さーて…
過去一盛り上がらないオリンピック。
…と、言いつつ
開幕前は散々叩いていたメディア関係も
始まってしまえばふつーに五輪報道一色。
そーいうとこやで。
しかし、このオッサンのこの芸風は
有りか無しかで言ったら有りw
泣きの野々村君もこのメンタル見倣ってユーチューバーなったら良いのにw
セシル・スコット・フォレスター 『駆逐艦 キーリング』 (1955)
原題『The Good Shepherd』
二次大戦中期、大西洋でのアメリカからイギリスへの物資輸送船団を護衛する連合艦隊(とUボートの戦い)のお話。
37隻の輸送船団を、たった4隻の軍艦(駆逐艦2、コルヴェット2)で護衛するという無茶な話だが、
当時は実際そのレベルのケースが珍しくなかったらしい…
アメリカ本土とイギリス本土からの航空機が届く範囲は航空支援が受けられ、ドイツの潜水艦も大人しいが、
大西洋の中央部は、当時(作中の設定は42年3月?)はUボートの独壇場。
まだアメリカが参戦して間もなく連合軍の戦力も整っていない時期、
作中の護衛艦隊の4隻も、アメリカ・カナダ・イギリス・ポーランドと寄せ集めの艦隊。
これを足の遅い商船に合わせてゆっくり東進すると、
航空支援空白地帯を抜けるのに丸2日掛かると。
本作はその約48時間の間のお話。
原題は『良い羊飼い』。
商船船団を羊の群れに喩え、作中でも「群れからはぐれた羊の世話をしろ」というシーンがある。
駆逐艦、というのは元は「水雷挺(魚雷攻撃を仕掛ける小型船)を駆逐する艦」として、対艦船用の魚雷も積んでいるが、
実質的には
対潜の爆雷攻撃を行う船。
軍艦の中では一番小型で機動力に優れる。
海の単位として、1海里=約1.8km。1ノット=時速1海里。
なので、10ノットは約18km/h。
作中の駆逐艦キーリングの最大戦速は24ノット(約43km/h)。
原速(一番燃料効率の良い速度?)で12ノット前後。
商船は “急ぎ足” で12ノット程。原速となると7~8ノット。
対し、Uボートの洋上最大戦速が12ノット、潜航中は6ノット。(つまり、潜水艦は潜っていると船団を追えない)
駆逐艦が如何に機動力に優れた船舶かという比較。
だからといって、駆逐艦vs潜水艦の戦闘が駆逐艦有利かというとそうでもなく。
確かに攻撃の手数は駆逐艦の方が多いのだが、
ソナーという機器の特性上、潜水艦の位置がわかってもそれは数秒前の位置であり、そこから爆雷を投下し、爆雷が沈下し爆発するまでのタイムラグを含めると、その間に潜水艦が動き得る範囲はかなり広い。しかも爆雷で掻き乱された水が落ち着くまで次のソナーは打てない。
「引き金を引く2秒前から、撃った30秒後まで目を閉じて鳥撃ちをしているようなもの」とは上手い喩えだなと。
一つ面白いなと思ったのが、
駆逐艦が旋回を終える時にほぼ必ず「当て舵」というのを切る。
例えば「面舵、取舵に当て」という。
これは旋回で傾いた船の姿勢を修正する為に、一回逆に舵を切る事。
カウンターステアやん(・∀・)w
ちなみに、史実では、この作品の舞台から1年後くらいから
船団護衛に小型空母が随伴し、空の死角が無くなった事で、Uボートの活動は下火になっていった。そうです。
ピーター・ワッツ 『6600万年の革命』 (2018)
原題『The Freeze-Frame Revolution』
地球を出発して6500万年。もはや故郷の存続も定かではないまま、ワームホール構築船〈エリオフォラ〉は任務を続けていた。
小惑星を改造し、通常運航は全てAIによって管理され、3万人の乗員は、単純な論理的推論では解決できない問題が発生した時だけ冷凍睡眠から覚醒させられる。
AIは勝手にシンギュラリティ(被創造物が自己進化して創造主を超える時点)を迎えて計画を歪める事がないように、“ほどほどのスペック” に設計されていた。
乗員もまた、任務から逸脱しないように遺伝子改編と教育が施されていたが、
気が遠くなる程の長大な時間が経過し地球との連絡が途絶え、自分達の使命に疑問が浮かびはじめていた。
時々定期的にガチのSFが読みたくなるルーチン(笑)。
宇宙船(孤立した環境下)で運航AIと乗員の対立…
というと真っ先に浮かぶのが『2001年』のHAL9000。
しかし、このお話では主人公サンディとAI “チンプ” との間には一種の親近感が芽生えており、両者の関係は良好である。
というのも、仲間に叛乱を持ち掛けられたサンディは「銃と戦うのではなく、銃を持った人間と戦わなければならない」という喩えで、
AIそのものではなく、AIを作った存在の裏をかかなければならないと説く。
その “存在” というのが、6500万年前にプログラミングした技術者達なのか、6500万年を経て進化した “元人類” の超越存在なのか。
読了してもイマイチその辺が見えてこなかったけど、
著者は本作と同一の世界観で他にも短編を幾つか出しているので、それも読んだら全体像が掴めそうな気はする。
あくまで “中編” と著者が言い切るサイズであり、
同世界観のシリーズの一エピソードということもあり、
ぶっちゃけ よくわからんw(・∀・)
最後に出てくる “超人類” みたいなのの正体が気になるけど、他の作品なぁ…w
コルソン・ホワイトヘッド 『地下鉄道』 (2016)
19世紀、アメリカ。
南部の農園で過酷な生活を送る奴隷の少女コーラは、新入りの少年シーザーから奴隷を逃がす “地下鉄道” の話を聞き、共に逃亡を決意する。
冷酷な奴隷狩り人リッジウェイに追われながらも、コーラは地下鉄道に乗り、さまざまな州を渡り、人に助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北を目指す。
奴隷制を巡る対立からアメリカが南北戦争に突入し、北軍の勝利→奴隷制撤廃に至るのが1860年代。
作中の時代設定は1830年代。南部の奴隷制が全盛期の時代。
“地下鉄道” という言葉は当時実際に使われていた暗号だが、
(先月読んだカッスラーの『大破壊』から逆算すればわかるように)当時はまだ地上の鉄道が開発され始めた初期の時代。
本作の “地下を走る鉄道” は100%フィクション。
(だいたい、そんなひたすら地下を走り続ける線路に蒸気機関車なんか走らせるには、超高性能・超大規模な換気装置が要るぞw)
だが、このテーマに対してはある程度のフィクション性を取り入れた方が確かに分かりやすく、象徴的表現としても良い効果を出している。
コーラが渡っていく各州もおそらく実際よりもデフォルメされて描かれていると思われ、
こっちの州では黒人擁護が進んでいるが、隣の州では徹底的な弾圧があり、はたまた別の州では自由黒人による避難所が運営されている、等、
“地下鉄道” という船に乗り、新しい島へ渡る度に全く違う世界があり、それぞれの問題に直面する、ガリバー旅行記的な演出。
“敵” として描かれる奴隷狩り人リッジウェイも、
冷酷というよりはプロフェッショナルであるだけで、彼自身も時代の矛盾を内包した存在として、非常に人間臭く憎み切れない良いキャラクター。
リッジウェイが相棒として連れている黒人の少年も、シルクハットに燕尾服というルックスと芝居掛かった不気味な言動とでこれまた良い味を出している。
一見ユートピアに見えた世界が、実は裏で形を変えた鎖に繋いでいただけのディストピアであったり、
徹底した黒人弾圧を行う白人コミュニティの内幕は、恐怖で支配された監視社会で、言わば白人が白人に飼われているとも言える世界であったり、
自由黒人と逃亡奴隷が集う避難所の農園でも、“黒人” と一括りに言っても全てルーツの違うアフリカ人種の集合体であり、決して一枚岩では有り得ず対立や思想の違いが表面化する。
アメリカという国が出来た時から抱え、現在も、この先も永遠に続くであろう “人種問題” “人種差別” 。
本作は18世紀のファンタジーではなく、今も未来にもそれを投げ掛け続ける為の小説だと思う。
(ちなみにこの時の日本は江戸時代末期で、まだ黒船も来ていない)