バーデンのブログを見て、
冷やし まー様より
ユニフォミティマッチングのご依頼が有りました。車両はポルシェ911SC 930型です。1978年からの生産なので30年程は経過しているのですが、独特なオーラが有ります。
現状のタイヤホイールでは、高速域の振動が酷いようで一新したいとの事でタイヤとホイールをお持込で組付けと装着を当社で実施しました。
途中で日々布教活動を実施している、”バランスウエイト(錘)の量より、走行状態(接地時)の真円度を優先させるべき”分かりやすい事例が有りましたので紹介します(マニア向けの為長文注意です。。。)
ホイールは、
フックスアロイホイール15インチです。30年?程前の物をレストアしたそうです。初代911より採用されている純正鍛造ホイールです。持っただけで高剛性と軽さが分かります。
組付けるタイヤはミシュランエナジーセイバー185/65R15 205/60R15 です。15インチは良いパターンとサイズが無くなってきました。 速度記号がHなので210km/hまでしか出せません。せめてV以上は欲しい所です。
ユニフォミティテスター
GSP9700にポルシェ専用のフランジプレートを使用してランナウトを測定します。
ユニフォミティマッチングにて組付けます。 ミシュランは少し癖が有り秘密のテクニックを使ってビードを篏合させます。
GSP9700にセットしてユニフォミティを測定します。
測定結果です。赤丸が、ウエイト(錘)の量を、真ん中のホイールの図の矢印が位置を示します。インアウトの位置が近いのでスタティックバランスがあまり宜しくないようです。(バランスも奥が深いのでこの
当たりを参照ください)
黄色の丸が1次RFVです。50Nとなります。
詳細ですが、赤丸左がタイヤ単体の1次RFVの計算値(45N)です。赤丸右がタイヤとホイールの組付け状態のRFV値(50N)です。
黄色の丸印がホイールの縦ブレの最小点(RROローポイント)と、組付け状態から、ホイールの数値を引いて計算したタイヤ単体のRFVピークです。
簡単に言うと現状は、タイヤの凸部分とホイールの凸部分が合わさって組み合わせ上最悪に近い状態であり、重量のバランスは合計51gの狂いです。
ホイールとタイヤにマーキングします。珍しくミシュランに赤点が付いていたので仮にローポイントに合わせましたが無意味でした。 (タイヤのマークの意味は
こちら)
タイヤの位相合わせをするために一度ビードを落として組み替えます。
再度ユニフォミティを測定します。
測定結果です。赤丸の重量バランスですが、51gから80gと大幅に増えています。
位置ですが対角線に近いのでカップル(偶)アンバランスが悪いと考えられます。バランサーによってダイナミックバランスの内カップルアンバランス成分が残る物も結構有って、高速シミーの原因となっている場合も有ります。
黄色の丸の1次RFVですが50Nから25Nと半減しています。この数値を低減させる事がユニフォミティマッチングの目的となります。
RFVですが、ハンドリング重視の車両はフロントが40N以下が理想です。100Nを超えるとシミーが発生する可能性が高まります。
詳細です。位相組換えがよく分かると思います。タイヤ単体のRFV値ですが、タイヤの構造上単体で測定する事は不可能なのであくまで計算上の数値となってしまいます。この事が色々な意味で問題になって来ます。。。。
走行状態の真円度を合わせてから重量のバランスを取ります。
ユニフォミティマッチングでは1g単位まで精密に取ります。
ウエイトを貼り付けます。
残留アンバランスが2g出ました。
2gのウエイトを貼り付けて修正します。
ゼロバランスになりました。
この作業を4本繰り返して終了です。LFV(残念ながらコニシティのみ)も考慮して装着位置を決めます。
装着時にも真円度を追究します。当たり面を清掃して、装着時にもRFV1次ピークを上死点にして装着します。
完成です。
詳細数値です。流石ミシュランです。組み付け後全て30N以下となりました。
フックスホイールも流石です。30年?前とは思えない精度です。個人的にはホイールは軽さよりも強度が重要だと思います。
ユニフォミティ的には300km/h以上でも指一本で走れるはずですが、速度記号がHなので210km/h以下(勿論クローズド)でお願いします。冷やし まー様ご利用ありがとうございました。
良く究極の何とかや、職人の何とか等とタイヤ組付け時にホイールバランスのウエイト(錘)のみを少なくすることが最良としている場合が有りますが、現在では時代遅れです。走行状態の真円度(荷重されたランナウト)は組み合わせでしか変えれませんが、重量のバランスは後から取ることが可能です。
実は重量バランスでも最も重要なのはタイヤ単体の重量バランスなのです。ホイール単体のバランスがいくら悪くても、ビードシート部の精度さえ出ていれば(例え100g狂っていても)問題ありません。後から重量を合わせることが可能です。
タイヤ単体のバランスが悪いのは致命的です。この場合例えユニフォミティ値が良くてもシミーや振動が出る場合が有ります。これは遠心力が関係してきます。バーデンで測定しているのは低速ユニフォミティと呼ばれるもので、実際は高速ユニフォミティを測定しないとわからない部分が多いのです。(この当たりの話は長くなりますのでそのうち解説したいと思います。)
単にホイールとタイヤの組み合わせでウエイトが減ったとしても、それは見かけ上です。実際にタイヤ自体のバランスが良くなった訳では有りません。実際に重量バランスを良くするにはタイヤを
切削するしかありません。
(やっぱり pdf
100D26-LH が欲しいですが多分億以上?)