
趣味の世界ながら、連載1,000回を迎えることができました。今回は、特別編として、一番好きな料理を振り返りたいと思います。
かつて、「料理の鉄人」という人気TV番組がありました。ここに自分の行きつけだったレストランのオーナーシェフが出演することになり、欣喜雀躍しました。
一方で、複雑な思いもありました。独自の情報網で発見した名店でしたので、さらに有名になって予約しづらくなるのが嫌だったのです。
番組での食材のテーマは、「ほうれん草」でした。司会の鹿賀丈史がそれを発表した刹那に、森シェフは笑みを浮かべました。得意なチーズを存分に使えるため、勝利を確信したのだと思います。
ところが、中華の鉄人に不可解な判定で敗れました。鹿賀丈史が困惑したほどの僅差で、しかも優勢だったほうが敗者になる噴飯ものの結果でした。ある審査員だけが大幅減点を行い、ボクシングの判定でまれにあるsplit decisionになってしまったのです。
TVの前で、「こんな番組なんて二度と見るもんか」といいかけたところで、その言葉を嚥下しました。両者が健闘をたたえあい、お互いに尊敬の念を示しているのが分かったのです。2人が、料理番組の企画を超越した世界で競い合っていたことを悟りました。このレベルに到達すると、もはや採点なんて無意味なのです。
トップの画像は、森克明シェフのエスカルゴ料理です。チーズを使った料理では、国内最高の料理人だったと思います。80歳まで厨房に立たれ、最近引退されました。
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2025/06/09 17:00:26