
100530、自転車で川崎のラ・チッタデッラへ。井筒監督の「ヒーローショー」を観覧してきました。日曜はホントは海でBBQの予定だったのですが…今週はやりますよ!
映画「ヒーローショー」公式サイト
今作は井筒和幸監督の35周年にして3年ぶりの作品。ジャンル的には青春バイオレンス、青春ノワールといったところ。主演にお笑いコンビの「ジャルジャル」を起用しています。井筒監督の得意パターンですね。
そのダブル主役は、二人の“ゆうき”。気弱なお笑い芸人の卵、ヘタレな「ユウキ」役に福徳秀介。自衛隊レンジャー部隊出身、最強のヤンキー「勇気」役に後藤淳平。この両者の演技が抜群!
お笑いの地を活かせる福徳はもちろん、特に後藤の演技にうならされました。設定通り基本暴力的な役回りなのですが、同時に、現実との葛藤に悩み、恋人との将来の夢を思う、その繊細な内面を押さえた演技で見事に表現。こゝろの闇を押し殺した無口な横顔には、ある種のオーラを感じるほどでした。監督の評価通り、新たな銀幕スターの誕生なのかもしれません。
ストーリーの方はタイトル通り、ヒーローショーのアルバイトの若者達の間でのいざこざからスタート。当初はささいな男女関係のもつれだったものが、アンダーグラウンドな世界の人物を招き入れてしまうことにより、凄惨な暴力の連鎖に。そして取り返しのつかないカタストロフィ…
監督もインタビューで述べているように、全編ほとんど救いのないシビアな内容です。R15に指定されるだけあり、容赦のないバイオレンスシーンも多数。金属バット、パター、鉄パイプ、ベアナックル。身の丈身近な暴力描写に、「痛ぇなぁ」と何度も顔をしかめてしまいました。昨今隆盛の3DやらCGやらの、バーチャルなそれとは一味違います。鈍器が肉にめり込み、血は飛び散らずジワジワゴボゴボ流れる。リアルな痛みがヒリヒリヒタヒタと。
登場人物も、いわゆる「DQN(ドキュン)」な若者ばかり。とは言え年齢的にはもう学生ではなく、それでいて社会人としては世の中に受け入れてもらえない。そんなボーダーな彼ら。その葛藤、そして暴発。結果、主要キャストはほぼ全員悲惨な目に遭うのですけど、それも自業自得の因果応報。人間地味に真面目に弁えて日々粛々と生きていくのが一番だな。なんて思ってしまうほど。
しかし、そんな一般人を気取る私と、フルボッコにされるスクリーン内の彼らとは、実際のところは紙一重の位置にいるのです。平和と言われる日本に暮らしていたとしても、いつそちら側に転落するか…ユウキのように被害者として巻き込まれてしまうのか、勇気のように思わず限度を超え、加害者になってしまうのか…
さらに、登場する大人達がこれまた揃いも揃って駄目人間ばかり。彼ら無軌道な若者を生み出したのは、そうした周囲の大人、社会の責任が大であると言うわけです。その作中描かれる社会とは、ヒーローショーが暗示する安易な二元論、息子の友人と関係する母親、選挙にかまける金権な両親…これまた決して他人事ではなく。井筒監督作品らしく、一級の娯楽作品に仕上げながらも、社会への警鐘をも盛り込んでおります。
愉快なオープニングから衝撃的な結末、そして意表をつくエンドロールまで、中だるみすることなく、終始緊迫したまま見通すことができました。R15ですので暴力・性描写は過激です。とは言え、先述通り、酷い目に遭うのは自業自得な方ばかり。まっとうな良民、特に女性と子供に手は出しません。そこに井筒監督の良心を感じたりもしました。
見る方を選ぶかもしれませんが、なかなかの快作でした。オススメです。
<映画『ヒーローショー』予告編(動画)>
予告編も良く出来てますなぁ。
と言うことで、次はバイオレンスな邦画つながりで、北野監督の「アウトレイジ」が見たくなりました。猪木さんの「アカシア」も良さそう。
あ、終わる前に「タイタンの戦い」「アリス・イン・ワンダーランド」がまず先ですかな。
D
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Posted at
2010/06/02 19:20:57