ハレ　と　ケ

　あまりにも月が美しいので、RFを駆り出す。行く当てがあるわけではない、駆ることそれ自体が目的なのだから…。
　煌々と照らす月明かりの下、信号の少ない郊外を走らせる。

　義妹夫婦の家が近いことに気づき、見せびらかしに立ち寄る。


　「何これ～！」
　「うわぁ天井開く～！」
　「低～い！」
　「何考えてんの（こんな車を買って）～！」

　しばし盛り上がり、ゲラゲラ笑いっぱなしである。
　あぁこれなんだロードスターの魅力は。人が笑顔になるんだ。


　「ハレ　と　ケ」という日本人の世界観を見出したのは柳田邦夫である。日常の生活である「ケ」に対し、非日常で特別な日が「ハレ」の日。
　非日常的であるがゆえに「ハレの日」は節目となり、生活に張りと潤いを与え生きる糧となる。

　荷物が積めない、人が乗れない、オープンにすれば雨露もしのげない。非日常的な「ハレ」の乗り物がロードスターである。