
10数年前だった思います。ちょうど今くらいの季節でした。釧路は、残暑の気配も感じられないほどの涼しさになっていました。
とても気さくな運転手で、空港で乗った直後から、会話が弾んでいました。
「東京からきて、毎回日帰りとはねえ。たまには泊まって観光されたらいいのに」
「毎月のように来てますからねえ。今日は、スパカツを昼食べて、夕方に秋刀魚の刺身が美味しいという店で食事して、最終便でとんぼ返りです」
「そんなのでいいんですか?」
「釧路といえば、秋の秋刀魚と冬のタンチョウヅルを楽しみにしていました。今晩で年間計画の50%達成です」
「お客さん、ツル見たいんかい?」
「もちろんですよ」
しばらく会話が途切れ、眠気が肩に覆いかぶさりはじめた頃でした。
突然、タクシーが停車しました。私のために停めてくれたのです。
「ほら、あそこだ」
餌探しに夢中になっている様子の少し汚れたタンチョウヅルでした。純白とは言い難いリアルな野生の姿に唖然とするしかなく、美しさよりもたくましさを感じました。
タンチョウヅルが留鳥だなんてまったくもって予想外で、ただただ瞠目するしかありませんでした。
Posted at 2022/09/07 11:45:14 | |
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