もしも敵に上陸されてしまったら…?
「専守防衛」という、守りに徹する防衛施策を持つ自衛隊ですが、敵の侵攻や上陸を必ず防げるかといえば難しい場合も予想されます。もし敵に上陸されて陣地を構築された場合、敵の陣容を解明するために陸上自衛隊は偵察部隊を派遣します。その時に活躍するのが「87式偵察警戒車」です。この車両が配備されるまでの偵察隊は、「ジープ」やバイクといった装甲化されていない装備しかありませんでした。偵察部隊は言わば裸同然だったのです。この状況を打開したのが87式偵察警戒車でした。偵察部隊に初めて装甲車両が配備されたことによって、隊員たちの安全性、生存性は大きく向上しました。
コンパクトな車体で最小旋回半径は約10mと小回りも利きます。乗員は最大5名で、前席右側が正ドライバー席、左側が副ドライバー兼通信手席です。中央には車長席と砲手席があって、後部右側には後ろ向きの偵察員席があります。この後ろ向きの偵察員席が偵察車ならではの配置で、車体上面後部にペリスコープ(潜望鏡)と、車体後部ハッチの上方に取り付けられたカメラの映像によって後方を監視することができます。87式偵察警戒車は、「82式指揮通信車」の派生形のひとつともいわれ、車体下部の大部分を共有しています。そのため開発経費を抑えることに成功たそうです。主要な武器として砲塔に25mm機関砲を装備していて、強行偵察時や、万が一の遭遇戦でも有利に戦闘を進めることができます。この25mm機関砲は地上の目標の他にも、対空目標に対しても有効に射撃をすることができるといわれていて、程度にもよりますが、敵の装甲車やヘリコプターを撃ち抜くことができるそうです。
敵の攻撃を引き出す危険な任務
偵察は大きく分けて2種類の偵察方法が存在します。こちらの気配を隠しつつ、敵に接近して情報を探る「隠密偵察」と、こちらから積極的に攻撃を加えて、相手の反撃の規模から敵の情報を得る「威力偵察」です。87式偵察警戒車はその場に留まって周囲を警戒する定点観測にも使えますが、最も活躍するのは威力偵察だといわれます。威力偵察の手順の一例を紹介しましょう。敵陣地の解明を命ぜられた偵察隊は、まず偵察オート部隊を派遣します。高い機動性を活かして敵陣地に近づく偵察オートですが、ある程度まで敵に近づくと敵の攻撃を受けます。敵からの攻撃を受けた場所を記録して、偵察本部へその情報を送ります。そこから先は87式偵察警戒車の出番となります。装甲化された車体は、敵の小銃弾程度の攻撃であれば跳ね返しながら前進することができます。敵の射撃陣地の位置を確認したら、その場所に向けて25mm機関砲を射撃し、更に前進して敵の反撃具合を調べます。ちなみに、北海道の第7師団ではこの威力偵察に90式戦車も加入するので、とても強力な偵察活動になるといいます。この威力偵察ですが、偵察という名の強行攻撃ともいわれる場合があります。ドンドン攻撃を加えて、敵の戦力を解明する。87式偵察警戒車は、その威力偵察を実現させるために大いに役に立っているそうです。
そろそろお役御免、後継車両は…?
87式偵察警戒車の砲塔には、25mm機関砲という強力な武器を装備していますが、実は自動照準ではなく、砲手が手動で照準しているそうで、操作が難しく、修得するまで時間がかかるそうです。経験を重ねると、移動する目標に対しても追尾して照準することができるようになるといわれています。自動照準が世界基準になっている今日では、技術の陳腐化が進んでいるともいわれていますが、配備から31年以上経過しているため、それは致し方ないことでしょう。後継車両問題も抱えていましたが、現在では16式機動戦闘車がその後釜になることがほぼ決まっているそうです。両車は同じ装輪車ですが、6輪と8輪では操縦特性が違います。特に内輪差が異なるため、ドライバーは96式装輪装甲車で操縦訓練を重ねてから16式機動戦闘車を操縦するそうです。退役までカウントダウンの始まった87式偵察警戒車ですが、16式機動戦闘車の配備が終わるまでは、まだまだ最前線で活躍するでしょう。
配備当時は偵察部隊が格段に強化されると言われたが、いくら何でも装甲車に25㎜機関砲で配力偵察は荷が重すぎるんではないだろうか。隠密偵察や戦線の側方・後方警戒程度なら小火器に対する防御力もあり、反撃のために機関砲も装備するので十分だろう。16式機動戦闘車が後継であればまさに適役、はまり役と言うところだろうか、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2018/06/30 16:03:21 | |
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