ご存知の方も多いとは思いますが、Y32系の3000ccおよび4100cc車とY33のVQ30DET車でV-TCSを装着した車両には、強力なサーボ性能と信頼性の低さで悪名高い、油圧ブレーキブースターが搭載されています。
これは、多くのクルマに搭載されている真空倍力装置(エンジンの負圧を利用)ではなく、モーターによって作った油圧を使うというものです。
下の図を見ていただければお分かりの通り、非常に仰々しいシステム構成で、壊れたら高そうだということも想像がつくと思います。
おそらく、これを設計したエンジニアは、「あらゆるものを油圧で動かし、それを電気でコントロールするということが今後の主流になる。」と考えたのだと思います。
当時の花形旅客機のボーイング747やダグラスDC-10等が機体制御に使っていたことから考えれば、それを自動車に応用しようというのは、実験としてはおもしろかったと思います。
一方で、ごく限られた車種の限られた期間しか採用されなかったこともあり、日本車の最大の利点であろう信頼性とコストパフォーマンスは向上しなかったと思われ、Y32系はこのシステムが高額なために、やむ無く乗り換えを選択された方も多いと思われます。
今回は、このシステム重要部品の現状についてまとめております。
まずは、フードを開けて目に入るところ。通常のクルマにもあるブレーキ液のリザーブタンクとともに設置されている部品「マスターバックASSY」です。この部品に装着されているアキュームレーター1は、単独での部品設定はありません。
2018年12月時点でのメーカー在庫は18、価格は137,000円(税別)です。
同時に交換を検討することになるマスターシリンダーは2016年9月で在庫は100以上、価格は45,300円です。
断定的なことは言えませんが、在庫がなくなり次第、欠品となる可能性が高いと思われます。
この部品、Y32が製造されていた当時から高額で、値上がり幅は低めなのですが、それでもかなりの高額です。
余談ですが、この部品は対策部品に切り替わっており、部品番号の末尾が203になっているものが現行品です。外観上のポイントはアキュームレーターの色がシルバーであることです。対策前のものはエンジンルーム内の色調に合わせるためかグレーの塗装がされています。
次に、直接は見えにくいところにある、油圧を作るモーターとアキュームレーター2です。
少し情報が古いですが、2016年9月時点でのモーターのメーカー在庫は63、価格は102,000円(税別)。アキュームレーターのメーカー在庫は93、価格は29,000円(税別)となっています。
こちらの部品も、在庫限りと考えるべきたと思います。
なお、アキュームレーター2は途中で仕様変更され、使用過程車も新仕様に交換されています(詳細は後述)。
これら全てを交換すると、部品代金のみで30万円を超えることになります。(真空倍力式に改造するというウルトラCも有ることはあるのですが…)
乗り続けるのに必要な費用と割りきるか、乗り換える決断をする額と理解するか、考え方は様々だと思います。
多くの方が選択されたであろう新車に乗り換えるのも素晴らしいことだと思います。一方で、Y32系を乗り続ける選択も限られた人数にしかできないものになってきていることも事実です。
私は、可能な限り長く実用できる状態を維持するため、各部品(マスターバックとアキュームレーターは1セットずつ、モーターは2セット)をストックしています。
もし、現時点で悩まれている方がいれば、部品在庫がある限りという条件は付きますが、思う存分悩んでいただければと思います。
最後に、アキュームレーターのところで書いた、仕様変更の詳細についてです。油圧ブレーキブースター関係で、1994年4月5日付けで改善対策(対策番号83)が出ていますので、当時のメーカーからの案内を記載します。
私のクルマは、公表直後の94年4月6日に対策済みです。
状況
①油圧式制動倍力装置において、エンジンルーム内に取り付けられているピストン式アキュームレータ(ブレーキ液の供給圧確保用蓄圧器)に封入されたガス(液圧変動吸収用)がピストンのシール部からブレーキ液を介してわずかずつ洩れるため、このままの状態で使用を続けると、封入ガスが減少し、ポンプによるブレーキ液加圧時の圧力変動を吸収できなくなり、車室内に異音が発生する。
②エンジン停止後ブレーキ操作を行うなど、油圧式制動倍力装置の油圧配管内のブレーキ液圧が低下している状態でエンジンを始動した場合において、自動変速機をPレンジ以外に操作すると、当該倍力装置の機能が失効していない状態にもかかわらず警報ブザーが鳴るおそれがある。
③油圧式制動倍力装置のブレーキ液圧低下警報ブザーの圧力スイッチにおいて、当該スイッチの作動圧の設定に不適切なものがあるため、ブレーキ液圧が低下していない状態にもかかわらず警報ブザーが鳴るおそれがある。
対策
①全車両、ダイヤフラム式アキュームレータに交換する。
②全車両、エンジン始動時における警報機能の向上を図るため、当該警報ブザーをタイマー付きに交換する。
③全車両、当該警報用圧力スイッチを良品と交換する。
Posted at 2019/01/20 09:53:58 | |
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