
100128、公開前からもんのすごーーく期待していた「オーシャンズ」を川崎チネチッタで観覧してきました。
映画「オーシャンズ」オフィシャルサイト
ひとまず結論から。かなりガッカリしました。
70億円をつぎ込んだ海中映像は良かったです。イルカやマグロの疾走、ザトウクジラ・シロナガスクジラの狩り、海鳥の突入、極の氷下の澄んだ海、嵐の航海など、これまでにないダイナミックな映像にはかなり引き込まれました。その点での評価は「アース」や「ディープ・ブルー」に匹敵するくらい。
また、有名な佐渡の「弁慶(コブダイ)」、松江のコウモリダコ、エチゼンクラゲなど、日本ロケが多く、海外ながらオニダルマオコゼやハナミノカサゴ、クマノミなど、ヒリゾや三浦でも会えるような身近な題材が多かったのも、ちょっと嬉しい感じで。特に佐渡の水クラゲの大群は美しかった……ポニョのオープニングを完全に凌駕していましたよ。
そんな感じで、当初懸念していたBGMもナレーションもあまりうるさくなく、映像は綺麗だし興味深いしで、「あ〜海に行きたい…潜りたいなぁ」なんてほっこりしていたのですが、後半になってがっかり。
うろ覚えなのですが、「これからお見せする映像は、現実におこっている事です。信じられないこともあるかも知れませんが、これは現実です。」というナレーションが入ったあとからです。
ネタバレにもなりますので、また捨てカットを挟みます。


<ラ・チッタデッラ>
さて、問題とは、もちろん映画後半に挟まれる、マグロの養殖、巻き網漁、イルカ漁、捕鯨、フカヒレ漁に関する映像です。
最後半の博物館・水族館での幼稚な環境保護メッセージもそうとうアレですけど、これらに比べればなんてことはないでしょう。
ここで提示したいのは、
1.漁のシーンは、すべてCGとアニマトロニクスによる作り物である
2.そもそもそれら漁について、事の是非は明言していない
3.協力:シーシェパード
という3点です。
まず、「その1.作り物の映像」に関して。
マグロの養殖、イルカ漁、捕鯨シーンはCG。網にかかった動物達、ヒレを切り取られ丸太のような体で海底でのたうつサメはアニマトロニクス(人形)。映画のラストに「人が動物を傷つける映像は、全て加工されたものです。」というテロップが入りますし、パンフレットにも明記。新聞のインタビューで監督も認めています。
つまり全てはイメージ映像、ヤラセだったのです。そしてそれが誰のどんなイメージなのか。こんな手法は、ドキュメンタリーとしては下の下だと思います。
asahi.com(朝日新聞社):動物との一体感表現「オーシャンズ」の両監督
その2.にも関連しますが、特に捕鯨問題については、色々と無理な主張がまかり通っているように思えます。簡単に思いつく反証でも、
・動物養殖の是非 (マグロの養殖→牛豚家畜)
・野生動物漁の是非(捕鯨、イルカ漁→ジビエ(鹿、うさぎなど)漁)
・食に関わる残酷性(フカヒレ漁→フォアグラ)
他にも、スポーツハンティングについてや、過去鯨油のためだけに捕鯨を行い乱獲したのは誰か。などなど。
もちろん、上記作り物のモチーフとなる漁は実在しています。個人的には、これだけ色々な食材が揃う現代において、無理して可愛いイルカちゃんを食べたいとは思いませんし、ヒレだけ切り取って、生きたまま捨てるのはやりすぎにも思えます。
で、ありますけど、そもそも漁というものは残酷性をはらむもの。人が、生き物が生きるということは、どうにも他者の犠牲のもとにしか成り立たないものです。美醜、好き嫌いで生命、食文化について語るのは幼稚な感情論に過ぎる。なんて単純な理屈に何故思い至らないのか、思い至っていながら主張しているのか…
今作でも、相当恣意的に残虐映像を挟んでいながら、敢えて事の是非について明言しなかったのは、そんな厨二病的無意味な罵り合いを回避するのが目的だったのかも知れません。もちろん私が見たのは吹き替え版。本国版でなにを言っているのかは知らないのですが。
やはりその3.が関連しているのかも知れませんね。エンドロールにこの名をみつけたときには、「やっぱり……」。
彼らに関してはコメントもありません。どんな思想にあろうとも、テロルはテロルです。
あ、件のフカヒレ映像に関しては、気仙沼あたりの普通のフカヒレ漁師さんだったら、肝油は貴重だし、お肉も練り物にしたりして美味しくいただくしで、ボディのみを捨てたりはしないと思うのですが。
そもそも危険すぎて、サメを生きたまま舟に上げたりはしないでしょう。当然生きたままヒレだけ切り取るってのは無いようにも思えます。黄海あたりのギャング漁師の話しを元に、コラージュした映像かも知れませんね。
そんな感じで、色々とつっこみたいところもあったのですが、そんなこんなについて、うだうだ考察できたのは収穫ではありました。
でも映画如きでそんな難しいこと考えたくないってのが、脳味噌プリン化している今の本音。これだったらNHKスペシャルの方が全然イイや、ってのが結論だったり。ホントもったいない。
ドキュメンタリーにもっと徹して、海の雄大さ、生命の息吹、自然の驚異を大いに表現してくれるだけで良かったのですが。いい映像も沢山あっただけに実に残念です。
冒頭に書きましたけど、これだけ映画見てガッカリしたのは「ハンニバル」以来です。期待していただけにね…
このやるせなさを解消するには…
やっぱりリアル・オーシャンズに赴くしかないですね。
ヒリゾ行きたい!潜りたい!!
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Posted at
2010/01/29 13:56:06