
実務書と言うよりは、実際に発生したトラブルとその対応過程を記した1冊。
理論も必要だが、実際に対応した方法や苦労した点など、なかなか読み応えがある1冊でした。
内容も自分が以前から読みたいと思っていた内容であり、「この問題を引き起こさないためにはこんな対策を打っておく」という実際の現場に近い内容ではないかと思います。
特に筆者は経営コンサルタントという立場から経営者という立場になるというなかなか貴重な経験をした方であり、アドバイスをする立場とアドバイスを必要とされる立場の両方を体験したということになります。
きっとこういう経験をすると、より経営者に沿ったアドバイスができるだろうと思いますが、この両方を経験することができる人はまずいないと思います。
いつも思うのですが、給与引き下げ(給与改革)等労働者に対する不利益変更というのは非常に大変なことだと思いますし、労働者の立場からすれば受け入れがたいことは想像するまでもありません。
また、労働組合との団交、労働審判等はどの企業でも発生しうる事案であり、これらの対応は経営者にとってはとても大変なことです。
それらを未然に防止するためには、就業規則をはじめとする様々な規定をしっかりと制定する、そしてその内容を隠すことなく従業員にきちんと説明する。そして、規定を作るだけでなく、経営者と労働者がしっかりとコミュニケーションを取るということが大切だということを感じました。
この中で労務改善のために、様々な報告を求めるようなシステムを作っています。
管理職だけでなく、従業員にもです。
巻末にその報告書の事例が掲載されていますが、全部で25種類あり、日報だけでも7種類あります。
1人で7種類作るわけではありませんが、この日報を毎日作るのもなかなか大変だろうなぁと思いました。
そして、この報告書の作成を習慣づけるのはなかなか難しいだろうなぁと思いました。
特に、現場労働者からは「そんなのいちいち作ってられないよ」と反発がくるのは容易に想像できます。
これらを定着させるためには、さっきも書きましたが、経営者と労働者がコミュニケーションを密にして、この報告書の必要性をきちんと説明し、納得してもらうことが重要だと思いました。
(きっとこれを理解してもらうには時間がかかると思います)
いまの職場でも報告ものは結構ありますが、内容が重複していたり、何に使うのかわからない、必要性がわからない報告ものもあります。
そういう報告は、作る方も「ま、こんなの適当でいいか」という気持ちで作りがちです。
報告を求める側も、「なぜ必要なのか」をきちんと説明し、作る側にとって「なるほど」と思わせることも大切だと思います。
話は若干それますが、よく職場で「報連相」という言葉が使われると思います。
報告・連絡・相談の3つを略したものですが、よくきちんと「報連相」しろ、と指導されます。
しかし、たまに「あなたは報連相をできる環境を作ってますか?」と言いたくなることがあります。
報連相をきちんとさせるためには、報連相しやすい環境を作ることも大切ではないでしょうか。
例えば、部下が「ただ今戻りました」と職場に戻ってきたとき、上司から「お疲れさん、どうだった?」と一声かけるだけで、報告や相談がしやくすなります。
その時に、顔も上げず、返事もしなければ、誰も報告する気持ちにはならないでしょう。
こんな小さなことも考えさせられる1冊でした。
理論書と違い、非常に読みやすい1冊です。
Posted at 2015/01/17 11:19:58 | |
社会保険労務士 | 日記