自宅からそう遠くない場所でこの初代プリウスに出会った。ホイールがノンオリジナルなのが残念だが、それ以外は往時の面影をよく保っている。車種の性質からして、決してオールペンなどされていないから年式相応にヤレた印象がむしろ自然で好ましい。つい先だって搭載バッテリー交換サービスの終了がトヨタからオフィシャルに示されたこともあり、ますます維持が難しくなってきているはずの中で、オーナーさんはよく乗り続けていると感心する。
そもそもこちらはMCを受ける前の前期型、さらにこのボディカラーは登場時に設定された最も初期のロットではないか。思わず同じような境遇の我がフォーカスのことを想起して強い親近感を覚えずにいられなかった。初代プリウス97年発売、初代フォーカス98年発売(日本発売は2000年)、来るミレニアムを目前に、次世紀を見据えて東西の各社から意欲的な車種が登場した時代の熱気を、このプリウスも確かに伝えてくれる。
私はプリウスは現行型も好きだが、この初号機も登場当時にかなり気に入っていた。ハイブリッドの機構もさることながら、日本で扱いやすいディメンションの中で、高効率なパッケージングを実現したセダンボディに魅力を覚えたのである。今日、そのサイズを確かめたところ、ボディ全長が4ドアセダンとしては短い4.3mを切る程度であることがわかり、改めて驚かされた。一方で全幅は5ナンバー枠に収まる1,695mm。まさに「低く・広く・長く」の真逆を行く挑戦的なプロポーションである。この点だと現行のプリウスは「低く・広く・長く」の権化の如き逆転ぶりだが、登場から25年超の間にプリウスの商品性が変化したと考えれば、いまのプリウスもまた当初とは違った意味で挑戦的な存在として認められる。
日本の車、なかんずくトヨタというと「デザインがひどい」「デザインにオリジナリティがない」などと判で押したかのようにクサす声が必ず挙がるが、私はそうした声には一切与しない。この初代プリウスのデザインなどは同世代のヨーロッパの同クラスのセダンなどと比べてもよっぽど先駆的だったと思うし、今でも十分に説得力があるパッケージングだと思う。ちなみにこの初代のデザインはトヨタのアメリカのデザインスタジオCALTYが担当したが、合理的な小型車のデザインを不得手とするアメリカの土壌からこうしたデザインがもたらされたことも今にしてみれば画期的だ。近い時期にデザインワークが進められたであろう初代フォーカスが、グローバルカーであったにも関わらずデザインがヨーロッパ主導だったことも、アメリカがこうした実用車のデザイン考案に不向きだった(もしかして今も?)というフォードの判断がベースにあったことを物語る。
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2024/04/20 21:58:26