
標題とタイトル画から、「川口浩探検隊」が思い浮かんだ方は、同年代である可能性が高いです。少年時代、TVの前で釘付けになった番組でした。
特に、次の2編が印象深かったです。
「謎の原始猿人バーゴンは実在した! パラワン島奥地絶壁洞穴に黒い野人を追え!」
「恐怖! 双頭の巨大怪蛇ゴーグ! 南部タイ秘境に蛇島カウングの魔人は実在した!!」
厳密には、――どうせ、過剰な演出が入ったいつものロケなんだろうな――と思いつつ、いつしか感情移入していくことの繰り返しでした。冷静になって考えてみれば、新聞やニュースで話題になっていないことから、探検隊が大した発見をしていないと分かっていたのです。探検隊が崖から滑落したり、野生動物に襲われたりする危機の場面では、常にカメラマンが先行して撮影しており、その矛盾を感じることもありました。
それでも、虜になってしまった番組でした。その理由として、探検の迫真性もさることながら、田中信夫氏のナレーションが重要な役割を果たしていたと思います。
当時の記憶で創作し、雰囲気を再現してみます。
「迫りくる夕陽に、いつしかジャングルは別の顔を見せ始めていた。陽から陰へ。この変化は、驚くほど速い。隊員の一人が、得体の知れない生物の啼き声で警戒態勢に入った。未知生物との遭遇か。それは気のせいではないのかもしれない。漆黒に包まれる世界は、まさに別世界。ある意味、魔界であった。そして、陽が落ちた。その次の瞬間、魔界からの、想像を絶する洗礼を受けることになる!」
ピアノの低音域を強く叩いたような効果音が響き、CMに移ります。
今思えば、何故、あれほど夢中になれたのか、とても不思議な番組でした。それと、何故か、藤岡弘氏が引き継いだ続編では、燃えるものが少なくなってしまいました。
先日、偶然、元隊員の手記を発見し、ようやくこの謎が解けた気がしています。
――川口さんは本当の探検家になりたかったんですよ。そういう夢を持っていました。世間からはいろいろ言われましたが、場所にはちゃんと行ってたわけですからね。南極とか、いつか本当の探検をしたいと話していたのです。実際に、辺境の地では命がけだったこともありました(一部改編)。
番組は、川口浩氏の療養によって中断し、ほどなくして逝去によって再開不可能となってしまいました。ご自身でプロダクションを創設し、ライフワークとして探検を続ける決意を固めた矢先のことだったそうです。あの時代の私達は、水曜スペシャルという単なる娯楽番組ではなく、川口隊長の情熱が満ちあふれたロマンの世界を観ていたのです。
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2023/09/30 07:05:42