
「私が高校生の頃は、ほぼ1生徒1アイドルという時代でした」
菊池桃子さんのラジオ番組にこの内容のメールをしたところ、採用して頂き、読み上げた桃子さん本人がかなり喜んでくれました。
当時の描写としては、なかなか正確だと思います。下敷きにピンナップをはさみ、ブロマイドを定期入れに入れていたものです。
こうしたなか、頑なにアイドルを否定していた級友が数名いました。ソフィー・マルソーやフィービー・ケイツ等の外国女優マニアが1名、沢田亜矢子さんや岡江久美子さん等のやや熟女路線が1名、そして、もう1名は熱狂的なアニメファンの海川君(仮名)でした。
海川君の文房具は、すべて「うる星やつら」のラムちゃんで統一されていました。本人にも画才があり、暇さえあれば、イラストを描いている感じでした。
つまらない授業になると、海川君の筆が進みます。男子校でしたので、皆が喜ぶ作風になっていきました。一度、海川君に「菊池桃子風にしようか?」と厚意でいわれ、「それだけは勘弁してくれ」と断ったことがあります。
本人には言えませんでしたが、アニメとは異なるアダルトな劇画のほうが断然上手いと思いました。とても不思議なのは、自分達にそういう経験がなく、本物を拝んだこともないのに、大人の描写が抜群に上手だったことです。
海川君の作品は、必ず私の机にまわってきました。すると、「あとは宜しく」という彼からのアイコンタクトがきます。一度だけ、悪戯心でワンフレーズ書き足したら、それが好評で、――作者の海川先生からの正式なオファーとして――執筆依頼を受けるようになってしまったのです。
当時、谷村新司氏のラジオでエロの序章を学び、父親の愛読書だったハードロマン小説の巨匠、西村寿行先生を盗み読みしては、その文体を模倣していました。なので、さほど難しい話ではありませんでした。
悩んだのは、海川作品に登場する女性の名前でした。「彼女は」という三人称では、作品に迫真性が出ません。かといって、上述の桃子もそうですが、不用意に書くと不愉快になる者が出てきます。聖子、奈保子、今日子、眞子、伊代、優、ちえみ、明菜、寛子、有希子、由貴、美奈代、その子、唯、麻衣子、由美、つかさ、ひかり、ゆかり等は、NGでした。京子なら辛うじてOKながら、毎回、京子ばかりでは面白くありませんので、一番苦労したのがそこでした。
桃子さんに嘘はついていませんが、本当のことをすべて記してはいません。以下のように訂正します。
――私が高校生の頃は、1学生1アイドルに近い時代でした。マニアックな世界もあり、16歳の集団においても、多種多様なフェティシズムが既に林立していました。それは、何十年経ってもそう容易には変化しない不思議な嗜好でした。
Posted at 2023/11/12 07:35:41 | |
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