
会社での非常に古い話ですが、かつての営業現場では、私有車認定制度がありました。一定の条件を満たせば、私有車を営業用の持ち車として使えるというものでした。精算は、月度の走行距離を「社用1,400km、私用600km」という形で申請し、この場合では、1,400km相当のガソリン代が支給されました。標準的な燃費に、ガソリンの市場実勢価の1.5倍程度が考慮されていましたので、収支は必ずプラスになりました。
当時の管理職では、マークIIとクレスタの人気が高く、ラグジュアリーな営業車を羨ましく思っていました。私の上司には、まったく異なる思想があり、燃費重視でローレルのディーゼルを営業車にしていました。本人が「走る貯金箱」と公言していたほどで、周囲では、月間走行距離に対する疑念を唱える声が絶えませんでした。数軒だけスポットで僻地のエリアを担当するなど、行動もかなり怪しかったです。
こうしたなか、血気盛んな20代の先輩2人が、挑戦的な計画を企んでいました。会社の規程では、スポーツやオフロード等の娯楽色が濃い車両は不可とされ、4ドアが原則でした。
私有車の審査を行っている管理部長は、定年退職間際のラストリゾート的なポストになっており、遅くとも2年以内には異動が繰り返されていました。車に無知なX氏がそのポストに着任するとの情報が入ると、刹那に、この2人の先輩が動きました。
私有車の営業車申請には、3枚の写真の添付が必要であり、当時はフィルムのカメラでしたので、ひと苦労がありました。先輩方の写真撮影を手伝わされたのです。
「スポイラーが分からないように、もっと下から撮れ」
「4ドアぽくなるように、もう少し光を当ててみてくれ」
「エンブレムが見えなくなるように、そこに影を作ってくれ」
「リアウィングが分からないように、ビルの2階から撮ってみてくれ」
「少しピンボケ気味で頼む」
という具合に、次々と指示がきます。24枚撮りフィルムをあっという間に使い切ってしまう念の入れようでした。
こうして、スカイラインGT4とランサーエボリューションが営業車として認定されました。申請上は、単に「日産スカイラン」「三菱ランサー」となっていたはずです。のちに、他の営業所で、ハリアー(初代モデルのツートンカラー)が却下された事例があり、かなりもめていました。それでも、厳格な管理部長は、例外を認めませんでした。グレーゾーンを駆け抜けた2人の先輩方の勝利でした。
Posted at 2023/11/25 08:08:38 | |
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