
まだガラケーの時代の話です。得意先でトラブルがあり、沖縄県の営業担当者と同行することになりました。私より4年先輩の大西さん(仮名)という方でした。電話では頻繁に話しており、声はよく知っていました。特徴のある方言を隠さない方でしたので、電話に出た刹那、大西さんだと鑑別できました。
問題は、面識がないことでした。話しかたから想像すると、漫才師のビートきよし氏風の方なのではないか、と勝手に想像していました。
出張日が8月31日になったため、大混雑が予想される那覇空港での待ち合わせには、事前の準備が必要になるだろうと思いました。よくある話として、有名百貨店の紙袋を手にする方法がありました。なのに、大西さんは、とても楽観的な方で、空港までとにかくきて下さいよ、の一点張りでした。なにも段取りをしてくれません。
職場で、この大西さんと同行したばかりの先輩がいたため、相談をしてみました。
「ああ、大丈夫だよ。直ぐに大西だって分かるから」
「いやあ、当日は、大混雑だと思うんですよ。トップシーズンもいいところですから」
「いいか。飛行機を降りるだろ。通路からロビーに出るところまで進むよな。そこで周囲を観察してみてくれ。一人だけ鳥みたいな人がいるはずだからさあ」
「鳥、ですか?」
「そう、鳥だ。両手を体の横にくっつけて羽のようにパタパタ動かしている。足もちょこちょこ動いてさ」
――当日、1秒で大西さんがどこにいるのか分かったとはいいません。しかし、3秒はかかりませんでした。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2022/08/24 07:18:59