実は国内向け販売終了していたスズキ・キザシ

キザシといえば、スズキのフラッグシップたるモデル。ヨーロッパDセグメントに属するセダンでサイズは堂々としたもの。

日本発売開始は2009年10月のこと。スズキが大型セダンを市場に投入するというのは、当時かなり驚いたものです。

デザインはエッジの効いたかなり力強いものを取り入れています。失礼を承知で言えば、スズキがつくったとは到底思えない素晴らしいクルマだと思いました。

それでは、キザシが日本発売開始した2009年10月当時のスズキのプレスニュースを引用ご紹介します。

スズキ、新型セダン「キザシ」を発売　　2009年10月21日

スズキ株式会社は、新型セダン「キザシ」を10月21日より発売する。

「キザシ」は、スポーティーで力強いスタイリングや、丹念な作り込みによる上質なインテリア、快適な装備に加え、感性に応える爽快な走りを追求したセダンである。欧州・北米で走行テストを重ね、スポーティーなハンドリングと快適な乗り心地の両立を目指し開発を進めてきた。

「キザシ」という車名には、スズキが「世界の市場に向け、新しいクルマ作りに挑戦する」という想いを込めている。「キザシ」は新しいフラッグシップモデルとして、今後北米市場にも投入を予定している。　（引用終了）

キザシに対するスズキの強い思いが込められているようで、それが伝わってきますよね。

日本発売開始からすでに６年余り経っていますが、街中で見かけることは残念ながらそれほど多くはありません。

その理由として挙げられるのは、キザシが受注生産扱いというのは一理あるのかもしれません。注文から納車まで時間がかかるというのは販売上の最大のネックのはず。

スズキはこのクルマに対する思いが強い割には、販売に対する意気込みはかなり消極的のようです。スズキ自身も日本国内ではあまり売れないと見込んでの扱いなのでしょうかね。

ところで、年末にキザシに関するたいへん残念なニュースが聞かれました。以下、引用ご紹介します。

スズキ、キザシ生産終了へ　MRワゴンも　　2015年12月4日　8時24分　　静岡新聞ニュース

スズキは、2400ccの高級セダン「キザシ」の生産を年内に終える。2009年に乗用車の旗艦モデルとして市場投入したが、リーマン・ショック以降、世界的に販売が伸び悩んでいた。国内では受注生産だったが、９月末で注文を打ち切っている。

キザシは、同社初の2000ccクラス以上の高級車として登場した。日本をはじめ、北米、欧州、中国で販売された。相良工場（牧之原市）で生産、輸出していたが、12年に北米の四輪車販売の撤退を決めたことなどが響いた。同工場では新たな小型車生産を検討する。スズキは軽自動車のMRワゴンも、15年末で生産を終了する。日産自動車への同車種のOEM（相手先ブランドによる生産）供給は既に終えている。　　（引用終了）

そもそも国内発売開始した2009年10月の時点で、世はリーマン・ショックによる金融不況でした。振り返ってみると、キザシの船出は相当厳しかったのですね。スズキのWebサイトからはキザシがすでに見当たりませんでした。

キザシは受注生産扱いのため当然販売台数もわずか。販売存続は、少数販売台数車にとって、もろに影響を受けやすかったのでしょうね。９月末の受注終了に12月の販売終了というのは、スズキにとっても苦渋の決断だったに違いありません。

ところで、今回キザシについて調べていたら、いろいろなことがわかりました。まずライバル。アキュラTSX（日本名ホンダ・アコード）、アルファロメオ159、VWパサートとスズキが公言。

　　≪アルファロメオ159≫
ヨーロッパでも対等に亘りあえるようにつくり上げたということでしょうか。

そして、もう一つわかったこと。それは、ハイブリッドモデルの投入を計画していたということ。これもスズキが公言。このことはスズキがキザシをじっくりと育てていきたかったことを意味するのでしょうね。

さらにもう一つわかったこと。それは、ドイツ・ニュルブルクリンクとアウトバーンをはじめ、スイスアルプス、英国カントリーロードなど、世界の道で徹底的にハンドリングを鍛え上げたということ。走りについてはそれなりに自信があるようですね。

キザシのカタログを持っていたのでご紹介します。

これは、2010年８月発行のモノ。発売開始後およそ一年後ということになります。総ページ数は１４ページ。この手のニューモデルにしてはかなり薄っぺらいカタログですね。


『スポーツをエレガントに包む。ゆとりの心が走っていく。』

造形美に優れたデザインとアウトバーンなど世界各地で鍛え上げられた足廻りを兼ね備えているキザシはスズキにとっても渾身の一台なのでしょうね。

日本仕様は、黒（スーパーブラックパール）、白（スノーホワイトパール）、銀（プレミアムシルバーメタリック）の３色のみ。

ヨーロッパにはこんなボディカラーもありました。

比較的落ち着いた日本仕様のラインナップに比べるとかなり派手目に映りますが、却って新鮮です。日本仕様にもこのレッドカラーがもしあったら、もう少し売れていたかもしれませんね。

キザシの販売期間は６年余り。晩年（2013年）には警察車両として採用され、全国に配備されたのはご存じの方も多いことでしょう。ちなみに、警察車両向けにレザーからファブリックへとシートが変更されるなど見直しが図られているようです。

キザシが警察車両に採用されたことはかなり驚きました。これまでほとんど見かけなかったキザシが、このような形で見かけるようになったことはスズキにとっては良かったのかもしれません。

最後に。キザシはもっと評価されても良いクルマだったはずです。販売終了はとても残念なことですが、良さを再認識される日がいつか訪れることでしょう。

※キザシの海外TVCMを見つけたのでどうぞご覧ください。