101201。毎月1日は映画の日。
川崎のチネチッタで「ゲゲゲの女房」を観覧して来ました。
映画『ゲゲゲの女房』公式サイト
NHKの同名連ドラで人気爆発。水木しげる御大は文化功労賞を受賞、そして映画化。まさに今が旬の作品。私も相当期待してチネチッタに向かったのですが…
あらすじは、同名連ドラと基本的に同じ。主人公は漫画家の水木しげる(宮藤官九郎)の妻布枝(吹石一恵)。お見合いから五日で結婚し、出雲から東京へ。売れない貸本漫画家故の極貧生活をスタート。当初は不満を見せる布枝も、水木の仕事への真摯な姿勢にやがてほだされ、彼の才能を確信する。それからは、漫画のアシスタントを務め、出版社との折衝に質屋通いに家事と奮闘。相変わらず貧しく、時に小衝突はあるものの、ぎこちない二人の間にも夫婦の絆が生まれ…無事子宝にも恵まれ、小さな家庭に家族が増えた頃、週刊マガジンからの連載の打診が…
まずはキャスティングの妙。特に水木しげるを演ずる、宮藤官九郎。写真で見る若かりし御大に生き写し。南方の地獄の戦線で片腕を失いながらも、ひょうひょうと仕事に打ち込む姿は、まさに秀逸。妻の布枝役の吹石一恵も、自然な演技で難しい役どころを完遂。ここは連ドラより断然リアル。
ついでに言えば、戦後昭和30年代、立ち直りつつある日本、そして売れない漫画家の極貧生活。その表現と言う意味でもリアル。時に暗く、時に救いが無いほどで…
も一つ良かったのが、作中数度ある、モノクロの挿入アニメ。ゲゲゲの鬼太郎以前、貸本屋時代のシリアスでグロテスクな作風が、大スクリーンでじわじわと動き出す様はまさに必見。手書き原稿のタッチそのままというのが嬉しい。水木作品は、鬼太郎などで何度もアニメ化されていますけど、お子様向けにどうしてもつるりとなめらかに可愛らしくなっていますから。そのシーンだけでもファンの方には見る価値有りだと思われます。
<映画『ゲゲゲの女房』予告編>
ただ、個人的にはちょっと残念な部分も。
水木先生は我々クトゥルフ者・なんちゃってサブカル者にとっては、現人神とも言うべき特別な存在で在らせられるからです。なんとなれば、クトゥルフ神話を日本で最初にビジュアライズ化されたのは水木先生なのです。
例えば、昭和38年の「地底の足音」はH.P.ラヴクラフト御大の「ダニッチの怪」が原作。作中では、「ミスカトニック大学」が「鳥取大学」、「狂えるアラブ人アヴドゥル・アルハザードの著したネクロノミコン(死霊秘法)」が「ペルシャの狂人ガラパゴロスの死霊回帰」、「ウィルバー・ウェイトリー」が「蛇助」、「ヨグ=ソトース」が「ヨーグルト」…(笑。邦訳はともかく、ストーリィ的にはかなり忠実な内容に。この作品は、昭和61年に朝日ソノラマから復刻され、ホーム社の漫画文庫で今でも購入する事が出来ます。
水木しげる 魍魎 貸本・短編名作選 地獄・地底の足音 (ホーム社漫画文庫) (HMB M 6-5) [文庫]
余談ですが、ラヴクラフト作品を最初に日本に紹介したのはあの江戸川乱歩先生が幻影城にて。そして我らが現代のヒーロー、荒俣宏、京極夏彦先生は、水木先生に師事され、世界妖怪協会を運営されていると言う…
ええと、なんでしたっけ?(笑
そうそう、それだけ崇敬おく能わざる水木先生と奥方の映画化なわけですから、我らフォロワーにとっては、もうちょっと…という部分もあったのでした。
例によってネタバレ注意で捨てカットの下に続けます。
<ラ・チッタデッラ>
一番残念なのは、極貧新婚生活のリアリティを追求し過ぎたせいか、全体にちょっと暗すぎるきらいが。ストーリー的にも、マガジンの連載を受け、さあこれから!というところでぶつんと終了してしまいます。せめてエピローグ的に、その後の成功の下りを加えてくれれば、もうちょっと映画的カタルシスも生まれたと思うのですが。キツい言い方をしますと、情緒に欠ける小津作品のような物足りなさも感じたり感じなかったり。つうかあの展開で、最後にチキンカレー食べないってのは、切ない…
また、ご期待通り、妖怪的存在が画面の端々に登場するのは良いのですが、その扱いが若干微妙。もっと増やして欲しいですし、もっと妖しさを加えて欲しかった。なんと言っても怪人水木先生の半生なのですから。個人的には、現実シーンの半分には何らかの怪異が侵蝕して欲しかった。予算と時間が足りなかったのかなぁと。
お金の件では、セットにもちょっと不満が。水木家などのセットは、昭和30年代なのですが、遠景が完全に現代。東京駅が現在の建築中のままで、かつロータリーにプリウスらしき車影があったり。新宿の街並にフレッシュネスバーガーが堂々登場したり…むむぅ。監督的には演出的に隠す気もなかったのかもしれませんが、やはり違和感が。
と重箱隅的なケチもつけてしまったのですが、主役二人の配役、挿入のアニメだけでも、水木先生ファンの方には見る価値はあると思います。特に白黒アニメはホントに素晴らしかったです。
あと、吹石一恵ファンの方にもオススメで…完全に本筋とは関係ないのですが、吹石さんを撮るカメラの視線が、ちょっと妙にフェティッシュだったりして…監督はふくらはぎフェチですね。分かります。
いやそうじゃなくて。ちょっと地味だけど、どこか素敵な吹石さんの魅力は相当にフィーチャーされていますよ(笑
と言うことで、次こそは「エクスペンダブルズ」と「マチューテ」を見なければ。
川崎では終わってしまったので、横浜まで遠征しようと思います。VIVA!マッスル!!
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Posted at
2010/12/02 23:58:23