去る2018年6月27日から8月2日までの1か月以上に渡り、ハワイ・オアフ島並びにその周辺海域(一部サンディエゴなど)で環太平洋合同演習「リムパック2018」が行われました。日米を含む25か国が参加し、世界最大規模の演習に相応しく、連日熱い訓練が洋上で繰り広げられました。
もともとこの演習は、1971(昭和46)年から始まりました。ソ連による太平洋進出を阻むため、アメリカの呼びかけで、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリスの5か国で開始されました。翌1972(昭和47)年にも実施されますが、しばらく、毎年だったり、1年空けたりと、不定期開催となりました。1980(昭和55)年からは、完全に2年に一度となりました。なお、この年から日本が参加しました。記念すべき第1回目の参加艦艇はヘリ搭載護衛艦「ひえい」とミサイル護衛艦「あまつかぜ」の2隻でした。これに8機のP-2Jも加わり、射撃訓練やシナリオ訓練を実施しました。
参加国は年々増えていきます。海上自衛隊も1988(平成元)年より、護衛艦だけでなく、潜水艦や補給艦を加えた10隻もの大艦隊で参加し、アメリカに準ずる重要な位置を占めていました。
しかし、2000(平成12)年の10隻参加を最後に、年々海自艦艇は減っていきます。「リムパック2018」に至っては、ヘリ搭載護衛艦「いせ」だけとなってしまいました。これにP-3Cも2機のみ。「リムパック1980」に参加した第1回目よりも、残念ながら小規模な陣容となってしまいました。
海自の役割は大きく変わりました。環太平洋の一員であることは変わりませんが、任務はグローバルになりました。ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動では、活動拠点を設けて恒常的に護衛艦ならびに哨戒機によるパトロールを実施しています。そのほかの親交のある国での観艦式への参加、親善訓練の実施、北朝鮮の経済制裁にともなう洋上での取引、通称「瀬取り」の監視など、とにかく忙しくなりました。尖閣諸島周辺での中国海軍や公船の示威行為への対処といった領海を奪われるかもしれない危機にも面しています。
もう護衛艦や哨戒機を「リムパック」に派遣するのは難しくなってしまいました。しかしながら、今回派遣した「いせ」は、艦のサイズもさることながら、各種訓練においても目立っておりました。その活躍を追っていきましょう。
世界が注目、日本の災害対応
「リムパック」における演習項目の中に、「HA/DR」というものがあります。これは、「Humanitarian Assistance/Disaster Relief」の頭文字を取ったもので、日本語としては「人道支援活動/災害救援」と訳されております。
パールハーバー湾内にあるフォード島という小さな島を、架空のグリフォン国と想定します。このグリフォン国で大地震が発生。各国で支援する、というシナリオの、いわば防災訓練です。日米を中心に数か国が参加し、7月13日には、負傷者を日米ヘリで洋上の「いせ」まで運びこみ、応急手当などを実施する訓練が行われました。
日本は阪神淡路大震災以降、いくつかの都市型大規模災害を経験しました。東日本大震災では、世界でも類を見ない大津波による激甚災害も経験しました。世界は、日本から災害対処のノウハウを手に入れようとしています。フォード島に置かれた統制所では、日米のほか、チリやベトナム、そして地元消防など、いろいろな機関が共に訓練を実施しました。
この時「いせ」は洋上拠点となりました。取材時の想定は、震災にともなう車両の多重衝突事故が発生し、傷病者が多数発生。これを受け日米のヘリを使い、傷病者を「いせ」へと運んできました。
ヘリから次々とケガをした人が降ろされます。みな特殊メイクを施し、本当の傷のようです。ケガした部分からは血が滴り、骨が見えているなど、かなりリアルでした。
担架に乗せられる人もいました。自立歩行が可能な人は、「いせ」乗員が肩を貸すなどし、エレベーターで格納庫区画へと運びこみます。ここではまず、「トリアージ」を行います。これはケガの程度により色分けをするというもので、「赤」は重傷、「黄色」は大至急手当てが必要だが「赤」ほどではない、「緑」は応急手当てが必要だが緊急を要さない、といったように、治療の優先順位を決めるのです。ちなみに「黒」もあり、こちらは死亡または、死亡する可能性が高い、ということで、治療はしません。
海自やオーストラリアの医官が協力して応急手当てをしていきます。そして「赤」や「黄色」のタグが付けられた傷病者は、さらに本格的な手術や治療を行うため、ヘリで米病院船「マーシー」へと運ばれていきました。
敵機を撃墜せよ! 迫力の対空戦闘射撃
7月20日には、「いせ」に搭載されている艦対空ミサイルESSMによる射撃訓練が行われました。射撃を行う場所は、カウアイ島沖にある「PMRF」と呼ばれる場所です。「Pacific Missile Range Facility」の頭文字をとっており、日本語に訳すと「太平洋ミサイル射場」となります。このエリア内には海中を含めてセンサーが張り巡らせてあります。ただミサイルを標的へと命中させるだけでなく、どのような航跡を経てどれくらいのスピードで標的まで近づいていったか、それが確実に撃破できる命中であったかなど、細かくモニタリングすることができます。カウアイ島には、バーキングサンズ基地があります。この基地がPMRFを管理しているとともに、標的を撃ち出す役割を帯びています。
今回用いられたのは、陸上発射型の2機のBQM-74Eという標的機でした。これを撃ち落とすべく、「ESSM」が使われます。米レイセオン社が開発・製造した艦対空ミサイルで、これまでの海自護衛艦に搭載されてきた艦対空ミサイル「シースパロー」の発展型です。射程は30kmから50kmと言われており、後部甲板のVLS(垂直発射システム)に搭載されています。
連続で2発のESSMが発射されました。白い煙の尾を引きながら、上昇し、目視では確認できない距離へと飛んでいきます。やがて水平線上に一瞬ピカッとした輝きが見え、標的機を撃墜しました。
日本は参加規模こそ激減しましたが、これまでと変わらず実践的な訓練を繰り広げています。また2014年からは陸自も参加するようになりました。今回もこれまで通り、陸自は部隊をハワイへと送り込んで各種訓練に参加していました。
一時期は1個護衛隊群に潜水艦、P3Cは1個飛行隊を送り込んでいた海自だが、ソマリア海賊対策、南シナ海警戒、尖閣諸島警戒、日本海ミサイル警戒など遠隔地任務が目白押しで47隻しかない護衛艦はフル活動だろう。整備や点検訓練などの船を除けば一線で活動できる船は20隻もないだろう。それでも環太平洋地域では米海軍に次ぐ大海軍なのでその存在感は大きいだろう。せめて60隻海上自衛隊程度になればいいんだろうけど今度は乗せる人間がいないということになってしまう。様々困難はあるだろうけど頑張れ、海上自衛隊、‥(^。^)y-.。o○。
Posted at 2018/09/30 12:18:29 | |
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