
<天気晴朗ナレドモ風強シ>
091115(日)
前日までの冷たい雨模様から一転、すっきりと晴れ渡りました。蟄居ももったいなかろうと、家事を済ませて昼から自転車(プジョーのpacific-18)で横浜方面へ。
川崎からみなとみらい、港の見える丘公園まで。だいたい片道20km。向かい風が強くてなかなか前に進まなかったり、横浜国際女子マラソンの交通規制で身動きがとれなくなったりしましたけど、なかなか良いポタリングとなりました。
自転車徘徊:0911 ポタリング@横浜「大乱歩展」観覧 其の一/うつし世はゆめ の事
自転車徘徊:0911 ポタリング@横浜「大乱歩展」観覧 其の二/よるの夢こそまこと の事

<神奈川近代文学館>
今回の本題はこちら、県立神奈川近代文学館で開催されている「大乱歩展」の観覧です。
神奈川近代文学館/(財)神奈川文学振興会|大乱歩展
江戸川乱歩の作品群、私的記録、厖大な蔵書類、600余点の展示物を年代順に配置。乱歩の生きた時代情勢を背景とし、「江戸川乱歩」という知の巨人個人について、縦覧的に体感する事ができる内容でした。これはまさに乱歩研究の大いなる精華。まさに「大乱歩展」。
実はこの日が開催期間の最終日。当初より行こう行こうと思っておったのですが、タイミングが合わず延び延びになっておりました。終ってしまったものを折角ご紹介しても…とも思わなくもないのですが。申し訳有りません。
例によってここから先は若干専門的な駄文が続きますので、ちょっと字を小さくします。必要ない方はお飛ばしください。

<神奈川近代文学館>
さて、ご存じ「江戸川乱歩」です。
Wikipedia:江戸川乱歩
小説家としては、第一に日本の推理小説の祖であること。第二に猟奇と幻想の怪奇ワールドの大家であること。太平洋戦争下の言論弾圧で創作欲を削がれるまでの厖大な作品群は、まさに一時代を築いております。
また、文学史的にも、日本推理作家協会(日本探偵作家クラブ)の創立、ならびに江戸川乱歩賞の創設。後進作家の援助育成、海外文学の紹介、等々。まさに正五位、勲三等瑞宝章受章に相応しい功績を残しています。
今回の展覧会では、それらに加え、600余点の各種資料の展示により、乱歩の個人的な人となり、資質、社会情勢に与えた影響などを改めて確認、補足する事ができました。
展示の主軸は「貼雑年譜(はりまぜねんぷ)」と題された個人史的スクラップブック。前述のように、太平洋戦争にかけて当局の圧力が高まり、創作活動ができなくなった時期に始められ、晩年まで続けられた貴重な資料です。私も存在は知っておりましたが、実見したのは初めて。
こちらは手記、写真、手紙、作品についての各媒体の切り抜き等々で構築され、乱歩のビジュアライズされた私的記録として実に興味深いものです。各作品のプロット、アプローチのあり方、ほとんど偏執的にまとめられた個人年表などを見ますと、緻密で繊細な人柄が偲ばれます。
その中でも、特に目を惹かれたのは、乱歩の実筆による各種イラスト・図説類。有名な「夜泣きそばを曳く」のカット、家族の似顔絵、引越し魔であった乱歩の住んだ各屋敷の詳細な見取図、などの実物を実見することができました。
また、乱歩は「宝石」以外にも、何度か雑誌、新聞の立ち上げに携わっているのですが、それらのレイアウト、ロゴレタリング、さらには挿絵、カット、時事漫画までも自ら手がけています。しかもこれらが実に巧み。乱歩のアーティスティックな分野での才能をも知ることができました。一応デザインを生業とする者のはしくれとして、今回はこの発見が一番の収穫であります。
この他、映画分野への興味、警視庁への犯罪学の分野での協力、各種文学研究への貢献、等々、そのマルチなあり方に感銘を。
つまり江戸川乱歩とは、時代のアーティストとして、稀代の推理・幻想小説のオーソリティーの側面。推理小説界のコーディネーター、後進のプロデューサーとしての実務的側面をも持ち合わせた、実に重層的な存在。ダヴィンチとまでは申し過ぎかも知れませんが、まさに「知の巨人」であったのでした。
また、その夢のような作品群とは別に、社会人・家庭人としての乱歩は整理された真面目で几帳面、温厚な常識人であったことも付け加えておきます。
当方も幼少より小学校の図書室の少年探偵団シリーズなどで親しみ、長じては、素晴らしい装丁の春陽堂文庫の全巻コンプリートにバイト代をつぎ込んだり、後に創元社から全集がスタートしたのでさらに買い込んだり、あの幻影城も取り寄せたり、と、先生の著作からは私の人格形成に多大な影響を頂戴しております。あれです、いわゆる「猟奇と妄想」。我が人生は「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」でございます。
ちなみにマイフェイバリットは、長編では「孤島の鬼」「陰獣」「盲獣」、中・短編では「白昼夢」「パノラマ島綺譚」「虫」。ベスト挿絵家は岩田専太郎。ベスト死に様は花火で爆死(by 人見公介)です。ベタでスイマセン。
ちなみに、H・P・ラヴクラフトを日本に初めて紹介したのも乱歩です。「宇宙からの色」を評し、「奇妙な味わいがある」と「幻影城」内で激賞しております。

<みなとみらい>

<ランドマークタワー>
と、以降はこの日のポダリング風景などを。
私の内包する猟奇と妄想を余所に、この日は実に爽やかで良いお天気でした。風が強いのがちょっと玉に瑕ですが。いい運動にはなります。

<横浜国際女子マラソン>

<横浜国際女子マラソン>
横浜近辺は横浜国際女子マラソンの最中でした。
ちょうど先頭が通過するタイミングで通りかかり、ランナーも見る事ができました。ただ、交通規制がすごくて。自転車も例外ではなく、結局押して歩いて担いで登って降りて。かなりのロスにも。

<お金がないので通過>

<駐輪場所間違えた>
みなとみらい地区をなんとか突破して、中華街、元町を通過、港の見える丘公園まで到着。
そうそう、港の見える丘公園手前の「谷戸坂」。自転車だともんのすごい勾配ですね。かなりチャレンジングなヒルクライムになりましたけど、なんとかクリア。

<港の見える丘公園からベイブリッジを>

<あ、飛行機>
冬の走り、さらに雨上がりとあり、空気が透明です。
長くなりますので続きます。
次回は夜景編「よるの夢こそまこと」。
フォトギャラリー
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自転車徘徊 | 旅行/地域
Posted at
2009/11/16 13:04:32