギターの旋律が思い浮かぶからです。何度か転調し、明るくなりかけるのですが、アンハッピーな結末を予感させる音色が消えることはありません。そこが、映画の主題と合致していて秀逸だと思うのです。
この作品では、墓地や教会等から十字架を盗みだすことが、「禁」の対象でした。
私にも、「禁じられた遊び」に高じた経験があります。つい最近のことでした。
――その日、私は、東京の増上寺にいました。文化放送ラジオの公開録音会場になっていたのです。防振双眼鏡を手に、菊池桃子さんの登場を待ちました。彗星観測用に購入した光学機器で、高倍率でも手振れの影響がほぼ制御されるハイテク機能が内蔵されています。
これまでに2回、ごく短時間ながら、イベントで桃子さんと話をしたことがあります。そういうシチュエーションでは、視線がからみ合いますので、全身をくまなく見つめる状態にはならないものです。
ところが、ハイテク双眼鏡はヤバいと思いました。表情に現れるわずかな怯えや緊張など、すべて分かってしまうのです。コンサート会場と違って野外は明るく、申し訳なくなるくらいによく見えていました。髪の毛も一本単位で識別できました。
この日の桃子さんは、視線の配りかたに困っている様子でした。同時に、他のゲストから自分に会話を振られる心の準備をしつつ、一生懸命リアクションもしようと身構えてもいました。
このやりかたはフェアじゃない、と思い、双眼鏡を下ろしました。
ですが、距離が約20mありましたので、やはり桃子さんを身近に感じたくなり、双眼鏡で覗き始めてしまいます。
この繰り返しになりました。
――「ポロン、ポロン、ポロン、ポロン」というギターの独奏がエンドレスです。
映画「禁じられた遊び」と同様に、楽しい時間は長く続かないものです。最後は、双眼鏡を使わずに、退場する桃子さんの後ろ姿を見つめていました。
――「ポロン、ポロン、ポロン、ポロン」というギターの独奏がエンドレスです。
全国のラジオで声が流れてしまう事態になっても、「まっもこー(桃子の意)」と声援を送るべきでした。その後顧の憂いに包まれます。
あっという間に、増上寺の境内から、桃子さんの姿が消えてしまいました。
ターボのように加速して夕陽が落ちていきます。
――「ポロン、ポロン、ポロン、ポロン」というギターの独奏がエンドレスです。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、桃子が、俺だけのための、スペシャルなサービスアングルを作ろうと悩み続けているうちに、公開録音が終わってしまったんじゃないの~。
「どぶろっく」師匠の虚勢もむなしい。
――「ポロン、ポロン、ポロン、ポロン」というギターの独奏がエンドレスです。
でも楽しかった!
Posted at 2024/08/17 08:24:56 | |
トラックバック(0) | 日記