GWの間丸々一切本に触れていなかったので、単純計算で通常よりも1/3少ない読書機会。
他にもドタバタしていたので、まぁ3冊か…(・ε・` )
年間50冊目指してがむばるぞぉー(笑)。
デイヴィッド・C・テイラー 『ニューヨーク 1954』 (2015)
原題『Night Life』
現代史のお勉強。
1954年。冷戦真っ只中のニューヨーク。
マッカーシー上院議院を首とする “赤狩り” の嵐と、それに群がる者。
長官フーヴァーの独裁的運営により権力を増し秘密警察めいているFBI。
発足後まだ歴史の浅いCIA。潜伏するKGBの細胞、コミュニズム。
そして、共産主義と同等以上に弾圧の標的となる同性愛。
…という基礎知識を一通り理解していると、少し先のシナリオ展開がだいたい読めてしまうのは、“小説を楽しむ” という点に関してはマイナスかも?(笑)
しかし、それだけに止まらない “読ませる魅力” に富んだ作品。
市警とFBIの管轄争い、FBIとCIAの同じく首の突っ込み合い、FBIの腐敗、等はスパイアクション物でももはやお馴染みの題材だが、
本作はそこに冷戦という時代背景の下に、赤=共産主義とゲイという、当時のアメリカ社会にとっての二大悪を絡め重ねて、壮大な陰謀劇に仕上げている。
“基礎知識” に明るい人だと、これだけ言えばもうネタバレ同然ですかね。
本文中にも出てくる譬えで言うと「見張りの監視は誰がするのか」という話。
本国では既に続編が出てるそうで、
主人公キャシディのイカしたガールフレンド・ディランとのワケアリな別れ方のその後が気にはなるけど、
この一作で完結させておくのも良いんじゃないの?と思う。
しかしやはり、“歴史的裏付け” のある題材は面白い。
書く方は膨大な資料漁りに恐ろしい労力を費やすのだろうけど、読む方はただただ「読み応えがある!(°∀°)」ってなもんでw
S・L・グレイ 『その部屋に、いる』 (2016)
原題『The Apartment』
やはり自分はホラーやオカルト系のネタは楽しめないと思った。
どうしても科学的根拠や筋の通る説明で全体像を示して欲しくなる。
本作にはそのどちらも無く、個人的には何も面白くない(爆)。
過去に読んだホラー系の話では
『クリムゾンピーク』や
『領主館の花嫁たち』等は、歴史背景の描写が良かったりドラマ性が強くて、読ませてくれる雰囲気があったけど、
これは世界観や背景の作り込みも浅いなぁ…と。
遠く離れた場所の著者二人による共著、というのも影響してるか。
本作に限らず、ホラー全般に言えるのは
謎に(納得のいく)説明が無く謎のままで説得力が足らず、故に「パズルのピースが埋まっていく感」が乏しく、故に謎解きのカタルシスが薄い。
ミステリ物でもネタの核がオカルトだと一気に白けてしまうワタクシ。
ホラーはよく吟味しないとダメだな。(¬_¬)
マイクル・クライトン 『パイレーツ ―掠奪海域―』 (2009)
原題『PIRATE LATITUDES』
『ジュラシック・パーク』『アンドロメダ病原体』等で知られる作家の遺作。
原題の直訳は「海賊の緯度」、“新大陸” の東 北緯10°~30°、カリブ海を指す言葉。
カリブ海を舞台にした海洋冒険モノ。かといって某ジャック・スパロウ船長的な雰囲気ではありません。
本作の主人公達は、海賊とは似て非なる
“私掠人(しりゃくにん)” と呼ばれる人々、
免状を得て他国の船や土地の略奪を行う、“国家公認の略奪者” である。
17世紀当時、世界で最も強大な国家は、いち早く海軍力を伸ばしたスペインである。
カリブ海の勢力図もほぼ全域がスペインの植民地であり、後進国のイギリス、フランス、ネーデルラント等が僅かな領土を有していた程度。
私掠行為はその後進国らが大国スペインに対して行うのが主。
スペイン本土へ送られる金銀財宝を奪えば、直接的にスペイン王家の財源を減らせるし、逆に本土からの物資を奪えばカリブ海でのスペインの版図を削る足掛かりになる。
しかしその行為を、国家が表立って行うと即座に国際問題になる。
ので、あくまで表向きは「海賊が勝手にやった」体で、裏では委託契約公務員な海賊兼傭兵に汚れ仕事を任せるということ。
いつの時代も政治の世界はそんなもの。
汚れ仕事とはいえ、元々海賊=誰からも犯罪者 である私掠人にとっては、少なくとも自国からは罪を問われないという事には大きな意味があり、大規模な私掠遠征を成功させれば富も名声も得られる。
本作の登場人物達は架空だが、多数の実在人物をモデルにし、当時の私掠人のイメージの見本のようになっている。
そんなキャラクター達による、これまた当時の私掠航海の醍醐味を “全部乗せ” で、連発花火のように息も継がせぬ展開で魅せまくる著者の手腕が素晴らしい、一級品の冒険小説。
(そのぶん幾らかやり過ぎ感で嘘クサかったり、ご都合優先でリアルさに欠ける部分もあるがw)
必読、とまでは言わないけれど、本棚に残しておきたい一冊。
これはあくまで個人的な推測ですが、
ワタクシの好きなゲームの一つ『アサシンクリード4 ブラックフラッグ』は、本作に大きく影響を受けている気がする。
本作の発表が2009、AC4BFの発売が2014。
舞台となる年代と場所にやや違いはあるが、AC4BFの主人公も私掠船の船長として、敵船との艦砲戦や襲撃拿捕、要塞への潜入、ハリケーンとの戦い、未開のジャングルの探検、総督や私掠人との駆け引き等、本作を映像化したような内容が盛り沢山。
逆にワタクシはゲームを先にやっていたので、ブリッグ・ガレオン・戦列艦等の艦船のサイズ感も、頭の中でハッキリ明瞭にイメージが浮かんで楽しかった。
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』
5月1ヶ月かけて、1期2期合わせて18巻50話を完走。
実に泥臭い。
奇麗事・偽善の塊のSEEDなんかとは雲泥の差。
個人的に非常に好きになった作品。
確かに2期のシナリオには賛否両論、むしろ批判の方が多いんではないかと思う。
1期は全25話通して一貫したビジョンでよく纏まっており、最初から全話書いてあったんだろうな、という印象。内容も主人公達の出世物語として気持ちいい。
が、2期は序盤からシナリオに迷走感があり、主人公達が大人の陰謀に巻き込まれて疲弊していく様が続き、結果的にはそれまでに得たモノを全て失う。
作中ならず、制作の現場でも “大人の事情” が色々と動いていたんだろうと想像に難くない。
バッドエンド的な展開はOVAならともかく、TVアニメというエンターテイメントとしてどうなの?という感もある。
しかし、トータルして見れば、
“命の糧は戦場にある” という作品テーマは貫かれている。
後味の悪さはあまり感じない。
三日月は、色々なモノが欠落しているが、故にシンプルで純粋な “獣” 的な強さがある。
政治的な状況や、相手の主義主張、美学、哲学、そういったモノ全てを「ごちゃごちゃウルサいよ」と叩き潰す三日月の姿には、どこか羨ましさもある。
対してオルガは、組織の長として葛藤し、人間的な苦悩を抱えながら、己の信念を貫く。
その姿もまた強い。
最終盤でオルガや三日月が言う「進み続ける事に意味がある」という旨。
安住の地や成功、名声等を得たところで、そこで立ち止まって腰を下ろしてしまう事に疑問を感じるという考え。
それならば、“死ぬまで生きるために戦い続ける” という彼らの姿こそ、純粋なエネルギーに満ちている。
名瀬の死も、シノの死も、オルガの死も、三日月の死も、
望んだ形では無くとも、そこにはプライドが満ちている。
従来のガンダムシリーズと違い、MSが “頑丈” なのも特徴の一つ。
被弾→即爆発 なんてする?ってのはワタクシ自身も前々から思ってはいたので、本作のなかなか壊れないMSはリアル。
飛び道具が致命傷を与えられない、ということで行き着くところはドツキ合いw
相手の頭部(モニターカメラ)を破壊するか、コクピットを破壊するか、が主な撃破方法。
作中最強の兵器が “杭を撃ち出すレールガン” というのも良い。
極太のレーザーを出されるよりよっぽど説得力がある。
作中何度か目にする、三日月の乗るバルバトスの鬼神か悪魔の如き一騎当千の戦い。
そこで発散されるリアルな生の感情の奔流が、本作の一番の見どころではないか。
三日月の放つ冷たい言葉にゾクリと興奮する。
しかし、終盤の展開や、マクギリスのビジュアルから、
どうしてもWのトレーズ閣下が思い起こされる。「私は敗者になりたい」。
また0083も “敗者達の物語” というコピーがついていた。
確かにオルフェンズはバッドエンドかもしれないが、それでも敗者達の最後のプライド、生き方の美学は、清々しい。