
私のスピットファイアMk3には、SUキャブレターのツインキャブが付いています(タイトル画像)。
SUとは、1910年にイギリスで設立されたキャブレターメーカーのスキナーズ・ユニオン(Skinners Union)の頭文字だそうです。ぱっと見たとき、伏せたカップに真ん中からパイプを生やしたような形をしているのが特徴的です。
このSUツインキャブは、純正のままかと言うとちょっとだけ違っていて、Mk4用の純正に交換されています。こちらがネットから拾ったMk3の純正のツインキャブなのですが、

ロッカーカバーの真ん中からブローバイガスを吸気に戻す経路が違います。
私のMk4用は前後2つのキャブの根元(スロットルより前)に戻すようになっていますが、Mk3用は後ろ2気筒のスロットルより後に付けられた丸いデバイスに戻すようになっています。丸いデバイスは、圧力調整用のブリーザーバルブのようです。
あっと、そうそう。このエンジン上部のカバーは、カムカバーではなくロッカーカバーです。OHCではなくOHVなので、カムはクランクシャフト近くの下の方にあって、このカバーの中にカムはありません。
こんな感じでMk3用とMk4用のキャブは多少違うんですが、基本的にはほとんど同じものだと思います。前オーナーさん曰く、Mk4用はMk3用よりも吸気がより冷え、エミッションが少ないそうなんですが、どうなんでしょうね(真偽・程度不明)。
さて、先月、スピットファイア乗りの人と会ったときに、
「純正のままのキャブとは珍しいですね」
と言われました。まるで初めて見るかのような口ぶりで。
「???」
そのとき、私はピンと来なかったんですが、そう言われれば、日本で見る数少ないスピットファイアにおいては、SUキャブからWeberに変えてあることが多い気がします。
これは、その方の1500のインテーク回りですが、シングルのWeberに変えられていました。
また、例えばネットからの拾いものですが、九州方面のあるMk4では、こんな感じにツインのWeberになっていたり。
私は、イギリスやドイツで車を探していたとき(@ネット)、なかなかこれぞと思える車に巡り合えなかったために、結果的にトータル200台以上の車をチェックすることになったと思います。そのほとんどは、SUキャブのままでした。Weberに変えてある車もあるにはありましたが、極めて少数派でした。
なので、純正のSUキャブが珍しいなんてつゆとも思わなかったんです。ほとんどがそうでしたからね。それを考えると、日本でのWeberへの交換率はちょっと異常なような気がします。
単なる聞きかじりですが、Weberは、
・固定された大径の吸気口で、高回転域でのパワー、加速ポンプによる鋭いレスポンスが得られ、
・メインジェット・エアジェット・ベンチュリーなどの無数のパーツを交換して、細部まで徹底的にチューニングできる
(でも、あまりにもできることが多すぎて、ノウハウがないとまともにチューニングできない。https://motor-fan.jp/article/76751/)、
優れたキャブレーターなのだと思います。
でも、高回転まで回すことのできないスピットのエンジンの場合、パワー重視で高回転まで良く回るというWeberの特性はあまり活かせないと思うんです。しっかり回すときでも、精々4500rpmくらいしか回さない(回せない)エンジンですからね。低中速域でのドライバビリティこそが重要だと思うのです。
その点、SUキャブは、吸入空気量に応じてベンチュリー径が変わる仕掛けにより、フラットで低速域で扱いやすいトルク特性になるそうです。そう聞くと、明らかにSUの方がエンジンの性格に合うと思うんです。2000rpmも回せば十分キビキビ走れるのは、低回転で扱いやすいSUキャブの恩恵も少なくないんじゃないかと思っています。
日本では、スポーツカーにはWeberだ!Solexだ!とされているから、交換したがりになっていたんじゃないかと言う気がします。スピットファイアは、車全体としてはある種のスポーツカーだと思いますが(Lightweight Sports)、エンジン単体としては、大衆車用OHVのままなんですけどね。
そんな感じで、SUキャブがいいと思っているんですが、吸気径を可変にするための負圧を利用した可動機構があると言うことは、そこのメンテナンスが必要となると言うことです。
SUキャブの構造を簡易的に描くとこんな感じで(最近はAIが使えてありがたい)、
見た目の特徴であるカップの中には、負圧で上下するピストンが入っています。
このピストンの上下で、燃料ノズル部の口径が変わるわけですが、ざっくり絵にするとこういう動作だと思います。
スロットルを開けてエンジンが回り始めると、空気が吸い込まれるために負圧が高まります。スロットル直前の負圧が強くなると、ピストン上部のサクションチャンバーからも空気が吸われて、ピストンが上に上がります。ピストンが上がるとベンチュリー径が拡がると言う仕掛けですね。
負圧でサクションチャンバーから空気が抜けるのは、ピストンの下のスロットル側に穴が開けてあるからですね。
さらに、ピストンにはジェットニードルが固定してあって、燃料の出具合を調整する仕組みにもなっています。部品点数が少ないシンプルな構造なのに、よく考えられているなぁと感心します。これを100年以上前に考え出したスキナーさんはすごいですね。
例えばWeberだと、ジェットだけでも何種類も使われていて、流路の調整をする部品やら何やらいっぱいあって、めっちゃ複雑なんです。
SUの話に戻って、そのピストンの動きが悪くなると、エンジンの応答が悪くなったり、ギクシャクしたりするようになるそうです。私の車はそんなことにはなっていませんが、定期的な掃除が推奨されているので、そろそろバラしてピストンとサクションカップを掃除した方がいいんじゃないかと思っています。
また、このピストンが過剰に反応しないように、真ん中のパイプのところにオイルダンパーが仕込んであって、その粘度によって、応答の程度をチューニングできるようになっています。バラして掃除するならば、このオイルも交換してみようと思っています。
で、SUキャブ専用オイルもあるんですが、ほんのちょっとしか入っていないのに、なかなか高いんです。
ここのオイルは、そこそこのダンパー抵抗になりさえすればいいようで、結構適当でも大丈夫だそうです。ただし、気を付けるべきこととして、
・ゴム攻撃性のないオイルにすべし(昔の化学合成油は注意)、
・洗浄、浸透、防錆等を目的とするものは避けるべし、
・シリコンオイルのようにガソリンと混ざらないオイルはさけるべし、
とのこと。
少し調べると、スピットファイアで一般的に使われている20W-50のエンジンオイルをそのまま使う人が結構いらっしゃるようです。
確かにそれならば、継ぎ足し用に手元にあるでしょうから、別途用意する必要もなくていいですね。でも、専用オイルよりも粘度が高くなる(ねっとり固くなる)ため、多少アクセルを開けたときの反応が穏やかになるようです。
他の代替オイルとしては、オートマ用のATFか、
バイク用フォークオイル5W~10Wが専用オイルに粘度が近くてお勧めだそうです。
ATFは化学合成油ですが、その目的上、シール保護成分がたっぷり入っているので、まったく問題ないようです。バイク用のフォークオイルは、ダンパーオイルそのものですから、それも良さそうです。でも、これらは、(探せばあるのかもしれませんが)あまり少量で売っていないんですよね。数mLしかいらないので、1L缶でも多すぎます。値段は純正オイルよりもだいぶ安いのですけどね。
似たようなものとしては、ラジコン用のダンパーオイルなら少量で売っているのですが、シリコンオイルを使っているものが多いようです(それは上述のようにNG)。鉱物油のものもあるようですが、メーカーによって粘度がばらばらで、かつ硬いものが多いようなので、SUキャブ用に合うものを探すのが面倒そうです。
と言うことで、もうちょっと調べると、ミシンオイルを使っている人もいるとのこと。ただし、ミシンオイルだと今度は柔らか過ぎて、ダンピング不足で過応答になりがちなようです。
これらの情報から少し考えてまして、こうするのはどうかと思いました。
AIにもいいんじゃないかと言われたので、これでいくことにして、こちら3点を用意しました。
エーゼットの100mLミシンオイル197円と、
オイルを混ぜる油差し58円と、

エンジンオイルを少量とるためのスポイト61円です。
これらは、ヨドバシ・ドットコムで買いました。ヨドバシは、安いものでも送料込みの値段なので、配送までしてもらっても3つで316円です。
これで、オイル代が安く上がるうえに、無駄に多量になることもなく、かつ、かなりの幅で粘度調整まで試せます。良いところだらけなんじゃないかと思います。
なお、百均にもミシンオイルに似た「万能オイル」と言うものがあるのですが、入っているかも知れない混ぜ物がよくわからないので、昔ながらのミシンオイルにしました。また、百均には百円未満のものを売っていないので、残り2つは百均で探さない方が良いですね。3つトータルでは百均より安くあがっています。
それから、ツインキャブのうちの後ろ側のキャブは、ジェット調整ナットを回したときの反応が悪いので、ジェットの動きが悪くなっているんじゃないかと言う気がしています。
ここもバラせば確認できるはずなので、ピストンメンテと一緒に見てみたいと思います。
と言うことで、SUキャブのメンテの準備はできたので、近いうちにやってみたいと思います。