
兵庫県にお住いのオーナー様から低速シミーのご相談が有りました。バーデンで良くご相談を頂く高速シミー(高速域の微振動)では無く低速(50~60km/h)での微振動との事です。
低速シミーとの事でしたので試乗しましたがあまり感じることは出来ませんでした。
車両はルノーメガーヌRS(ルノースポール)ニュルでFF最速記録を持っているホットハッチです。2Lターボ265ps タイヤは標準でミシュランPS2 18インチです。

現状把握の為にユニフォミティテスター
GSP9700にセットしてユニフォミティを測定します。
測定結果ですが、右フロントの2次RFVが80Nと今一つです。(青丸)
RFV波形を確認しても、1回転中に2回剛性の変動が有ります。
右フロント以外は良好でした。
今回の低速シミーの原因は2次RFV不良によるものと考えられます。何故2次RFVが悪いと低速で微振動が発生するのか解説したいと思います。
シミー(ハンドル回転方向の振れ)は通常サスペンションのバネ下固有振動数が共振する事により発生します。構造上固有振動数は10~15hzとなっています。
今回のタイヤサイズは235/40R18なのでタイヤ外径は約645mmとなります。シミーが発生しやすい100km/h時には約13.7rps(hz)(1秒間に13.7回転)となりますのでサスペンション固有振動数に近く共振して振動が増幅されてステアリングが振れるのです。
2次RFVが悪いと1回転に2回の入力が発生するので100km/hの半分、50km/hで13.7hzとなり低速シミーの原因となります。3次RFVが悪いと33km/hでも振動が出る場合が有ります。
2次RFVが悪いという事はタイヤが卵型(3次は三角形)になっているという事に成ります。
今回はオーナー様の官能評価能力の高さが数値で証明された結果になりました。
定量的に提示出来るのがGSP9700の良い所だと思います。
2次RFVを含めRFVを最小化する為に
ユニフォミティマッチングを実施します。作業は見習い1号です。

珍しい車両なのでじっくり見ていると、フロントサスペンションが特殊な形をしていました。
一見ストラットのようなのですが、転舵軸が別に設けてあり、目から鱗が5枚位落ちました。
キングピンを立てながらスクラブ半径の自由度が高く、スピンドルオフセットも小さく出来るのでトルクステアも低減出来そうです。おまけにキャスターも寝かせそうです。
トヨタのスーパーストラットも同じような考え方ですが、ショックアブソーバーの容量はこちらの方が確保出来そうです。
通常はキングピンを立てたい場合はピボットを外側に持っていくのですが、全部ホイールの中に入れてしまえと言う発想が素晴らしいです。考えた人、作った人はすごいです。
後から調べると、フロントダブルアクスルストラットシステム(DASS)と言うそうです。スクラブ半径もネガティブみたいなので一度サーキットで乗ってみたいです。
ホイールリムサイズが8.25Jインセットが65と変態サイズなのも納得です。

右フロントのユニフォミティマッチング結果です。RFVは1次、2次共に半減しました。
1次RFVも30N以下にする事が出来ました。
偏芯取付に注意して装着します。

完成です。丸一日掛かってしまいました。
詳細数値です。PS2も基本
C3M製法なのでユニフォミティは良好です。タイヤ、ホイール共に真円度、精度共に良好です。
数値的には問題無いのですが、オーナー様は非常に官能評価能力が高い方なので改善しているかどうかは実走して頂くしか方法は有りません。
改善していることを祈って納車しました。
遠方よりご来店ありがとうございました。
Posted at 2013/12/19 16:56:49 | |
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ユニフォミティマッチング | 日記