
<昏い昼休み>
手持ちに一区切りつきましたので、最近読んだ御本などについて。
データ
・エドガー・アラン・ポー「十三時」
・トルストイ「イワンの馬鹿」
・アンブローズ・ビヤーズ「世界怪談名作集 妖物」
・夢野久作「少女地獄」
・芥川龍之介「あばばばば」
・芥川龍之介「アグニの神」
・芥川龍之介「秋」
・芥川龍之介「あの頃の自分の事」
・芥川龍之介「暗中問答」
・芥川龍之介「或阿呆の一生」
・芥川龍之介「或旧友へ送る手記」
・芥川龍之介「浅草公園 ——或シナリオ——」
・芥川龍之介「羅生門の後に」
・芥川龍之介「梅花に対する感情」
・芥川龍之介「尾生の信」
・芥川龍之介「文章」
・芥川龍之介「舞踏会」
・芥川龍之介「カルメン」
・芥川龍之介「父」
・芥川龍之介「偸盗」
・芥川龍之介「大導寺信輔の半生」
・芥川龍之介「第四の夫から」
・芥川龍之介「伝吉の敵打ち」
・芥川龍之介「英雄の器」
文庫
・京極夏彦「邪魅の雫」
・ブライアン・ラムレイ「タイタス・クロウの帰還」
今月はこんな所です。
漫画・雑誌は他にいろいろと。同僚さんからヤンジャンとヤンマガを数ヶ月分頂いたので読んだりしました。
今イチオシは、ヤンジャンの「キングダム」。現状ですでに目が離せませんし、このままきっちり書きつがれてゆけば、「ベルセルク」に匹敵する名作になると思います。
自称BOOK携帯ことauのbiblioさんが来たので、最近は原稿待ちなど手持ちぶさたの時に読む様にしています。上にずらっと並んだデータの古典はすべて、携帯サイトの「パピレス」の「無料名作」コーナーからダウンロードしてきたものです。もちろんタダ。
無料名作はネット上の青空文庫から移植されてきたもの。古今東西の名作ざっと2000作ほどがラインナップされています。最初の内は気になる作品をピックアップしていたのですが、途中で方針を変え、上から全部読んでやろうとたくらんでいます。芥川先生ラッシュなのは「あいうえお順」のせいです。
電子書店ハピレス:無料名作
芥川龍之介は、「羅生門」、「鼻」など教科書的名作は学生の頃読んでいました。オサーンになってこうしてまとめて読みますと、改めてその天才性に驚きます。特に短編のキレが素晴らしい。やはり凄い作家です。
「偸盗」「浅草公園」など有名な作はもちろん、印象に残ったのは、自殺の直前に著わされた、遺書的独白シリーズ(暗中問答、或阿呆の一生、或旧友へ送る手記、大導寺信輔の半生、など)。その内容の深刻さがあっても、やはり鮮烈な表現にハッとさせられます。筆致に躍動感があります。
しかしこの時代って、自殺することが一種のスタイルだったんですね。同時代の太宰治を引合いに出すまでもありませんが、表現者の深い苦悩を慮るとともに、時代の風潮を感じてしまいます。やはり夭逝は、あまりに惜しい。

<大磯、こゆるぎの磯にて>
「邪魅の雫」は京極夏彦の百鬼夜行シリーズの第九弾。
まとにかく、全幅50mmになんなんとする、この装丁の威容こそがキモ。大冊かつ難解面妖な内容ながら、読みやすいのがこのシリーズの特徴でしょうか。
圧倒的な説明力。主人公の京極堂の憑き物落としのそれと同じく、作中遍く全ての事象についての詳細な解説。それが大冊の原因でもあり、分かりやすさの主因でもあるのだと思います。つまり「不思議なことなどないのだよ、関口くん。」これですね。
今作も面白かったです。そしてあっと言う間に読了しました。個人的に蘊蓄文学は大好物なんですよね。

<CCD筆頭>
続いて、「タイタス・クロウの帰還」。
タイタス・クロウサーガの最新刊です。と言っても本国では1975年に発表されたものなのですが。作者は御大H.P.Lの生まれ変わりと呼ばれる(H.P.L没後9ヶ月後に誕生している)、ブライアン・ラムレイ。
一般にラヴクラフトサークルの作は、徒にCCD(旧支配者群)と人類との対決を重視し、おおむね人類が勝利しちゃったりする、という構図になっており、そこがラヴクラフト原作原理主義者には違和感を覚える元になっています。ラムレイの他作もまさにその構図を取っているのですが、今作ではその構図をほとんどぶん投げて、夢(≒悪夢)と希望(≒妄想)にこそ主眼をおいています。
未読の方の為に詳細は伏せますが、ぎこちなくも冗長な導入中盤部から、突然の断片的な手記形式の独白による後半への暴走、投げっぱなしジャーマンが如き大団円。その加速するドライブ感、読者置いてきぼり感は、まさに正調クトゥルー神話大系と呼べる内容。正直、小説的結構には難有りなのですが、前述の原典怪奇でなくて原点回帰な姿勢も含めて、むしろそこがまた良し、的な。
最低限、創元文庫の「ラブクラフト全集」を読破。できれば国書刊行会の「定本ラヴクラフト全集」、または「真ク・リトル・リトル神話大系」までを網羅されていれば、十二分に楽しむことが出来る一冊だと思います。
「超時間の影」「銀の鍵の門を越えて」あたりをお好きな方には、バッチリオススメでき…
いや!そんな!あの手は何だ!
窓に!窓に!
(編者注:手記はここで中絶。仕事を残したまま筆者は失踪している。)
D
Posted at 2009/08/25 20:28:15 | |
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