アライメント調整の依頼がありました。
車種はJZX100で、症状は車両の左流れです。
試乗して見ると、明らかな左流れが発生しています。
B-DYNAアライメントテスターにて測定、調整を実施します。
測定結果からは、あまり左流れの感じは無いのですが、とりあえず調整します。
調整後、再び試乗してみます。。。。。
残念ながら全く直っていません。ぐいぐい左に流れて行きます。
車両が古いので、各部点検しましたが異常は有りませんでした。
装着タイヤは225/40R18インチです。
アライメントや足回りが正常なのに左(右)に流れる症状は、たまに有りまして、ほとんどの原因はユニフォミティの一つのタイヤの横方向にかかる力の変動(LFV:ラテラルフォースバリエーション)が影響しています。
日本のような左側通行の国では、道路の排水等を考慮して道路のセンターが一番高く、両端が低く設計されています。このような道路を車両が走行する場合、通常は少しずつ左に流れて行きます。この左流れを緩和するために、キャンバーやキャスターを少し左側のみ多目に付けたりして調整する場合があります。この場合は、平坦な道路の場合は右に流れて行きます。アライメントの説明で、道路の左傾斜の話は聞いた事が有る方も多いと思います。
もう一つあまり知られていませんが、タイヤには、左側通行用と右側通行用が存在します。左側通行用のタイヤは、タイヤ自身が右に行こうとする力を持っています。当然右側通行用のタイヤは左に行こうとしますので、輸入車の場合に、日本で走らせると左に流れる現象が発生してしまいます。 車両の味付けで左流れに、道路の傾斜でさらに左に、タイヤの特性でとんでもなく左に流れてしまいます。(最近VW POLOで結構クレームが有ったようです)
輸入タイヤや逆輸入タイヤはご注意ください。
タイヤ自身が持っている左右方向の力を残留コーナーリングフォース(RCF)と言います。RCFは次の2つに大別されます。1つは、プライステア(PRCF)で、タイヤを構成するスチールベルトの角度や、トレッドパターンで発生します。特徴は左右で入れ替えても同一方向に流れます。
こちらのラジアルタイヤのベルト部分ですが、通常2枚以上のベルトが重ねてあり、外側のベルトの向きが右上がりとなっており、この場合は右に流れようとする力が発生します。画像を反対にしても右上がりなので、このタイヤはどこに付けても右に流れます。左側通行用は右上がりに、右側通行用は左上がりに巻かれています。
もう1つは、コニシティ(CRCF)で、タイヤのINとOUTのサイドウォールの剛性のアンバランスや、変形等で発生します。特徴は左右で別方向に発生します。
最近のブリヂストンさんがRE11やプレイズで採用されているサイドウォールの左右非対称形状も一種のコニシティを利用した物だと思います。
最近は、道路事情の改善、車両の高性能化やグローバル化により、どのタイヤメーカーもRCFをなるべく低減させて行く方向のようです。RCFより、製造時の公差の方が問題になっているようです。
今回のタイヤは、国内メーカーですので、基本右流れのはずですが、何故か左に流れていきます。原因を追及するべく
GSP9700にて横方向の力の変動(LFV)を測定してみます。
フロント2本を測定してみました。
結果は、LFVが左方向に85Nと数値的には、左に流れていく数値が出ました。
車両が正常でもこの数値では、結構左に流れて行ってしまいます。
このLFVが、プライステア(PRCF)なのか、コニシティ(CRCF)なのかを判断する方法は、左右を入れ替えれば分かります。入れ替えても左流れの場合はプライステアが原因です。入れ替えて右に流れる場合はコニシティが原因と判断できます。
早速左右を入れ替えて試運転してみます。。。。
今度は右に流れて行きます。今回はタイヤのコニシティが原因のようです。
LFVについては、左右のバランスが重要なので、例え左のタイヤが右に80Nでも右のタイヤが左に80Nならば、あまり車両は流れません。改善策としては、4本のLFVを測定してフロントの左右にバランスの良いタイヤを持ってくるのが良いと思います。
タイヤの使用過程でのLFVの悪化については残念ながらタイヤを交換するのが一番早い解決方法です。
アライメントや、車両に問題が無いのに、左(右)流れが発生して悩んでいる方が居られましたら一度ご相談ください。
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アライメント | 日記
Posted at
2011/06/18 15:35:29